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魅惑の双子2

外垣がようやく帰ったと思ったら、リビングから「あきー」と呼ぶ声。顔を出すと郁が「揚げ物が食べたい」と漠然と言う。
「気圧の低下で体がだるい。こういう時って揚げ物したく無いんだけど」
面倒だし、熱いのはなあ。

「よし、分かった。カモ肉のコンフィ」
「低温で4時間揚げてろって?」
本気かぼけか分からない。ただ、腹立たしい。

「捨てるぞ、郁」
「お兄ちゃんに暴言か。覚えて居ろ、かわいい弟め!」
また、かわいいとか抜かす。

「しかしだ。相手を軽んじる言葉こそ罵倒だとも思う。懊悩(おうのう)の過去を思い出させて悪いが、今なら話せると思ったから言う」

相手へ好意があると見せかけ翻弄するのは性格であり、ある人には魅惑的に映り、またある人には心許せぬものと思われる。
気持ちのない上っ面な言葉で相手を手繰り寄せていくのは、暴言と同等、心を傷つける罵倒だと郁は話してくれた。

「言葉を弄び、(もてあそび)うまく言う人にほだされるな。言葉を大事にするんだぞ。英も暴言を慎め」
「うん」
郁が膝を打つ。
「そう、オレはおまえがかわいが、あえて両成敗であると言うぞ。どちらが悪いとは言えん。相手も翻弄したし、おまえも勘違いで悩み悶えたろ? 心を込めた言葉に気付け」
今まで黙してくれてありがとう。今の俺なら理解できる。外垣はいつも側で気持ちを込めて語りかけて居たに違いないから。

「英もSNSを観てるだろ? あの人そのものと思う、雑談を好むものは万事において聞き間違いが多いんだ。聞き流す、と言えば分かるか」
自分の世界で話すから、相手の言い分を聞けない。誤解もされたし、見下された気もした。それを聞かなかった振りさえした。……俺もそうだから分かるよ。

「頬杖をついて眠そうなのにオレの話に付き合うとは」
たまにはね。

「本当に、自暴自棄のおまえが変われそうで見て居て和む。20歳までは生きられぬと宣告された日から生き急いだ。いつ散ろうとも悔やまぬようにひたすら前へ進んだな」

そういえば毎年この桜が散るさまに自分を重ねて居た。
散り急ぐ様に自分を想う、だけど外垣は花弁を冒険させると言った。さくらまじに散らされたのに、ここからだと。
……そうだ、俺は人と出会いたいからと地元を離れて冒険した。

「運命に閉ざされず、前向きな英」
うん?
「もう分かるな? 運命とは外から来るものでは無く、自分自身の言動から来るんだ。おまえが変われたのは人との出会い。感謝して生きていこう」
「あんたもED治そうな?」治ったの?
「ずけずけとものを言う! その歯に衣着せぬ物言いを正せ、かわいこさん。また振られるぞ!」
こいつ!

「これ、外垣くんから預かった手土産」
ん? いつの間に。あ、俺が入浴中にか? いや、合い鍵も無いはず。袋を見て、昼間のカフェの屋号と気付く『カワ』さんだ。この時期のスイーツは保冷剤を使用しないはずだが。社内からサンプルを持ち出したのかなあ。
「いただきます」
コーヒー風味の食パンに生クリームとイチゴジャムがサンドされて居る。ジャムが少なめ、郁を気遣ったか。コーヒーは俺の好きなものだし、あの子……。



「おまえと二人で食べて欲しいからって言われて、隠してたんだぞ」
そこまで思うんだ。
「あえて言う。……二度も生クリームを食すとは、クリームチーズを食べたいと」
言うな、あんたが買ったんだろ。しかし馬が合うとは思う。
「外垣くんは可笑しいけど、いい子過ぎ。兄として、驕り高ぶるおまえが支配しないか危惧する」
しないって。口を拭け、だらしない。

