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37話 ドッジ・タンク?

 ーーおにいちゃん鑑定中ーー

 ……と言う訳で、第二階層から帰還したあたし達は迷宮攻略組と情報を共有化した上で、戦利品の鑑定をおにいちゃんにお願いしている所なの。

 やっぱり、ボス以外の装備は実戦に耐えうる物ではあるけれど、特に変わった事はない普通の武器みたい。
 そんな中で当たりだったのがコボルトロードのバックラー。あたし愛用のタワーシールドよりかなり小型の円形の盾で、すごく扱いやすいんだって。で、特殊効果が『硬化』。素材は木製でどう見てもそれ程硬くはなさそうだし、しかも凄く軽いんだけど、特殊効果のおかげでナマクラな鉄剣程度じゃ傷ひとつ付かない程硬いみたいね。
 非力な女子の冒険者にオススメ。これはリャンさん行きかしら。

 そして、おにいちゃんは二階層ボスの攻略報酬の木箱の中身、バトルアクスの鑑定中なの。

「このバトルアクスはいいモンだな。重量軽減の効果が付いてる。使用者は然程重さを感じないで振り回せるんだが、食らった相手にはそのままの重量でダメージが入る」
 
 おお~、それは凄いかも! 小枝みたいにブンブン振り回している武器が、実は重量級でしたとか、攻撃を喰らった相手は予想外のダメージを負う訳か。
 おにいちゃんは尚も続ける。

「これはまだ推測だがよ、ボスの装備と木箱の装備、セットで使うと滅茶苦茶相性がいいんじゃねえか? 一階層のもそうだっただろ?」

 言われてみればそうかも。一階層のは吸魔の剣で魔力を吸収して、身体強化の腕輪の効果を発動させるコンボ。二階層は軽量かつ高性能な武器と防具で非力な人にピッタリな仕様。
 逆にあたしみたいな怪力スキル持ちにはあまり意味のない装備なのよね。ってか、怪力って自分で言ってて泣けてきちゃった。うるる。

「なるほど。次回の攻略の時にも確認してみようか。あながち若旦那の推測も外れているとは言えなそうだ」

 おにいちゃんの言葉を受けて、メッサーさんが言った。じゃあ次回は三階層攻略を目標に!

「それじゃあこのバトルアクスとバックラーはリャンさん行きだね!」
「しかし……良いのだろうか? 我が小隊はそれ程貢献出来ていないのに、こうも貴重な武具を頂いては申し訳がないのだが……」

 ラーヴァさんがアイン小隊の戦力強化のために提案する。でもアインさんは申し訳なさそう。
 でもですよ? 迷宮内部の構造把握の為には何度も迷宮に潜る必要があるのよね。第二階層に行くには当然第一階層のボスを倒さなくちゃいけない。その度に討伐報酬は手に入る。
 ハイ・ゴブリンの吸魔の剣は使い手を選ぶけど、木箱の中の報酬は割とオールマイティーだ。バフ効果のある装備品は何気に全員に行き渡ってたりしてるんだ。あたしは腕輪と足甲で能力アップしてるから後回しにしてもらってるけどね。

「あははは。この先はどんどん魔物が強くなっていくよ。ボク達もいつまでフォロー出来るか分かんないからさ。強くなれる要素が目の前にあるなら甘えた方がいいと思うよ? 遠慮して死んじゃったら元も子もないしね」

 そんなラーヴァさんの言葉に、アインさんとリャンさんは目を輝かせた。

「そうか! そうだな! ではリャンは斧の扱いを修行だな。斧使いの冒険者の方に指導をお願いしてみよう」
「はい! フォートレスの皆さん、ありがとうございます!」

 うふふふ。リャンさん、騎士団に戻ったらかなり異色だよね。バックラーに斧使いの騎士さんなんているのかなぁ?

