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18.忍び寄る影?

 当面の目的を決めた俺たちは、一番近い街へ向かって歩いていた。
 封鎖された街道に人影はなく、幸いなことに魔物の気配もない。
 感じられるのは俺の影に潜んでいるプラムの気配だけ――ではなかった。

「ルークよ」

「ああ、わかってる」

 俺の後ろに人の気配、というより殺気を感じる。
 実を言うと、王国を出発してからずっと感じていた。
 だけど、付いてくるだけで何をするわけではなかったので、今の今まで放置していた。
 しかし、徐々に気配は近づいてきているようだ。
 感じ取れる殺気の質から考えて、追っ手はかなり若いと予想する。

「どうするのじゃ?」

「う~ん、放っておいてもいいんだけど……さすがに鬱陶しいな」

「ワシがやろうか?」

「いや、正体も気になるし、ここは俺に任せてくれ」

「うむ」

 王都を出発して半日が経過しようとしている。
 おそらく俺が隙を見せるのを待っているのだろう。
 ここまで手を出さない胆力には恐れ入るが、殺気を隠せないところを見るに、魔王軍の刺客ではなさそうだ。
 さて、それじゃ――

「おっと……」

 俺は地面の石にわざと躓いた。
 もちろんたたの演技だけど、その一瞬を()()は見逃さなかったようだ。

「今だ! ファイアーボール!」

 後ろから三発の火球が飛んでくる。
 俺に直撃した火球は爆散し、街道の真ん中に穴が開いた。
 穴の中央には、丸影になって倒れている俺の姿がある。

「やった!」

 姿を見せた少女は、倒れこむ俺を覗きこんで喜んだ。
 ただ、可哀想なことに――

「残念、それは幻だ」

「えっ――うわっ!」

 後ろに回りこんでいた俺は、彼女を押し倒して身動きを封じた。
 【人闇煙(じんあんえん)】――相手が望む幻影を生み出し欺くスキル。
 十六小地獄に由来するスキルの一つで、幻影を見せる対象は一人だけだ。

「くそっ……離せよ!」

「何じゃ、子供ではないか」

 影からプラムが登場してそう言った。
 俺を襲ってきたのは、淡く黄色い髪を右だけテールのように結び、澄んだ青い瞳をした少女だった。
 外見年齢は十四歳くらいだろうか。
 杖を持ち、ローブを着ていて魔法を使っていたし、明らかな魔法使いだと思う。
 そしてどことなく、誰かに似ているような気がした。

「さっさと離せよ! この裏切り者!!」

「む、知り合いか?」

「いや、心当たりは無いけど……」

 何だろうこの感じは……。
 初対面のはずなのに、どこかで会ったことがあるような……というか、ずっと一緒にいたような感じがする。
 それに今、俺のことを裏切り者って言った。
 紛いなりにも魔王軍を退けた俺に、そんなことを言うのはおかしい。

「お前は誰なんだ? 何で俺を裏切り者なんて呼ぶ?」

「裏切り者だからそう呼んでるんだ!」

「悪いけど、誰かを裏切った覚えは――」

「惚けるな! だったら何で……何でお前だけが生きてるんだ!」

「――! まさかお前……」

「私はルリア! お前が見捨てたシンクお兄ちゃんの妹だ!」

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