「……英。20歳までは生きられる・そう曲解したんだろ。人生の崖っぷちで、よくぞと思うんだ。それは、おまえの才能だ。嫌なこと・不安なことを逆に解釈する。厳しくされたら『教えてもらった』、無視されたら『あの人は奇麗なのにもったいないね』。かつてはそう言った。普通の人なら、そうは受け止めん」
なんで。

「オレしか分かってやれん。自分の精神を守る術だろ、辛かったなあ、淋しかったなぁ」

ありがとう、と言いかけて視界が曇る。郁が見えない、眼鏡がずれたかなぁ。本当に郁はデリカシーが無い、何でも口に出す。……救われた、ありがとう。

「さり気なく言わないと、おまえが気にするかとなぁ。これでも悩んだぞ? おまえは、ひとりじゃないんだぞ」
随分前から気付いてたんだ。……抜けてるはずが、流石は兄。
「おう、サンドしてあるクリームが零れそうだ。よし、未来が読めた。また、おまえが懊悩する様。泣くなよ? みっともない」
同じ顔が俺を嘲る。許せない。

「外垣くんさ、初任給でご両親にアレッシイのワイングラスを贈ったそうだ。三銃士のポルトスワイングラス」
ああ、丸みを帯びたグラスね。うちは誰も飲まないからなあ。
「値が張ったろうに、もう1つ。……世話になったからだそうだ。誕生日だし、後輩としてさりげなくと思ったってさっ!」
どうして怒る。ん? まさか。そうだ、俺はきちんと話をしなくては、全然足りない。
「兄として気持ちは有難く思う、だがしかし所以が可笑しい。靴下を贈る意味を問う、好きにして・とは、流石にあの子も知らんだろうな。そこまで知る人はそういない。消耗品だから使って貰えると単純に考えたろ」
何か言った?

「あんな律儀な子が英なんて。まあ、妹さんも可笑しいからなあ。おう、ゆんゆんちゃんって言うんだぞ。背が低くて幅がある。兄を守る妹だ」
ゴスロリのスタッフさんね。へえ、愛称かな?

「これがコツメカワウソの赤ちゃんのように、わさわさ動く。そこへ外垣くんが来店すると、二人で陳列棚を揺らしてガタガタのバタバタだ。不思議なことにオレはちいとも欲情しないんだ。動物番組を観ているのに近い」
正常。

「英のほうがかわいいからだ」
ナルシスト。同じ顔だ、鏡見てろ。

「オレは外垣くん、そして、ゆんゆんちゃんとLINEして居る。特別に閲覧させてやろう」
スマホを渡されたがロックしてるな、パスワードは?
「おまえの誕生日」
「セキュリテイー管理が甘すぎるっ、双子だろ?」間抜けめ。
ぐう、唸る。破廉恥な言葉が飛び交う、あんた何してんだ。どんな顔して、うさぎのスタンプ押してんの。当惑する、しかし、楽しそうで生きる喜びに溢れて居る・と言おう……。
「鉄壁な妹・ゆんゆんちゃんの背負い投げを食らい、かわいこさんが捨てられる日は近い」
そうかい。

「安堵しろ。また振られてもお兄ちゃんが待って居る。キャベツを添えたピッツォッケリのチーズソースを拵えておまえを励ますのが兄の役目」

……そば粉を混ぜたパスタか。あ、混じり合う・膝を交えて話す意味ね。分かりづらいんだよ、あんた。
もう寝よう。

「どこへ行く。話は途中だ、人生迷子の青春ステージダンサー・青い踊り子さん。まださ迷いたいのか」
「暑苦しい」

不本意だが、散らかした服は明日片づけよう。そう、俺には明日がある。
はっ、もしかして? 郁が俺と同居したのは俺がいつお空へ行くか心配で……。残英と言ったし。そうか、俺が郁を危惧して資格を取ったように、郁も。一卵性双生児だから思うことは同じなんだな。

「お兄ちゃん、ありがとう」
ここにも絆を見付けた。
「お、おおう? ……昔みたいだな。おまえはいつも通りでいいんだぞ」
笑みを浮かべる郁、映し鏡のように俺も同じ顔で笑えて居るといい。眼鏡を外して先セルを抓み、自室へ戻る。

「うちのリビングは広いからな、ハンモックでも買おうかなあ」
郁、それ14万円くらいするからやめてくれ。というか、どうして要るんだ。空き部屋が無い・ということ? ふうん……。

寝る前に電子ノートのカバーを買おうと思い立ち、パソコンを起動させる。ネットで買うのは久しぶりだな。そうだ、黒以外にしよう……。
クロムハーツのアジェンダ、52000円。これは限定モデルだ。たまにはいいか、と購入。しくじった、ピンクだ。さくら色なのか?