「おい、シルト。俺は明日、一旦街に戻る。ついでにお前の盾を仕上げて来たいと思うんだが大丈夫か?」

 うん、おにいちゃんはきっとツンデレってやつね。いつもゲンコツ落とすクセに、こうやってあたしを気にかけてくれるんだもの。

「ちょっとみんなと相談してみるね!」
「そういう事なら、我々も騎士団に中間報告をして来ようと思うがどうだろう? 鍛冶師殿の護衛は我らが請け負うが?」

 話を聞いていたアインさんが手をあげた。お姉さん小隊もかなり強くなったから、街道に出る魔物くらいなら大丈夫じゃないかな?

「ではアイン小隊には若旦那の護衛をお願いしよう。シルトの盾が仕上がるまでは私達はここで現場監督の真似事でもしているよ」

*****

 翌朝、迷宮攻略ベースキャンプから出て行くおにいちゃんとお姉さん小隊を見送ると、メッサーさんがあたしを商人さんの仮店舗に引っ張って来た。

「ここでは、迷宮から帰還してきたパーティの戦利品の中で不要な物を買い取って貰い、それを必要な者に販売している。もちろん私達も利用させて貰っているよ」
「はぁ……それであたしはここで何を?」

 うん! メッサーさんがあたしをここに連れて来た意図が全く分からないの!
 はいそこ! おバカとか言わないの!

「若旦那が戻って来るまではまだ時間が掛かるだろう? その間にシルトには出来る事を増やしておいて貰おうって訳さ」

 なるほど! まったく分からないわ!

「ご主人、この腕輪と……そうだな。このショートソードを頂けるかな?」

 メッサーさんが手に取ったのは『反射神経強化の効果あり』って説明書きがあった腕輪と、何の変哲もないショートソード。

「お買い上げありがとうございます! こちらのナイフはおまけですよ。シルトさんの護身用にどうぞ!」

(こんなところでも『中年殺し』の効果が出るのか。シルト……恐ろしい子)

 なんだかメッサーさんが失礼な事を考えているような気がするけど……
 親切な店主のおじさんにお礼を言ってラーヴァさんの元に戻ると、漸くメッサーさんが意図を話してくれた。

「今のシルトは、リセットと防御上昇の腕輪の効果でかなり固いタンクなんだが……打撃主体のパワーファイターには無類の強さを誇るけど、技巧派の敵が相手だと苦戦もするし負傷もするだろう? こっそりリセットで治しているようだが」
「うっ……その通りです」

 てへっ☆ やっぱりバレてた。

「それで、折角君には脚力上昇の足甲があるんだ。さっき買った反射神経強化の腕輪を装備して、余計な被弾を防ぐ戦い方も身に付けて貰おうと思ってね」

 あ! 前におにいちゃんに言われた事があるような。

「敵の攻撃を躱しながらヘイトを稼ぐスタイルのタンクってやつですね? 前におにいちゃんが言ってた!」
 
 あたしの答えに、『正解!』とでも言いたそうな笑顔でメッサーさんが言った。

「そうだね。そのスタイルを目指す時には、モーニングスターのような破壊力重視の武器よりもスピードで勝負する武器の方が都合がいい場合が多いんだ。チクチクと攻撃してヘイトを自分から外さないようにね」

 でも、あたしは剣術スキル無いからそんなに上手く使えないんじゃ……?

「まあ、シルトが懸念している事も分かるよ。でも剣で敵を倒す必要は無いんだ。敵を躱して敵の隙を突く。反射神経が強化されればいろいろと見えてくる筈だ。それに折角の脚力上昇もあるんだしフットワークも身に付けてみよう」

 ちょっと考え込んでいたあたしをみて、そんな言葉をかけてくれるメッサーさん。そしてそれを聞いていたラーヴァさんがニヤリと笑い、言った。

「躱すタンクねぇ。面白そうだ。ボクもビシバシ鍛えてあげるよ! 剣術指導も含めてね!」
「フットワークの方は知り合いの冒険者に頼んでみよう」

 うう、二人共ありがとう……

「「目指せ! ドッジ・タンク!」」

 躱すタンクでドッジ・タンクかぁ。きっとスパルタなんだろうな……
 でも! 頑張るよ! 
  

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