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100話 アイン小隊の功績(100話記念閑話)

 100話到達記念に、本日は閑話を一つお送り致します。



「隊長、リャン、ミィ、何かおかしくないですか?」
「ん? 何がだ?」

 迷宮第四階層に足を踏み入れたアイン小隊の面々の中で、新規加入した魔法使いのフィーア。彼女が感じる違和感を口にする。

「だって、相手はオークキングですよ? 普通なら咆哮聞かされて、行動不能になったところで凌辱されて嬲られてピーされて終わりじゃないですか? なんでこんなにあっさりと勝てたんです?」

 なんで勝てたと言われても。アインは首を傾げる。

「それは……我々が強くなったからだろう?」

 アインも中々に脳みそが筋肉質で、最近は更に脳みそが筋トレしているらしく答えは簡潔すぎた。しかも、はいそうですかと納得できる内容ではない。

「そ、それはそうかも知れないんですが! 私は迷宮街に来るまではあんなに魔法を連発出来なかったし、治癒魔法だってあんなにバカみたいな効果は出なかったんですよ? 急にですよ? おかしいですよ?」

 タレ目でおっとりとした印象のフィーアが半ばパニックになっている。

「まあまあ。落ち着いてよフィーア。いいじゃない、強くなったのなら」
「そうそう。何か問題でもあるのかしら?」

 リャンとミィも長らくアインと共にいる。それこそ騎士団長が、幼少の頃のアインの友人にと孤児院から引き取って以来の付き合いだ。当然脳みその筋トレも付き合ってきている。

「いやいやいや! 何の努力もしないで強くなる訳ないでしょ!? そりゃ隊長たち三人は暫く迷宮で修行してたかも知れないけど! でも私は何にもしてないの! これと言って特別な訓練も修行もしてないの! 迷宮に入ったのは今日が初めてだし!?」

 三人の、『何がそんなに気に入らないんだ?』、という視線に耐え切れず、一応は敬語で接していたフィーアも、ついに仕事を忘れてお友達ヴァージョンに移行する。元々この娘達は歳も近く仲も良かった。そこを鑑みてフィーアはアイン小隊に編入された。

「特別な事? 昨晩特別に美味い肉を振舞って頂いたではないか?」

 アインがニヤリとして答える。

「肉!? 確かに死ぬほど美味しかったけど! あの肉の為なら私……って違うくって! 大体、なんでみんなそんなに軽装備なの!? それにリャン! あなた、バックラーにバトルアクスなんて騎士っぽくないわよ?」

 肉を食べたくらいで強くなれるのなら苦労はしない。そう思うフィーアの感性はこの場では非常に貴重な常識的なものだ。是非彼女には自分を大切にして貰いたい。

「ふっ。見た目に拘ってるうちはまだまだね。この迷宮ではあくまでも性能重視。このレザーアーマーひとつ取っても、あなたや他の騎士達のプレートアーマーより防御力は遥かに上なのよ?」
「そうそう、フィーアも今回回収した素材で装備の交換するのよ?」
「私もっ!?」

 『何を当たり前のことを……』とでも言いたげな、リャンとミィの視線。
 今回ギルド所有の魔法鞄をレンタルしてきていたアイン小隊は、オークキングを始めとした上位種の素材や装備を入手し、パーティ全員がオークキング素材の装備で統一される事になる予定だ。ただし、フィーアはまだその事を知らなかった。

「私達を見て、騎士団と思う人は誰もいないでしょうね……」

 実はプレートアーマーを脱ぐと、ふにゃりとした表情に似つかわしくない凶悪な破壊力を持つプロポーションのフィーアは、レザーアーマーを装備する事で悩ましいラインが明らかになる。
革装備を着用することで注がれる、男達とオークの視線に耐え切れず、フィーアは全身を覆う装備を依頼した。

 後日、フィーアの為にフルプレートアーマーならぬフルレザーアーマーという新装備がこの世界に生み出された。そもそも、レザーアーマーとは動きやすさ重視の軽装備である。今まで全身を覆うような革装備は存在しなかった。
 更に、辺境伯領の騎士団や軍において、上級士官になればなるほどレザーアーマーの比率が高くなるという不可思議な現象も起き始めていく。
 豪華な、いかにも騎士然とした金属鎧を着用した者が冒険者の如くレザーアーマーを着用した者にペコペコしている。そんな不可思議な光景が至るところで見られるようになった。

 金属板を繋ぎ合わせただけの、見た目だけはゴツイ金属鎧と、魔物素材の各種エンチャントを施されたレザーアーマー。どちらがより高価で高性能か。そして軽量というアドバンテージ。
 領軍と騎士団による迷宮攻略が進むに連れて、魔物素材が安価に入手出来るようになると、徐々に辺境伯領の装備は切り替わって行くのだった。

 

 

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