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第30話 魔法石と魔水晶

 スカイエリアを後にしたイクトたちは、王都へと戻った。残り少ない時間で、王国祭を楽しむために。
 王国祭は、王国主催のイベント以外にも民間主催のイベントも多数行われている。大食い大会や仮装コンテスト、バザーも開かれている。

「いやー、それにしてもすごい人だなー」
「迷子になりそうだぜ」
「特にメイビスは気を付けないとなー」
「むっ、どーゆー意味?」
「ちっさいから」
「ちっさいゆーな!」
「ぐぼぉ。み、鳩尾に肘鉄はやめろ……」

 メイビスをからかっていたローグがメイビスから肘鉄をくらい、その場でうずくまって動かなくなってしまった。

「うはははは! ローグ、バカじゃねーの。あはははは!」
「う、うっせー」
「でもま、メイビスが小さくて可愛いのは本当じゃない?」
「肘のせないのっ!」
「ごふっ」

 メイビスの頭に肘を乗せてたアスカも肘鉄をくらってその場でうずくまって動かなくなった。

「朝もやってたのに元気だなー」
「まったく!」
「そんなに怒るなよ」

 ぷんぷん怒っているメイビスの頭をイクトは優しく撫でてあげた。少し怒っていたが、どことなく嬉しそうであった。

「お? バザーなんかもやってるのか」
「毎年掘り出し物があるのよね、ここのバザーって」

 民間主催のこのバザーは、魔道士、錬金術師、一般人問わずに様々な人が出品している。そのため、大小問わず様々なものがある。

「こういうのも売ってたりするの」

 そういってメイビスが見せてきたのは、魔法石であった。7色の光を持つ虹色魔法石は珍しいが、単色の魔法石はそうそう珍しいわけではない。ちなみに、イクトが持っているカートリッジの中に入っているやつは魔水晶で、魔法石とは異なる。

「これはね、魔法石と言ってね。魔法の指輪を作ったりするときに使われるものなのよ」
「魔法の指輪?」
指輪魔法(リングマジック)っていう魔法があって、それを使うために必要なのが魔法の指輪」
「へぇ」

 魔法石を見てみると、色とりどりであった。これは、属性ごとに魔法石があるためで、さらに色の濃さによって魔力の含有量が異なる。なお、色の濃さに左右されず、魔力の含有量が一定なのが魔水晶だ。

「これが、魔法の指輪?」
「そうよ」
「ただの指輪っぽいけど」
「魔道士は基本的に、生まれながらに使える属性がきまってるの。途中で属性を変えられない。だけど、この魔法の指輪があれば別属性の魔法も使えるのよ」
「ほー、すごいなー」
「魔道士の魔力を、魔法の指輪を通して属性を変えてるからこそ出来る芸当ね。もっとも、威力は著しく低下するけど。同じ属性の魔法の指輪がもっとも相性がいいの」

 魔法の指輪は、属性ごとはもちろん、濃さごとにも種類が存在する。ただし、色が濃ければ濃いほどレア度が上昇し、完全な色を持つ魔法の指輪は世界に21個しかないとされる。
 普通の指輪の代わりとしても使われることもある。

「げ、結構するのな」
「ま、掘り出し物とは言っても魔法石だからね」
「たかが石ころに7000Gか」
「たかが石。されど石ってことかしらね」
「それにしても、本当に色々なものあるんだなー」

 イクトは、バザーに出品されている様々なモノをマジマジと見ていた。
 魔法石をはじめ、魔法の指輪、家具、映画、杖、本や錬金釜なんかも売られていた。

「ん? なんだ、この本」
「真っ白」
「少し埃は被ってるみたいだけど……。おじさん、この本はなに?」
「その本は、商人から買ったもんだけど、中になんにも書かれていないもんだからね。何か書き込もうとしてもなぜか書き込めないし、気味が悪いから売ろうと思ってるんだ」
「ふぅん」

 古ぼけた本を手に取った。中はさっきも見た通り、真っ白で何か書かれている様子もない。しかし、イクトは最近どこかで似たようなものを見たことがあるような気がした。

「あー、あんちゃん。気に入ったならそいつはやるよ」
「え、でも」
「いいっていいって。どうせタダで手にいれたようなもんだしな。それに、あんちゃんのツレが結構買ってくれたしな。古着とか」

 見ると、メイビスが両手いっぱいに袋を抱えていた。いつそんなに買ったのかツッコミたくなったが、突っ込んだら負けだと感じたので突っ込むことはなかった。

「じゃあ、おじさん。これ、もらっちゃうけど」
「ああ、いーよいーよ」

 バザーを離れて、イクトたちは一度宿へ戻ることにした。宿で頼めば、指定した場所へ荷物を届けてもらえるからだ。さすがにあまりにも多すぎるため、お金はかかるものの仕方がない。

「イクトが背負って戻ればいいんじゃないの?」とメイビスが提案したが、仮に今からこれを背負って出立したところで明日の夕方までに学院へたどり着く自信がなかったのでイクトは丁重にお断りした。

「そういえば、何か忘れてるような」
「あー、そういえば」
「ローグたち置いてきちゃったな」
「子どもじゃないんだし、戻ってこれるでしょ」
「いや、子どもなんだが」

 一方その頃、置いていかれたローグとアスカは最近できたというカラオケで熱唱していた。

「どんどん歌うぜー!」
「デュエットよ、デュエット!」
「お、お客様。お時間が……」

 このあと、ハイテンションになったローグとアスカは店員に怒られた挙げ句、出禁になったのは言うまでもない。

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