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133話 ハロー〇ーク?

 ヒメとレン君は領主様のお屋敷で帝国兵の聴取、という名の面接に立ち会っている。
 帝国貴族の息が掛かった危険分子を取り除くのが目的だが、既にレン君の師匠と、彼に従う人達の情報によって振り分けは済んでいる。ヒメ達がいるのは、捕虜たちが命惜しさにその場しのぎのデタラメを言えないよう監視する為だ。

 そしてあたし達は、冒険者ギルドでエルフの『面談』に立ち会っている。
 森で暮らしていた時と同様に狩人として生きて行く事を望む者。
 魔法の腕を戦闘に活かし冒険者になりたい者。
 帝国への復讐を望む者。
 賑やかな街の様子に初めて触れて、人間社会に溶け込む事を望む者。
 魔道具制作職人になりたい者。

 それぞれの進路希望と生活拠点の希望を聞き取り、受け入れ口となる各ギルドへと割り振られていく。年若いエルフは賑やかな領都での生活を望む者が多く、年配のエルフは人との関わり合いを嫌い宿場町や迷宮街での生活を希望する傾向が強かった。

 
 エルフ達との面談も終わり、あたし達は冒険者ギルドの一室でテーブルを囲み、お茶を喫している。

「結構武闘派が多いんですね、エルフって」
「意外と負けず嫌いなんだよ。帝国に一泡吹かせたいんだろうね」

 なんと百人程のエルフが冒険者登録をした。もちろんこの全員が戦闘を望む者ではないのだけれど、迷宮街で腕を磨く事を希望したのはこの中の七十人にものぼる。
 あとは宿場町で狩人兼護衛をする者、採取系が得意なエルフの能力を活かす者等々。中にはギルド職員見習いなんていうのもいる。
 その他、商人ギルドや錬金術師ギルドなどに登録した者でも、迷宮街を拠点とする者もいるので、後日またまた大移動をする事になりそう。

「セラフさん、迷宮街の人口が一気に増えそうですけど受け入れは大丈夫なんですか?」
「エルフだけでギリギリ、帝国兵はちょっと無理かしら……大規模な増築が必要かも知れませんね」

 でも現在は宿場町の設営、整備に職人を割いているので、中々一気に増築と言うのは難しいんじゃないかしら?

「その辺りはエルフに協力させたらいいのさ。森を切り拓いて集落を作る種族だからね。みんな自分の住まいくらいは自前でどうにか出来ると思うよ? 幸い、迷宮街を広げる為に伐採するんだろうから、建築資材には事欠かないでしょ」

 お姉ちゃんがそう言いながらティーカップを口に運んだ。なるほどねー。あ、でもそれなら!

「それじゃあ、切り拓いた迷宮街の一角を、エルフ居住区画とかにすればいいのかな? その方がエルフも余計なストレスを溜め込まないかもしれないわ」
「あ、シルトさん、その案頂きました!」

 あたしの提案に、ビシッと人差し指をあたしに向けて立ち上がるセラフさん。
 そこへ冒険者ギルドのギルマスであるケーニヒさんが参加してきた。

「悪いな、邪魔すんぞ」
「あら、ギルドマスター。お疲れ様です。会合は終わったんですか?」

 セラフさん、会合って?

「ああ、それはですね……」

 エルフの中でも、例えば売り子さんやウエイトレスさんになりたいという人がいた場合。
 冒険者ギルドにも商人ギルドにも、似たような求人依頼は来る。ただし商人ギルドへの求人は比較的長期に渡るものが多いけど、冒険者ギルドへ来るのは短期間のものが多い。
 ただ、商人ギルドに構成員として登録してしまうと、あくまでも所属は商人ギルドになるので正規の店員さんになるのは色々と面倒がある。その代わり、ギルドの構成員である事業主からの求人を斡旋してもらえるメリットもあるのだけれど。
 逆に冒険者ギルドの構成員になると、依頼を受けるノルマというものがある。ノルマが未達になると、最悪構成員の資格を剥奪されてしまうので、腰を落ち着けて長期間同じ場所で働くのは難しい。

「そこで、ギルドの枠組みから外れた組織を作ろうって話になってな」

 職業訓練及び斡旋所。つまり、なりたい職業に就けるよう訓練をさせてくれる組織ね。カリキュラムを終了した者には仕事場を斡旋する。逆に雇用主は正規の従業員を雇いたい場合はギルドにではなくこの斡旋所に求人を出す。そういう仕組みらしい。今まで通りアルバイトや日雇い的な求人は各ギルドで受け付ける。

「ってな訳だ。もちろん、冒険者志望の奴の為に冒険者コースってのも作る予定だ」
「それは凄くいいと思います!」

 思わず声を上げてしまった。だって、冒険者って命懸けの職業の割にはぶっつけ本番過ぎると思う。いい師匠や先輩冒険者に出会えなかったら死んじゃう確率が高いと思うもの。
 ちゃんと訓練して、知識を得た上で冒険者になった方が絶対にいいに決まっている。

「まあ、これはレンの発案なんだがな。どうも、レンの世界には似たようなモンがあるらしい」
「それで、レン君は?」
「まだ領主様んトコでやり残しが有るとかで、明日こっちに合流するそうだ」

 そうなんだ。またまたレン君大活躍だね!

*****

「どうにか形になりそうですね、レン」

 私は一仕事終えて首をぐるぐると回しているレンを見て、頼もしいという気持ちを抑えられずにいます。

「ああ。後は篩から漏れた奴らを辺境伯に任せて、おっさんたちは迷宮街で鍛える」

 帝国兵の捕虜たちの中でも危険分子と判断された者達は騎士団に拘束されました。
 あとはレンの師匠である元百人隊長さんをリーダーに組織化を進めて行き、行く行くは帝国の企みを内部から崩して行くのが狙いです。出来ればエルフの皆さんの協力が欲しいところですが、ラーヴァさん達がどうなっているか、明日合流してから再確認ですね。

「まあ、エルフはどうなるかわかんねえけど、俺達は俺達でやれる事はやったんだ。なんとかなるだろ。それに今日の会合でも俺の貢献度が上がったからな。支援も期待できるんじゃねえかな。ハハハ!」 
 
 全く……レンは冗談めかして笑ってますけど……この世界にちょっとした革命をもたらしている事を自覚しているのでしょうか?

 私は父とは袂を分かち、打倒を決意しました。ですが、そんな父にも一つだけ感謝している事があります。

 それは――
 
 私の前に、この世界にレンを連れてきてくれたこと。

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