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第73話

「騒がしいですね」

 ドアを開けたのはネイだった。

 澄人の監視をずっとしていたネイだったが、アーティナル・レイスの修理が全体の九割ほど終わった辺りから、どこかへ出かけるようになった。

 いったいどこへ行っているのか? 澄人とナオが聞いても、詳しいことは教えてくれず、ネイは『所用です』としか答えてくれなかった。

「ネイ。今までいったいどこへ――」

 澄人がまた聞こうとすると、ネイはそれを遮るように言う。

「柳原澄人様。武装の修理の進捗状況は、いかがですか?」

「え? ああ……みんなが手伝ってくれているおかげで、かなり進んではいるけど、もう少しかかると思う」
「具体的には、いつ頃に終了する予定でしょうか?」
「うーん……明後日の夜かな」

 澄人が今まで学び得てきたのは、主にアーティナル・レイスを治すための知識。アーティナル・レイスの武装に関することも、一応勉強はしていたが、本腰を入れていたわけではなかった。それでも、澄人がなんとかやれているのは、ナオや皆のおかげである。

 ネイは倉庫内の状況を、まるで調べるような目で見ると、

「明日の朝五時までに、武装の修理を終わらせることはできませんか?」

 なんといきなり、作業終了の時間を予定より三〇時間以上も早めろと言ってきた。

「明日の朝まで、二〇時間もない。不眠不休でやったとしても、全部は終わらないよ」
「すべての武装の修理を終わらせろ、とは言いません。このリストに記載されているものだけで結構です」

 ネイはタブレット端末を澄人に渡した。

 表示されているリストには、まだ手をつけていない武装のうち、約三分の一が記載されていた。

「……理由を聞かせてくれないかな?」

 さすがに、澄人もすぐには頷かなかった。

 いくら三分の一とはいえ、作業を急がなければいけないことに変わりはなく、治ったばかりのナオの姉妹兄妹達にも負担をかけることになる。それなりの理由を聞かせてほしいと思っているのだろう。

 そしてナオを含む皆も、同じ――澄人に今以上の負担をかけさせ、作業を急がせる理由を知りたいと思っていた。

 するとネイは、全員の視線が集まったタイミングで、それを話し始めた。

「偵察部隊から、明日以降に敵が襲撃してくる可能性が高いという情報が、入ったためです」
「なんだって!?」

 どうして急に? と、驚く澄人に、04が説明をした。

「前回の戦闘で、敵も相応のダメージを負っています。澄人がきてから、これまで襲撃がなかったのは、こちらと同じように修理をして、戦力を整えていたのでしょう」
「その通りです。しかし、敵のヒューマノイドとアーティナル・レイスの修理も終わり、現在は再襲撃の準備をしている模様です」

 澄人は、再びタブレット端末の画面に目をやる

「つまりこのリストは、敵の襲撃に最低限対応可能な武装ってことか」
「肯定です」
「……わかった。なんとかするよ」
「感謝致します」
「敵が襲ってくると言われれば、できないとは言えないからね」

 一応、この基地にいる人間の傭兵達も、SAFU(Sub Armored Frame Unit)と呼ばれる、強化外骨格で武装しているが、人間以上の身体能力、耐久力、攻撃力持ち、数も多いヒューマノイドとアーティナル・レイスの混成部隊が相手では、人間の傭兵達はかなり分が悪い。目には目のごとく、アーティナル・レイスに戦わせる方が、もっとも被害を抑えることができる。ただ、それも指揮次第ではあるが……。

「みんな、聞いた通りだ。悪いけど、引き続き手伝いをお願いします」

 澄人が頭を下げて言うと、その場にいる、ネイ以外の全員が「了解しました」と答え、作業を再開した。

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