バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

102話 新奥義炸裂!

 吐き出すはずのブレスが出ない事に戸惑いを隠せない邪龍。それでも再び口を大きく開け、魔力の吸収を始める。
 しかし、既にこちらの準備は完了している。

「今ですっ!」

 あたしの号令に初めに応えたのはお姉ちゃん。

「行け! 炎龍!」

 お姉ちゃんの紅蓮から放たれたのは炎の龍。今までの炎蛇とは熱量のスケールが全然違う。炎蛇は赤い炎の蛇が敵に食いつきに行く感じ。でも今度の炎龍は青白い龍が大きく顎を開けて邪龍を飲み込まんとする。
 口を開いて魔力を吸収しようとしていた邪龍は、その猛烈な熱量を口腔から取り込んでしまい、自らの肺を焼く。
 確かに邪龍は外部からの攻撃には無類の強さを発揮する。ならば内部から破壊すればいい。

「続けて行くぞ! 不可視の刃・電磁加速(ステルスエッジ・レイルガン)!!」

 腰だめに構えたレン君の鞘から抜かれた『雷電』が放つ神速の一撃は、刃先から一筋の雷光が走ったようにしか見えなかった。
 直後、邪龍の顔面で大爆発が起こる。あの速度は躱す事も防御態勢を取る事も不可能だろう。おそらく、光を認識した直後には被弾している。
 レン君得意の見えない刃を、更に昇華させた究極奥義とか言ってたな。本来は見えないのが利点の技なんだけど、極限まで凝縮した電撃魔法を鞘の中で練り込みなんたらかんたら。要は破壊力と速度を大幅に引き上げて避けられない、受けられないスピードで攻撃する。見えていても関係ない。そういう事らしい。

「ウインド・ランス五重奏(クインテット)!」

 メッサーさんのも凄い。風の魔力で編み込んだ螺旋が作り出す五本のランス。やがて螺旋が高速回転する。回転させる事によって貫通力が格段に上がるんだって。
 天に向かって掲げられたメッサーさんの掌がスッと邪龍に向けられると、五本のランスが邪龍に向けて殺到する。でもそれは一直線に飛ぶのではなく、それぞれが邪龍の死角へと放たれ邪龍の鱗を突き破る。
 凄い。あの邪龍の固い鱗を魔法で突き破るなんて……しかも五本のランスを全て別々に遠隔操作しているように見える。ホントにメッサーさんって天才だわ~。

 三人の波状攻撃を受けてもはや虫の息の邪龍だけど、最後の悪あがきか、あたしに向けて左手を叩きつけて来る。

『GAA!』

 その時アイギスから繰り出された、振り下ろされる邪龍の左手に炸裂する不可視の爪撃(ネイル・シュート)。その衝撃で一瞬邪龍の手が止まる。

「バーストショット! シルト! 今です!」

 そのスキを見逃さない、ヒメのマギ・ガンからのフルバーストでの射撃は、レン君の魔法がチャージされた雷撃。邪龍の腕を後ろに大きく弾く。ここで決めなきゃみんなに笑われちゃうよね!

「てええええい!!」

 ヒメの射撃のおかげで邪龍の心臓部ががら空きだ。助走をつけてジャンプ一番、衝撃槌鉾(インパクト・メイス)の一撃を叩き込む。

 ――ドゴン!

 鈍い音が響きわたり、内部を破壊した手応えを感じる。やがて邪龍の目から光が消え、地響きをたてて巨体が崩れ落ちた。

「ぃやったあぁーっ!」
「やりました! やりましたよ!」

 あはは。レン君、ヒメ、大喜びね。それにしても……

「ここまで派手に邪龍の体を破壊出来るとはね」

 しみじみとメッサーさんが言った。ホントにね。今までの攻略法はブレスの直前に口内を攻撃するというもの。でも今回は龍鱗すら貫く攻撃を繰り出した。

「でもこの破壊力を出すには相当なタメと魔力が必要だからね。シルトの力が不可欠だよ」

 えへへ。そうかなぁ? でも、大技を繰り出す為の時間を稼ぐのもあたしの仕事!
 それにしても、みんな凄くレベルアップしてて羨ましいな。ま、その事は後で考えよっと。

「ほら、レン君、ヒメ。最下層で入手出来るお宝だ」
「え?」
「迷宮で鍛えるのも君達の依頼だっただろう? だからこれも君達に渡そう。そこに転がっているデカブツもね」
「あ! あの! ありがとうございます! ほら、ヒメ! 早速収納してみようぜ!」

 邪龍の討伐報酬の魔法鞄。それに邪龍本体。メッサーさん太っ腹!

*****

《またフォートレスが迷宮の完全攻略をやっちまったらしいぞ!》
《これから支所の裏に邪龍を出すらしい! 見に行こうぜ!》
《マジか? 俺まだ見た事ねえんだよ!》

 迷宮から帰還しギルド支所へ報告に行くと、窓口でのセラフさんとの会話を聞きつけた野次馬達が話を拡散させてこの有様。ギルド支所の裏庭は黒山の人だかり。

「ではここにお願い出来ますか?」

 セラフさんが『討伐証明』を出すように促す。今回はもちろん邪龍の体の一部と言う事になる。でもメインディッシュの邪龍の前に当然第一階層からボスと戦っていた訳で……

 第一階層:ハイ・ゴブリン
 第二階層:コボルトロード
 第三階層:オークキング
 第四階層:リザードマンキング
 第五階層:オーガキング
 第六階層:ミノタウロス
 第七階層:ロックゴーレム
 第八階層:サイクロプス
 第九階層:ギガンテス

 ここまで綺麗に並べていく。まるで迷宮のボスの標本みたいね。そしてお待ちかね!

「ヒメ。出してくれるかい?」

 メッサーさんに促されてヒメが魔法鞄から邪龍を取り出すと、一層騒めきが大きくなる。

《あんなデケエのかよ……》
《つか、あれだけの物を収納している魔法鞄がスゲエ……》

 並べられた魔物をギルド職員総出で検分している。ギルドで買い取る際の査定の為だ。邪龍の身体を検分していたセラフさんがこちらに近付いてくる。

「確かに確認しました。ヒメさんとレンさんが昇級するのと、称号持ちになるのは間違いないでしょう。それにしても……この邪龍のダメージは凄まじいですね。龍種にここまでダメージを与えるなど戦術級、もしかすると戦略級の戦力ですね」
「戦略級とは大袈裟だね。ところで、今回の戦利品の扱いなんだが……邪龍はこちらで確保したい。各魔物の魔石もだね。それ以外の装備品や素材なんかはヒメとレン君に交渉して欲しい」

 セラフさんとメッサーさんの間でそんな会話が交わされる。そうか、あたし達のパーティ単体で戦争の行方が左右されかねない存在になっちゃった訳か。戦術級とか戦略級ってそういう事よね? やっぱり、帝国とはやり合う事になるのかな……

 一旦支所の窓口に戻り今回の報酬を受け取る。結局、レン君達は一部の装備品を除いて全てギルドに売却したみたい。結構な金額になる筈なんだけど、イングおにいにドラゴン装備を頼むからお金が必要だって言ってたわ。確かにね。

 それから、例のマギ・ガンとかマギ・カノンの事でも相談があるって言ってたわね。その相談の場にアインさんとセラフさんも参加して欲しいみたい。なんの相談なんだろう?

 

しおり