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第43話

「(提案?)」
「(どれをレンタルするか、私に任せていただけないでしょうか?)」
「(大丈夫……なの?)」

 二人で考えた方が良いのではないかと、不安の色を見せる澄人だが、ナオは「(はい。大丈夫です)」と伝えた。

「(さっきも大丈夫って言っていたけど、なんでそんなに自信があるの?)」
「(実は私、A.R.Bをやったことがあるんです)」
「(えっ、そうなの!?)」

 澄人はモバイル端末でナオの動画を探し始めたが、「(動画とかはありませんよ)」と笑って見せる。

「(ありませんって……)」

 それでは信憑性に欠ける。そう言いたそうな目をしてくる澄人だったが、ナオの態度は崩れない

「(澄人。なぜ私が軍用アーティナル・レイスの開発計画――RAY・プロジェクトの実験機として採用されたのか、わかりますか?)」
「(よく考えたことはないけど……先行量産型だから?)」
「(それもありますけど、もうひとつ理由があります。それは――)」

 そうしてナオが自信を持っている理由を話すと、澄人は目を見開いた。

「(そうだったのか。だから、そんなに自信を持っているんだね)」
「(はい)」
「(わかった。そういうことなら、何を選ぶかはナオに任せる。でも調整は手伝わせて)」
「(お願いします)」

 ナオは五分ほどで武装を選びレンタルすると、澄人と準備室へ入っていった。

 約一〇分後。白のボディスーツに着替え、武装を身にまとったナオと澄人が準備室から出てくると、すでにフミヒメがバトルリングにあがっていた。

「そっちも準備は終わったようだな」

 澄人の前まで歩いてきた黒邉。その左手首には澄人と同じような、アーティナル・レイスと脳内音声でやりとりするための、ウェアラブル端末がつけられていた。それでフミヒメに指示を出すつもりなのだろう。

「っふ。ブレードとハンドガンとは、またおもしろみのない武装を選んだもんだな」

 ナオの武装姿を見て、黒邉は鼻で笑った。

 黒邉が言ったように、ナオが選んだのは、指先が出ているナックルグローブに、ショートブレードが二本、ハンドガン二丁という、比較的標準的な装備で、身につけている武装も回避性能を重視した軽量かつシンプルなものだ。

 対して黒邉のフミヒメは、服装自体は準備室に入る前と変わらないが、足にはスラスターつきの脚部ユニット。腰に装着されたハードポイント・ハンガーには、腰と肩の関節を保護するように配置された軽量アーマーと、動きを補助するためのスラスター。そして武器は、刀状の大型ブレードが一本に、鉄扇が二本、ハンドガンが一丁と、ナオよりも重装備だ。

「そんなんで、俺のアーティナル・レイスに勝てると思っているのか? 何なら選び直させてやってもいいぜ?」
「ナオが、これがいいと言って選んだんだ」
「お前、アーティナル・レイスに武装を選ばせたのか?」
「そうだ」
「――っぷ、はははははははは!」

 大声で笑い出す黒邉。すると周りの男達も同感だというように、笑い声をあげた。

「ご主人様、この武装が初心者におすすめですよ~ってか? くははははは」
「しょうがねぇよ。あいつ、A.R.Bの素人みたいだしさ」

 しかし澄人とナオは、そんな男達の言うことなどまったく気にせず、凛とした態度を続ける。

「確かに僕は、A.R.Bについては素人だ。だからこそ、余計な口を出さない方がいいと思った。彼女がこの武装をベストだと言うのなら、僕はそれを信じて任せるだけだ」
「くくく……まぁ、お前のアーティナル・レイスだ。お前の好きなようにすりゃいいさ。ただしバトルが終わった後で、見苦しい言い訳とかするんじゃねえぞ」

 黒邉は勝利を確信したような笑みを浮かべながら、リング外にある複数のモニターが設置されている、指示台へと移動していった。

「僕も指示台に行くよ」
「あ、澄人――」
「ん?」
「あ、あの……」

――もしバトルに勝ったら、私と手をつないでくれませんか?

 だが、それを言うことを躊躇してしまう。手をつないでくれなかったら勝ちませんと、脅迫しているように思われるのではないかと不安になったからだ。

「どうしたの?」
「……いえ。やっぱり何でもないです」
「ナオ。言いたいことがあるのなら遠慮なく言って。今の僕にとって、君が唯一の頼りなんだから」
「その……お願いを……」
「お願い?」
「勝ったら、ひとつだけお願いを聞いてもらっても……いいですか?」
「もちろんだよ。ナオにはそれだけのことをしてもらうんだから。一つと言わず、いくらでも言って」
「あ……ありがとうございます!」

 手をつなぐというのは、流石に無理だと言われるかもしれない。でも、今はそう言ってくれるだけで充分だった。

「それじゃあ、行ってきます!」
「頼むよ、ナオ」
「はい!」

 気合いの入ったナオは拳を握りながら、バトルリングにあがっていった。

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