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121話 制圧

 敢えて魔法無効化(ディスペルマジック)を有効にさせた上で、帝国兵の心を折る。
 こちらの魔法攻撃で大打撃を受けた帝国は、当然魔法無効化(ディスペルマジック)を使って来る。でも、それすら無駄な事を思い知らせてやるんだ。一方的に蹂躙される恐怖と共に。

「アクア・ヴェール展開します!」

 ヒメが白いマギ・ガンを上空に向けて発射すると、水の防御膜が周囲に展開した。ヒメのマギ・ガンの使い方はこれこそが真骨頂かも知れない。弾倉に各種補助魔法や回復魔法を装填して使用する。ノータイムで発動する魔法ほど厄介なものはないもんね。
 これで帝国からの弓矢の攻撃はこちらには通らない。警戒すべきは敵の魔法攻撃なんだけど……

「帝国兵に集まりし魔力よ、元通りになあれ!」

 魔法攻撃をしようとする帝国兵の魔力の収束をリセットで散らしてしまう。
 これでもう帝国兵には接近戦しか手はない。でもこっちには……

「カノン、撃ちます!」

 各々が手にしたマギ・カノンやマギ・ガンから赤や黄色、青など、様々な属性色の魔力弾が射出され、着弾した場所に攻撃魔法と同等の暴威が巻き起こる。

《な、なんで魔法が! ディスペル効いてねえのか!?》
《そ、そんなはずは!》
《ダメだ! こっちは魔法が使えないぞ!》
《向こうがディスペル使ったのか!?》
《違う! そもそも魔力が散ってしまうんだ!》

 よしよし、敵兵は混乱の極み。

《取り乱すな! 盾兵を前に前進! こうなったら接近戦しかあるまい!》

 あ、敵が隊列を整え出しちゃった。

「敵が落ち着きました! 横隊組んで来ますよ!」

 防御力重視の重装兵を前面に押し出し、帝国軍が隊列を成して迫ってくる。

「ここから先はボクと!」
「俺と!」
「あたしの出番!」

 あたし達のパーティの中でも、接近戦に長けた三人が気合を入れる。

「シルト! バフを掛けるのでディスペルをリセットして下さい!」
「りょーーーかいっ!」

(あたし達の魔法を阻害するもの、元通りになあれ!)

 ヒメの指示で、あたし達の魔法を阻害している魔法無効化(ディスペルマジック)をリセットする。

「オッケーよ、ヒメ! やっちゃって!」
「はいっ!」

 ヒメは右手で『蓮華』を抜き放ち、その刃から発する光があたし達を包み込む。
 ドラゴン装備にエンチャントされている各種強化補助とはまた別の、身体の中から力が満ち溢れてくる感覚。ドラ肉効果で既に常人離れした身体能力を持ってしまったと思われるあたし達が、さらに強化されて超人の域に足を踏み入れている。
 雑兵がいくら来ようと全く負ける気がしない。

 ――キュルキュルキュルキュル

 モーニングスターの柄尻にあるリールが高速回転する音と共に、星球が帝国兵の先鋒に向かって飛んで行く。帝国兵の先鋒の一歩前の地面に叩き付けた星球は、一メートル程のクレーターを形作った。
 その威力に恐怖する帝国兵。自分達の持っている、薄っぺらい矢避けの盾程度では防げない。一瞬でその事を理解する。
 でもそれで終わりじゃないのよね!

「クラスター・ボム!」

 星球のスパイク部分が、質量を持った魔力弾を乱射する。
 星球を起点として扇状に放たれた魔力の散弾は、多くの帝国兵の盾や鎧に風穴を開けた。これだけで十人くらいは戦闘不能かな? 
 グリップの所のボタンを押して、鋼線を巻き戻し星球を引き寄せる。その間のスキはシールドツインライフルの射撃で補う。
 近寄れるものなら近寄ってみなさい!

 あたしのクラスターボムで隊列を崩した所に、お姉ちゃんの炎蛇が更に穴を押し広げる。そもそも横隊って、横に広がってて前後の厚さが無い訳で……

「中央奥の騎馬が指揮官だろう。俺が行って来るよ。『雷装纏鎧(らいそうてんがい)!』」

 出た! 雷魔法を自らに取り込み、爆発的にパワーアップするレン君のスキル! あれ、カッコイイんだよなぁ。

 『雷電』と『紫電』を両手に持ち、目にも止まらないスピードで隊列の穴に向かって切り込んで行く。レン君が触れた敵兵は弾け飛び、やがて敵の指揮官が乗った馬が棹立ちになった。落馬して動かなくなる指揮官。
 そしてレン君の声が響き渡る。

《貴様らの指揮官は討ち取った! 全員大人しく投降しろ!》

 でもレン君の声を聞き逃げ出す者もやっぱりいる。でもそんなヤツは……

《ぎゃああああ!》

 全身を切り刻まれて、血を吹き出して倒れた。

「逃がしはしない。私の風魔法に切り刻まれたい者は遠慮なく逃げるがいい」

 そう言ってメッサーさんは、帝国兵の周囲に風を巡らす。本当にただの風なんだけどね。でも帝国兵にとってはただの風に囲まれている事が、喉元に刃を突き付けられているのと同義。
 生き残った全員が武装を解除して力なく座り込んだ。

「ラーヴァ。屋敷から人質を連れて来よう。流石にこの人数を拘束するのは骨が折れるからね」
「はあ~、仕方ないか……シルト、ここは頼んだよ? 逃げ出したりしたヤツはツインライフルでぴちゅんてしていいから」
「は~い。いってらっしゃい!」

 メッサーさんとお姉ちゃんが屋敷の方へ戻って行った。
 帝国兵にはレン君が睨みを利かせている。その時、草叢から一人の男が両手を上げて現れた。う~ん、何かいるのは魔力視で分かってたけど自分から出て来るなんてね。

「なっ! あんたは……」

 あら、お知り合い? 
 まあ、レン君も帝国にいたんだし知り合いくらいいるか。

「よう、元気そうで何よりだな、レン」

 草叢から出てきた男は、親し気な口調でレン君に話しかけた。

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