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第52話

「主任、カトリーナ達が、演習フィールドに出てきましたよ」

 カトリーナの姿を目にしたメンバーの一人が言うと、その場の全員がモニターに顔を向けた。

 すずかと同じ、四枚の装翼を持つ武装。けれど、翼のサイズはすずかよりも短く、色も水色を基調としたもの。武装の形状も流線的になっており、すずかとは印象がまったく違っている。

「流石、第三世代の新型って感じがしますね」
「第四世代のアーティナル・レイスが出る頃には、ああいう流線的なデザインが、主流になっているのかもな」

 メンバー達が感想を漏らしていると、さらにズィーメウ達も演習フィールドに姿を現し、晃穂は首をかしげる。

「あれ~? 最初に演習するのって、すずかちゃんとカトリーナちゃんだけじゃ、ありませんでしたっけ~?」
「ウォーミングアップを兼ねて、ここの社員達に向けて、軽いデモンストレーションをするつもりなんだよ」

 すると、カトリーナとズィーメウ達が、演習用の武器を手にした状態で動き始めた。ボクシングでいう、シャドーのように。

 すると、見学している社員達から「お~」という関心の声が漏れた。それは、モニター越しに観ているRAY・プロジェクトのメンバー達も同様だ。

「すごいですね。重装甲が基本のM.Lタイプで、あれだけ動くなんて」
「今までのM.Lタイプとは、完全に別物な感じがするな」
「カトリーナの動きも、なかなか速いですね。すずかちゃんと同じくらいかも」

 しかしその横では、澄人と晃穂がそれぞれ腕組みをしたり、顎に手を当てたりしていた。

「う~ん……私達も調整を手伝ってぇ、大きな問題点だった不安定さはある程度解消しましたけどぉ、動きが固い気がしますね~」
「調整だけだと、どうしても限界があるからね」

 それは製品基準としては一応許容範囲内であり、一般人が見てもわからない程度だが、アーティナル・レイスに日々触れ、熟知しきった人間には、僅かなレベルではあるがわかってしまう。

 無論それは、同じアーティナル・レイス――すずかが見れば、より顕著なものになる。

「……これじゃダメ。四人とも、隙だらけ」

 カトリーナ達の動きを見ていたすずかは、そんなことをつい言ってしまう。

「もしかしたら、緊張もしているのかもしれないな。イーマニアの支社だと、これだけ広い場所で大勢に見られるなんてこと、なかっただろうし」

 澄人がそう言った直後。

「あっ――!?」

 カトリーナが手を滑らせ、ブレードを落としてしまう。それに釣られるように、ズィーメウ達もバランスを崩したりするなどのミスを起こす。

 四人はすぐに体勢を整えて再開するも、また同じようなミスを繰り返し、見学している社員達から、呆れ声が聞こえ始める。

 そうしているうちに、羽(さとる)が駆け足で演習フィールドに現れ、カトリーナとズィーメウは彼に何度も頭を下げる。

「申し訳ございません! 申し訳ございません……!!」

 カトリーナの悲痛な謝罪の声がモニター越しに聞こえてきた。
 
 そのすぐ後、羽(さとる)は「演習開始時刻まで、再調整を行わせていただきます」とマイクを使って言うと、彼女達を連れて控室へと戻っていった。

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