一輪の名月が輝けど雲に隠れた夜を明かす。心の曇りを取り除き、きちんと向き合おうと思う。ベッドに置いたままのスマホに着信は無い。LINEで話すのでは無く、面と向かってお話ししよう。そんなに惚れてくれたなら。

てっきり『僕はあなたのものです』とか言い出すと思って危惧したが、言わないところが心惹かれた。あれだけ迫って来て止めを刺さない。あくまで、俺を自由に動けるようにしたいんだろう。今まで、俺をそこまで思ってくれた人は居なかった。

束縛ばかりで嫌気がさした青い春もあったな。

それで気持ちのはけ口にSNSを始めたが、危険が過ぎれば聖者を嘲る風潮が漂う世界で、益々憤り、会社の業務へ目を向けられた。生きる場所を違えずに済んだし、外垣は日が過ぎても変わらず俺を守ろうとする。

まるで常緑樹だ、緑の葉を絶やさず幸せの象徴。

人の想いの重さを知る。大事にしたいんだ、今度こそ。
仮眠をしたら曇りが晴れ、雲を割りて鶴が飛ぶ夢を見た。迷いが散ったような目覚めだ。
願いを叶えるような眩しい朝陽が差し込む頃、出勤した。すぐに外垣が駆け寄り辞令の話をする。事実だったか。

「部署が違えど、あなたの力になる所存です」

覇気がある。拳を握り、自らを勇気づけて居る。

向かい風は誰にでも吹くのだと知る。俺は向かい風に逆らい、後輩の外垣のお陰で追い風を頂戴できた。逆風を感じる時にどうすればいいか、風を真正面から受けられない時は小型ヨットを操るようにわずかな角度でいい、斜めに。そう、斜めに浮かんで行くのだ。

「外垣の活躍を期待して居るから。部署が変わっても会社の仲間であり社友だ」
「でも、お聞かせ願います。僕は、あなたのどんな位置に成るのでしょう。お側に居られないのなら。あなたを毎日、サポートできないのなら不安でたまらず」
こんな暴れ馬の面倒を見られるのは俺くらいだろう。

「過去形にしたくないんですよ。僕はあなたを好きでした、なんて」
切なく響く言葉に胸打たれた。

「どうしても、俺なんだろ。理解した」

思い返せば性的発言やお触りばかり脳裏をよぎるが、感情の外れたものを責めず、かえって天に祈ろう、胸を打つ言葉もくれたし善き知らせと捉えるんだ。
気持ちも傾いて居る、認めよう。ここまで思って貰えるのなら有難いじゃないか。
「えっ?」

「分かった。清い交際から始めよう」
「今更、何を仰って居るんですか?」

取り出したるスマホの画像一覧に息が詰まる。俺の歯磨きの様子、帰宅して靴を脱ぐ様。エプロンしてお皿洗いのバックショット……どういう性癖なんだ。これで身もだえるのか? はあ、びじり?

……たどり着いた先が地獄の三丁目。傲慢な俺にとうとう万事正しくせよという神の鉄槌が下った模様。悔いの無い人生を送ろうとして人の気持ちをないがしろにした罰だ。

だがしかし、視界に銀紙が散って目まいがする。目の前に緞帳が下りる。体が戦慄き未来永劫、詰んでいる……俺の姿態を観察して何が楽しい、隙を伺うような絡みつく性欲が反響する。
許しがたい、問いただす、削除させて土下座も強いる! 俺は憤怒の意を表すっ! しかし社内だ、憤るっ!

