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六話

 クリスマスだ! 休暇だ! ボーナスだ!
 危ない目もあったし、二重生活は結構苦労するけれど、指令は本当に良い上司だとヒーロー達は喜んでいた。

「何に使おう!」
「浮かれすぎて正体ばれないようにしろよ?」
「スペーシアはどうするんだ?」
「恋人と疎遠になってたから、バイトしてたことにしてアクセサリーをプレゼントする」
「彼女持ちは良いな」
「シャインがいるだろ」
「私がいる」
「もちろん、シャインは特別だけどさ」

 シャインはネグレクトを受けていた。ヒーローポイントを食料に引き替えて命を繋ごうとしていたので、説得して両親にも頼み込み、アクアの妹として迎える事になったのだ。
 今ではシャインはアクアの大切な妹だ。
 
「クリスマスの偵察か……。やっぱりデパートかパーティを視察するのが良いよな」
「何日が良いかなー」
「やっぱり夏休み中じゃない?」
「それは大変じゃない?」
「覚えやすい日が良いよね」

 ちなみに、早速ちょっと良い席にヒーロー達は居座っていた。
 秘密基地はそれぞれのチームしか入れない為、全員集まるとたまり場がない。
 幼い少女が五人いるから、なおさら入る場所に困る。
 チームメンバー以外が入れるような拡張に必要なヒーローチームポイントは多く、まだまだ貯金が必要だ。

「皆でビデオカメラでも買う? 今使っているのは互換性無いし」
「うーん。俺は大人しくプロに任せたいかな……。予算をケチって失敗すると最悪だし、絶対拡散されるだろ。あんまり素人くさい物を出すと恥を掻くぞ。クリスマスのレポートだって書かないと」
「ホームページを開設した方が良いのかも。イベントの告知とかもしたいし」
「匿名でって言うのがなぁ……。連絡用の携帯を買うのもありだけど、あれだって逆手探知されるだろ?」
「パソコンが欲しいな」
「給料で買えよ」
「あれ、互換性無いんだよ。ネット繋げないし、ワープロソフトも移動できないし」
「やっぱりかー。頑張れ魔導製品」
「でも、記録用にカメラやビデオカメラ、連絡用に携帯も良いんじゃないかな」
「なんだよ、必要な物いっぱいあるじゃん。ポッケないない無理だな。資料を見ると、第二のクリスマスを作れって言っているような物だし、結構大変……。とりあえず必要な物リストアップしていくか?」

 資料を皆で覗き込む。イベント用のアイテムの一覧とサブクエストの一覧だ。
 更に、スペーシアがヒーローポイントで買ったパソコンを出して意見を纏めていく。

「この後、皆で買い物行こうぜ。それぐらいはな」
「明日の午前中も集まろうよ」
「ごめん。デートで駄目かも」
「私もパパとママと出かけるから」
「クリスマスは忙しいから、後で改めてパーティしようよ」

 その時、震える手でウェイター達が料理を運んでくる。

「料理来たぞー」
「おー!」
「美味しそう……」
「あれ、注文していたのと違うんじゃない?」
「こちら、あちらのお客様から差し入れです」
「こちら、あちらのお客様から差し入れです」
「こちら、あちらのお客様から差し入れです」
「こちら、お店から差し入れです」
「すみませんが、アルコールはちょっと……」
「食べきれない」
「嘘。こんな事、本当にあるんだ」

 大量の料理に目を丸くする一同。
 もう出されてしまっているという事で、ありがたく頂戴する事になった。
 
「ヒーローアクア! ヒーローアクアだよね!? ねぇ、写真を撮って良い?」
「あー。ここにいるのは本人じゃなくてコスプレって事で。それに君と撮ると、皆と撮らないといけなくなるから…………良いよ」
「子供に甘いな」

 断られるかと泣きそうな顔から一転、目を輝かせる子供と写真を撮ると、案の定人々が並ぶ。
 結局二時間ほど写真撮影と食事となり、その後デパートに向かった。

「さっき、結局支払い持って貰っちゃったけど、大丈夫かな? 15人分だから高いぞ」
「支払うって言ったんだからいいんじゃないか?」
「時間押してるから、さっさと必要な物買おうぜ」
「カメラとビデオカメラとプリペイド携帯とパソコンとUSBね」
「あと、匿名でのホームページの作り方の冊子も」
「それは必要ない。ホームページ作成なら任せてくれ」
「忍者レッド、パソコン出来るの? 凄い!」
「簡単なのなら、一応」
「携帯は匿名は無理じゃない?」
「そんな事無いよ」

 予算と相談しながら、電子機器を見ていると子供に話しかけられた。

「やあ、ヒーロー。匿名の電話が欲しいって?」
「そうだけど」
「僕、結構パソコン強いよ。匿名の電話を用意できる優秀なチェアマンは必要じゃない?」
「必要だな。でも、君が信じられるとどうして言える?」
「裏切られても良いように動けば良いんだよ。今見られている以上、僕も100%味方になる事は出来ないしね。例えば大統領には逆らえないし。ひとまず、この携帯と電話番号をあげる。今日買ったばかりだから、電話番号は僕しか知らない。依頼があったら試しに言ってよ。この携帯と初めの1回の依頼はタダで良い」

 ヒーロー達は顔を見合わせた。なんだこの出来る雰囲気の男の子は。

「ふぅん……貰ってもいいわ。でも、私達、お金ないわよ?」
「お金なんかより欲しいものがあるんだ。君のキスとか」
「はいはい、小さなハードボイルド君。俺のキスで我慢しとけ。妹の唇はわたさない」

 アクアは小さな凄腕スパイっぽい子供から携帯を受け取る。
 男の子は素早く黒服の男とその場を去る。

「父様には他言無用だぞ」
「はい坊ちゃま」

「おお、本当にハードボイルドだ……」
 
 お買い物が終わった頃にマスコミが駆けつけ、解散となった。
 後日、少年は早速依頼を受ける事となるのだが、それはまた別の話である。

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