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151話 対面

「皆さん! 今から首輪の効力を無効化しますので逃げたい方は一緒に来て下さい。ここの暮らしが気に入ってる方は残っても構いませんが、次にまみえる時は敵になってると思いますのであしからず」

 地下室でレン君と合流を果たしたあたし達は、あたしのリセットとヒメの治癒魔法で幾分回復したエルフ達と共に地上に出てきた。
 そしてレン君の指示で、同部屋の先輩達が集めたという首輪に支配されていた人達の前に立っている。それにしても、既に全員が集められていたのには驚いた。しかも召喚魔法陣まで破壊してきたらしい。レン君の手際の良さに、もうヒメの好き好きオーラが止まらなくなってるよ。どうするのさレン君!

「ここから逃げ出して何処へ行くんだ?」

 ある訓練兵から質問が出た。

「それはここを出てから説明します。今ここで話したら、もし残りたいという人がいたら情報がダダ洩れになるじゃないですか」

 それもそうか、といった感じでウンウンと頷く人多し。ここに来た人達って、基本的に物事をあんまり深く考えないんだろうね。だからこそここにいるって事か。

「それではっ! ここに残りたいという方は(ねぐら)に戻って下さい!」

 うん、ここに残りたいって人は誰もいないわね。

《うにゃ!》

 あら、アイギス、また一匹捕まえてきたのね。偉い偉い。うりうり~♪

 あ、アイギスが巡回の兵士を無力化して捕まえて来たの。もう十二人が折り重なってるわ。それにしても、これだけの巡回兵が消息を絶っているのに騒ぎにならないって……まあいっか。

「では、首輪の効力を無効化します。そしたら門をぶち破るので全力で逃げて下さいね。逃げる時はこの黒豹が先導するので離れないように!」

(行動支配を受ける前の状態まで元通りになあれ!)

 カチャリカチャリと二百人分の首輪の錠前が外れる音がする。

《外れた! 外れたぞー!!》

 ちょっと! 歓声とか上げたら騒ぎになっちゃうじゃない! もう、バカなのかしら!?……うん、バカなのよね、ここにいるって事は。
 はぁ……仕方ないか。

「メッサーさん! 門の破壊を!」
「承知!」

 バキバキバキッと破壊音を立てて、メッサーさんの風魔法が門を打ち破った。すかさずアイギスが駆け抜け脱出者を先導する。同時にヒメとメッサーさんもサポートに走った。

「さて、これだけデカい音がすれば流石に出て来るだろ」
「そうだね。殿はボク達の出番って事で」
「シャオロン、出てくるかしらね?」

 みんなが逃げるまで敵の足止めをするのはレン君、お姉ちゃん、そしてあたし。一応、銃火器は使わない事にする。向こうにも召喚者がいる以上、帝国にヒントを与える事はしたくないもんね。エルフを救出した時にも使ってるけどあの時は魔法として認識されているはずだ。

《脱走だー!》
《追え! 追えー!》

 おっと、出てきた出てきた。思ったより少ないわね。訓練兵も戦力としてあてにしてたのかしら? 悪いけど訓練兵のレベルじゃ鎧袖一触よ? 教官のウデを見ても正規兵の練度が高いとは思えない。

「一気に減らそう。ラーヴァさん、範囲攻撃魔法行けますか?」
「ふ。誰に言ってるのさ?」

 ニッと口端を吊り上げながら魔力を練り始めるお姉ちゃん。同時にレン君も魔法を繰り出す準備をし始めた。二人とも、そんなに多くの魔力は込めていない。皆殺しにするつもりはないのね。
 レン君の魔力操作法を常用する様になってからは、皆の魔力操作の緻密さに磨きが掛かっている。恐らく怯ませてその隙に撤退するには十分なくらいの魔力を込めたんだろう。

「そらっ!」
「はっ!」

 レン君の掌からは雷球が。お姉ちゃんの掌からは火球が。それぞれ敵の上空へと飛んで行き、爆ぜた。

「な!?」
「弾かれた!」

 でも敵兵は全くの無傷で迫って来る。

魔法無効化(ディスペルマジック)じゃあねえみたいだ」
「うん。魔法自体は正常に発動したね。広域防御障壁の類かな?」

 う~ん、一筋縄じゃ行かないって事ね。でも。

「魔法がダメなら物理で殴る!」

 あたしはアブソーバー改を前面に構え、敵中へと殴り込んだ。

「せえええぇぇぇっ!」

 キュルキュルとリールを高速回転させながら、魔力を纏わせた星球を飛ばす。最近は鋼線を通した魔力操作で飛ばした星球の軌道を変えられるようになったんだ!
 星球を敵の先頭集団の真ん中に落とす。そして纏った魔力が全方向に炸裂する必殺のクラスターボム。
 単純な物理攻撃かと思いきや、思わぬ範囲攻撃に予想外の被害をもたらされた敵兵は慌てふためいている。そこへ再びレン君の雷撃とお姉ちゃんの火球。
 しかし、またしても二人の放った魔法は派手な爆発音はするものの、敵にダメージを与えられてはいないみたい。
「やっぱレジストされるか」
「広域魔法防御だね。突破出来なくもないけど……」
「ははは。ラーヴァさんが全力で撃ったら、あそこにいるシルトまで消し炭になっちゃいますよ」
「だよねえ……」
「……となると」
「こっちで行くしかないか」

 なにやら後ろで不穏な会話をしているレン君とお姉ちゃんが、それぞれ愛刀を抜いた。こうなると白兵戦になる訳だけど、刃物を使うからには敵兵も気絶する程度では済まなくなっちゃったね。大人しく逃がしてくれればいいのに。

「!」

 その時、いきなり敵兵が左右に分かれて中央に道が出来た。

「二人共あたしの後ろへ!」

 開かれた中央から光の矢が飛んで来る。矢というよりもはや丸太ね、このサイズ。あたしはそれをアブソーバー改で受け止める。特に爆発する事も無く、その光の矢(丸太サイズ)はアブソーバー改に吸収されて行く。

「へえ……今のを受け止めるんだ? しかもその盾、魔法を吸収したよね? 君達、何者だい?」

 いつの間にか五メートル程先に、上下黒のゆったりした服を着たぽっちゃりした男が立っていた。

 ――コイツか。

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