「先輩、のけ反る姿勢に見惚れますが、お気を確かに」
よく言うよ。かわいい顔して、とんだとち狂い。
「……撮影者は、だれ?」わかるけど。

「蔑む視線が煌めきます。お兄さんと仲良くLINEさせていただいており、貴重な撮影を贈られました。歓喜の動画です」
あいつ。
「しかし双子の生活を動画撮影が後ろめたく無いんですね。あなたも隙だらけです。スーツで防御しませんと。お風呂場撮影が無くて心より安堵しますが、秘蔵在庫がありそうです。僕は日々、お兄さんの性癖も憂慮します」
悪ふざけ。爛れた輩は視界に入れたくない、郁とは口を利かない。決めた。

「取引先へ行く!」
「ああ、僕をお忘れです」
まだ辞令が発動して居ないのか。

「わざとだ、間抜け! ついて来るな、もう二度と。……でも、そこまで俺を好きなら考慮する。おま・きみさあ。ごはん、食べる?」

春風が自ずと至る。何だか、楽しくなってくる。きみから目を離したら居なくなってしまいそうだから、俺が風ごときみを抱えると決めた。


「縋らせ上手の次男坊、ときめきます……」

「あら、笑顔のかわいい五辻くん。伊達男が同性に堕ちたとは社内報に載せるべき? 全社が悲しみの涙に包まれるわ。せめて外垣くんの苦労は認めてあげてね? あなたを追いかけて支えてきたんだから」
商品部の課長もお出ましとは?
「相思いを祝福するわ、仲の良さが止まらぬ・ふしだらなご両人。明るく濁った未来があなたをお待ちかね」

外垣の配属先は商品部だと言う。それならば同行させる理由が成り立つ。資材の在庫確認及び手配を迅速に行いたいと、俺が真っ向から申し出ればいいんだから。てっきり会社の心臓部である営業企画室への異動かと思った。外垣は聡いから、連れ出されても仕方ない。……まさか、商品部の課長の助言があったのか?

「ぼんやりして、勘違いも甚だしいわ。あなたに白羽の矢が立ったのよ」
えっ、俺が大きな仕事を? F社の案件は大きな事業に成るんだ、期待されてる。

「自我を貫きなさい。部下を指導するのが上司の務め。業務なら受け止めてあげるから確固たる信条を言ってご覧なさい。営業部の秘蔵っ子。男気を見せなさい」
こんな険しい表情は初見だ、さすがは女性管理職、会社を担う立場か。唸る。
課長にげきを飛ばされて、だんまりでは男が廃る。思わず1歩前に出る。

「必ず業績を上げて近い将来、全社を担う営業担当になって見せます」
俺の全力で挑む、そうでなければ外垣を側に置けない。
「あら」
「決して、ゆるがせにはしません。関係部署との連携を強化して自分が会社を背負います。同業他社に屈しず邁進し、新規取引先開拓を進めます。そして、過去・他社にとられた取引先も奪うべく反撃に出ます。そのために商品部配属の外垣をお借し下さい。彼の英知が要るのです。我儘を言いますがご理解いただきたくお願いします」
課長が真顔だ、まくしたて過ぎたか。

「どうか、お汲み取り下さい」
言葉足らずを許していただけるだろうか。俺は嘘だけはつかないのが信条。
「自分はまだ職位を得られるほど業績を上げておりませんが、必ず」

「いみじくも私の心中を察する。逞しくなったこと。粋がらず素直に言えるじゃないの。そんなあなたもかわいいのよ」
課長がほほ笑んで下さる。そう、俺は独りよがりで驕って居たから。

「勲章を貰って恥ずかしいと思う人こそ、貰うにふさわしいの。留意なさいね」
そうか、勲章を辞退する人の想いを知る。それに、職位とは輝かしい地位では無く、こうして人を導く立場なんだ。俺には足りないものが多い。
「魅惑の五辻くんは業績を上げること。そのために外垣くんを貸す。分かった様子で安堵したわ」
穏やかな微笑に胸を撫で下ろす。

