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221話 死ななければ勝ち! チートな魔王!

 帝都宮殿 玉座の間

「ハッハッハーーッ!! どうした? 終わりかぁ? 前の勇者はもっと強かったぜェ?」

 くっ……なんだこの野郎。おかしいぞ。初撃の小手調べでも明らかにダメージを負っていたはずだ。全力とは程遠い一撃でだ。

「おっかしーなぁ……ボク達って段々弱くなっちゃってる?」
「そんな事はないよ。今日の私の魔法の冴えは抜群だ。ラーヴァ、君の剣技も魔法もさ。レン君に至っては絶好調とも思えるくらいだね」
「レ、レン……」

 メッサーさんの言う通りだ。俺達は調子はいい。事実、戦闘の序盤は『魔王ってこの程度か?』って印象だった。迷宮下層のボスの方がまだ手応えがある。そう感じた。だが今はラーヴァさん言うように、自分自身が弱くなっている錯覚に陥っている。
 徐々に魔王は俺達の攻撃に耐えるようになり、やがてダメージすら通らなくなった。そして取るに足らなかった魔王の攻撃は。

「ガハッ……! ちっ、肋骨を何本か持ってかれたぜ」
「レン、動かないで!」

 俺達の防御の技術を嘲笑うかのような立ち回りと、ドラゴン装備を突き抜けて来る攻撃の威力。

「この装備じゃなかったら、さっきの蹴り一発で即死だったぜ。インギーさんに感謝だな」

 装備だけじゃない。ヒメの掛けてくれたバフとデバフ、それが無かったら、俺達はとっくに魔王に蹴散らされていただろう。
 俺ほどじゃあないが、メッサーさんもラーヴァさんもダメージを負っている。これはもう後先考えずに勝負をかけるべきかも知れない。長引かせるだけ不利になるなら一撃で即死させるしかねえだろ。

 ――それが出来れば、だけどな。

「こりゃあ長引かせる程不利になっちゃうみたいだからさ、ここらで最大奥義ぶっ放してみる?」
「確かに中途半端な攻撃をしても、魔王が強くなってしまうばかりで面白くないね」

 ラーヴァさん、メッサーさんも俺と同じ考えのようだ。
 どういう絡繰りかは分からねえ。けど、俺達の攻撃を耐え切った後はダメージも回復してるし、以前より強くなっちまってる。ヤツに勝つには最大火力をぶつけて一撃で屠るしかねえ。

「みんな同じ考えみたいなんでやりますか。ヒメ、多分俺達全員行動不能になっちまう。万が一、ヤツが生きていたらすぐに逃げろ。シルトが来るまで絶対に逃げきれ。いいな!」
「そんな……」
「そうだよ、ヒメ。帝国復興にはヒメがいないとね!」
「そういう事だ。とりあえず魔王にデバフを掛けてくれないか?」

 ヒメはキッと魔王を睨みつけ、杖代わりの魔法発動体として使っている小太刀、『蓮華』にありったけの魔力を吸収させる。聖なる白い輝きに包まれた蓮華の刀身。

「防御低下・極大! 魔法耐性低下極大!」

 ヒメが蓮華を振り抜くと、白い魔力が靄のように魔王に纏わりつく。それと同時に俺達三人も魔力を練り始める。

「雷装纏凱」

 練りに練った魔力を愛刀『雷電』に纏わせ、極大の雷の竜を放つ。その雷竜を自らの身体に取り込み、爆発的に攻撃力を上げる俺の必殺技『雷装纏凱』。
 ただし、発動後は魔力枯渇と全身を蝕む激痛で動けなくなるデメリット付き。まさにハイリスク・ハイリターンだ。
 ラーヴァさんも、俺を模倣して会得した技を使っている。ただしラーヴァさんは自分の得意属性である火を扱う。普段は敵への攻撃技である『蒼炎竜』を自らに取り込み、俺と同じように強化する技だ。やはり使用後は一切動けなくなる。
 メッサーさんも物凄い魔力を集めていた。彼女の技の引き出しは多岐にわたり、俺達ですら把握していない技がまだまだありそうだ。今度はどんな技を使うのか。

「お? いいねえ。覚悟決めたみてえじゃねえか。そうでなくちゃな! 今度はやれるといいな? ハッハッハ!」

 ちくしょうが。奴め、攻撃を受けると自分が強くなるのを分かってるから、ワザと攻撃を受けようとしてやがる。

「けっ。とんでもない目に遭わせてやるぜ魔王!」
「ふん……」

 余裕綽々の魔王にイラつきながらも、俺達は全身全霊を込めて魔王に突撃した。
 俺達は音速を超える速度で魔王に肉薄する。叩き込むは斬撃。急所狙いだ。
 ラーヴァさんが魔王の首を刈るべく紅蓮を横に薙ぐ。しかし魔王はそれを左腕でガードする。結果左腕は切り落とされたが、僅かにズレた斬撃の軌道は魔王の首を刈るには至らず。ラーヴァさんは悔し気に地に伏せる。
 次いでメッサーさんの攻撃。驚いた事に遠距離からの砲撃ではなく、全身を限界まで強化した身体を青く輝かせ、右腕に風を纏わせて魔王を殴りに来ていた。右腕の魔力はドリルのように回転している。とんでもない魔力制御技術だ。
 恐らく、遠距離からの砲撃では避けられると踏んだのだろう。しかし魔王の心臓を狙った右の正拳は僅かに躱され、右胸に風穴を空けるに留まった。この一撃でメッサーさんも力尽きてしまう。
 しかし今なら魔王も満身創痍! 俺は宙に飛んでいた。ヤツは俺を認識していないはず!

「食らえェェ!!」

 俺は脳天から真っ二つに唐竹割に切り裂いた。

「へっ、惜しかったな」

 魔王はまたしても僅かに身を躱し、俺が切り裂いたのは右肩のみだった。

「今のはヤバかったぜぇ? 全部が急所狙いってのは悪かねえ。でもな、急所狙ってくるのが分かってりゃあ、どうにかこうにか避ける事ぁ出来るぜ? つーか流石にこりゃ痛えぜ……ちょっと時間が掛かりそうだ」
「く、そ……逃、げろ、ヒ、メ……」

 仕留めきれなかった無念を噛み締めながら、ヒメの無事を願い俺は意識を手放した。

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