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一話

 VR装置が販売されて数十年。
 とあるゲームが終わろうとしていた。
 ゲームの名は魔神。残るプレイヤーは三人。
 ヒカキンを貫くヒカキン。ガチャ中毒のガッチャ。
 そして俺、課金大好きなメイメイ。
 癖があり人気のないゲームだが、俺達は大好きだった。
 せっかくだからと三人で集まり、最後にささやかな宴会を開いている時のことだった。
 クエストの始まりを告げる鐘が鳴った。
 招待状が三人の元に届く。
 それぞれが受け取り、読む。

『昇神クエストを受けますか?』

「終わる5分前にイベントかよ!」
「どれどれ」
「新アイテムはありますか?」
「課金ショップが更新されたぜ。ガチャも。最後の課金チャンスだって」
「このタイミングでwww」
「とりあえず課金しなきゃ」
「ガチャを回しますよー!」
「おwまwえwらw」

 受諾すると、クエストがどどんっと七つ表示される。
 更に、アイテムがどしどし贈られる。課金通貨まで配布された。

「ちょwww」
「ありえなすwww」
「ガチャを回しますよー!」

『強制ログアウトが作動します。それでは皆様、よいクエストを』
「ですよねwww」
「まってwww」
「ガチャを回しますよー!」

 そこでゲームからはじき出されて、どんな最後だと笑った。
 ひとしきり笑うと、あくびをする。

「新しいゲーム、探さないとな」

 そうして、ベッドに入って眠りについた。
 朝。ゲームの中のように、通知が来た。

『おはよう! 見習い魔神の貴方に、メールが届きました。試験の通知かも!? 早速見てみよう!』

 夢を見ているのかとぼうっとする。ついで呟く。

「オープン・ウィンドウ」

 ウィンドウが開く。
 しばしの沈黙。ついで、目が覚めるに従って、手を握ったり顔を撫でたりする。
 どう考えてもリアルにしか思えない。夢を見ているようにも感じられない。
 しかし、目の前には半透明なウィンドウ。

「……マジか」

 ログアウトボタンはない。レベルや体力表示、魔力表示は消えていた。
 あるのは、アイテム、メール、ショップ、フレンドリスト、クエストだけだ。
 メール欄が輝いている。
 震える指で、そっとメールに触れる。
 メール一覧にメールがいくつか届いている。
 
『魔法学校の設立要請』
『ダンジョンの運営要請』
『ヒーロー活動要請』
『魔法の日を制定せよ』
『ロボットを作成せよ』
『一年間の統治をせよ』
『エイリアンの侵略を撃退せよ』

「なにこれ」
 
 思わず声が漏れる。そして、時計を見る。どうやら、いつもより早く起きたらしい。
 メールを見る時間はある。
 
 まず、魔法学校のメールを開けてみる。
 
『魔法文明は衰退している!』
「衰退しているっていうか存在してないよな」
『このままでは、魔法文明は滅びてしまうだろう。しかし、魔力欠乏症を治す画期的な薬が見つかった。この薬のおかげで、魔法文明は息を吹き返すだろう。魔法学校を設立し、教師である魔導師を集め、魔法使いを育て、魔法文明の発展に寄与するのだ。とにかく魔女人口を増やすのだ!』
「だから産まれてないって魔法文明」
『クエスト:魔法学校の設立要請 魔法学校を設立する 報酬:10000クリス 欠片1 プレゼントボックス』

 魔女と魔法使いと魔導師と魔神の違いとは一体。そもそも欠片ってなんだ。
 とにかく次に行こう。簡単そうな依頼を探すんだ。
 
『素材を流通させよう!』
「お、おう」
『ダンジョンを運営して、素材が市場に出回るようにしよう。資源を制する物が世界を制するのだ』
『クエスト:ダンジョンを運営せよ ダンジョン素材を流通させよ 報酬:10000クリス 欠片2 プレゼントボックス』

 これは難しいな。次。

『治安を良くしよう!』
「大事だな」
『ヒーローを育てて、治安維持活動をしよう』
「ち、治安維持……?」
『クエスト:ヒーロー活動をせよ ヒーローチームで100事件解決せよ 報酬:10000クリス 欠片3 プレゼントボックス』

 これも難しくないか? 次。

『魔法の日を盛大に祝うのだ。目指せクリスマス超え!』
「魔法の日ってなんだ」
『クエスト:クリスマスを超えろ イベントを企画しよう 報酬:10000クリス
 欠片4 プレゼントボックス』

 不安に思いつつも次のメールを開く。

『異世界に行き、ロボットの作成について勉強しよう』
「いせかい」
『クエスト:ダンジョンの素材でロボットを作成せよ ロボットによる巨獣討伐 報酬:10000クリス 欠片5 プレゼントボックス』
 
 頭痛くなってきた。ロボットって? 巨獣って?

『王として何を成す?』
「おう」
『クエスト:領地を一年間内政せよ 一年間王として君臨すること 報酬:10000クリス 欠片6 プレゼントボックス』

 内政って。領地どうするんだよ。

『滅びの回避』
「ほろび」
『レイドクエスト:人類を滅ぼそうとするエイリアンを撃退せよ エイリアンの撃退 報酬:10000クリス 欠片7 プレゼントボックス』
「えいりあん」

 いかん、パワーワードばかりで頭がくらくらする。
 とりあえず、準備をして会社に行こう。
 シャワーを浴びてスーツを着る。
 会社に行く前にメールと郵便チェック。ゲーム会社から賞金一億円の入金の連絡。
 はい!? 
 あれもこれも混乱することばかりだ。慌てながらも出社する。

「アメリカに出張ですか?」
「そうだ。君は独身だし、ぜひお願いしたい。キャリアアップにもなるぞ。準備時間は一週間しかないが……」
「わかりました」
「おおっ そうかね!」

 二つ返事で引き受ける。アメリカの方がなんとなく都合が良さそうだ。
 周囲が知らない人だらけになるというのがいい。やらなければならないというなら、せいぜい暴れてきますか。

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