「成長著しい私の部下、あなたが目指す空に虹が架かるといいわね。想いは虹・あなたと沿う人を結ぶ虹こそ揺るがぬ想いよ」
音楽や言葉も虹だと思う。善き言葉が励みに成る。
「そうして笑顔で居ること。新緑の季節から虹は架かるの。たまに冬にも虹は架かるけれども、光眩しい季節こそふさわしい。さあ、絆で結ばれたご両人、行きなさい」

「ありがとうございます、今後ともご指導ご鞭撻のほど賜りたく、宜しくお願い申し上げます。行ってきます!」


俺をなめてかかる後輩とばかり思い込んだら、気付かぬうちに相棒になって居たし、目が離せない。心根は聡い子だから、善き人かも知れないな。
俺は成長を遂げて居た。外垣の補佐があったからこそ、業務に打ち込めて居た。
爆弾発言の連発で慣れてしまって見誤ったが、いつの間にか守られて居た。補佐の業務と言い、あの人の件。身内でも無いのに、あれだけ言い切る子は居ないだろう。あの時から俺は揺さぶられたんだろう。

「お、英」
あれ、郁が来た。
「お弁当な。……外垣くんがうちの弟のお相手か。それなら発展ありと見た。蝶と花が互いに寄り添い助け合う。今まで泥の中で魚を探していた英が、ようやく探しものを見付け出したんだな」
魚だって。
「郁」
「自由を求めるものにかえって束縛があると知った。過去の人は自由の象徴、しかしそれで、おまえはがんじがらめに成ったんだ。随分、踊らされた。青春だろうか、でもすぐ側で見守る愛情に気付けたな?」
兄らしいことを言うじゃないか。ふうん。

「オレとおまえは瓜二つだが性格が違う。幼き頃、母さんが病に伏した時にオレは『なぜ、無理してオレたちを生んだ』と思ったが、おまえは生んでくれたお礼を言った。その時から英には生きて欲しいと願ったんだよ」

郁、そんな昔のこと。俺は覚えて居ない。生きることを軽く考えただけだ。
孤独に苛まれずに居たのは、同じ顔をした郁が居てくれたから、いつも笑顔で俺を励ましてくれたからだ。想うことは同じか。

「人生は愛憎の葛藤なり。愛する片割れのおまえを手放す決意をして、オレも一歩踏み出すぞ」
「凛々しいな」
初めて郁がかっこいいと思った。
「……口を閉じろ、かわいこさん。オレは決断を翻しそうだ」
「同じ顔だよなあ?」
だらしなさが抜けるといいが。
「心の交流に重きを置けよ? 鏡を見て自分を正せ。ほくろがおまえに記されて居るのだからな」
「ありがとう」もっと言いたいよ。

お弁当のおかずは、イタリアンチキンソテーと言って立ち去った。スーツ姿ということは、どこかへ面接だろう、うまくいって欲しい。


「麗しのそろい踏み。噂の双子、まあ、なんてことでしょう。伊達男がふたりっ! 美麗さがとどまるところを知らないわっ」

「黒髪スパイラルマッシュにアッシュブラウンのマッシュパーマでカールの双子。いずれ劣らぬ容姿端麗っ、どこに隠れて居たのか、魅惑の一卵性双生児、モデルでもしてんのか?」

背後で歓声が上がって居る。

「有無を言わさぬ容姿。……佳麗である。堪能し、生きる喜びを知る、芸術に遜る(へりくだる)」

「五辻めっ、器量に嫉妬する! ひとりは黒髪、奴はほくろ。麗しの罪を知れ。人類の敵と豪語してくれる、味方は多いが敵も然りっ! この世の悪の美を観測したぞ。空調を乱す悪循環の憶測をはらむ。徹底的に貴様の未来へ関与する、上司としてわが社の平和を存続させる、覚悟したまえ!」

そうだな、忘れてた。こうして驚かれるのが当たり前。そうか、郁……LINEだ。
『ご飯担当だから確認する。3人分だな?』帰れば居るんだ、妙な安心感。俺も郁に甘えないよう踏み出さねば。


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