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41話 覚醒?

 第三階層に踏み込んでからは、ゴブリンやコボルトなどの小型の魔物は出て来なくなった。出て来るのはオークとオークの上位種、それにあたしは初遭遇のリザードマン。名前の通り二足歩行のトカゲなんだけど、チロチロ細長い舌を出してちょっと気持ち悪いわね。

 そのリザードマン、体格は大人の男性並みなんだけど……

「っとお!? あぶないわね!」

 剣や槍で武装した攻撃や、バックラーでの防御も去る事ながら、太くて長い尻尾での一撃が強烈なのよね。人間や今まで戦った亜人タイプの魔物には無い、トリッキーな攻撃なので意表を突かれてヒヤリとする。
 威力も、オークの上位種の一撃に匹敵するので油断出来ない。

「大丈夫かシルト!」
「はい! 問題ありません!」

 辛うじて躱したけれど、バランスを崩してしまう。メッサーさんが心配して声を掛けてくれたけれど、『ドッジ・タンク』の修行をしてなかったら躱しきれなかっただろうな。

「すげえ……初見でリザードマン・ジェネラルと渡り合ってるぜ……」
「俺なんて、ジェネラルが相手だと未だに骨の1本は覚悟して行くのによ……」

 えっ!? なにコイツ上位種なの!?
 お兄さんパーティの声が耳に入ってきた。
 あ! ヤバ! 隙作っちゃった!

「くぅっ!」

 ダメージ軽減の腕輪に全力で魔力を流し、怪力スキル全開で右から飛んでくる尻尾にモーニングスターの一撃を合わせる!

 ――ドゴオオオン!

 生き物を殴ったとは思えない音を出して、リザードマン・ジェネラルの尻尾の軌道が変わった。

「あれ? 硬直してる? チャーンス!!」

 尻尾での打撃を弾かれ、硬直しているヤツは後ろ向き。後頭部をあたしに晒すとはね!

「えい!」

《ゴシャツ!》

「これが噂の撲殺か!」
「これが噂の撲殺だな!」
「噂の撲殺シーンを生で見られるとは……」
「俺、迷宮から戻ったたらみんなに自慢するんだ……」
「バカ! それは死亡フラグだ!」

 お兄さんパーティが何か言ってる。

「シルトー、今さ、『パリィ』発動したんじゃない?」

 そう言えば、今硬直してたわね……?

「はぁ……ちょっとタイミング的に盾じゃ受けられないし、躱す事も出来なかったんで、苦しまぎれに殴ったんですよね……」

「フフフ。やっぱり君は規格外だな。実戦の中でスキルを取得したらしい」

 ラーヴァさんとメッサーさんの話を総合すると、どうやらあたしは『パリィ』のスキルを取得したみたい。経験を積むと、スキルって増えるんだぁ~。

「ちょ、ちょっと待ってくれメッサーさん! それじゃあシルトちゃんはパリィのスキル持ってなかったのか!?」
「ああ。少なくともこの間教会で見た時は無かった筈だよ」
「マジかよ……」
「ウチのシルトは潜在能力の塊さ。物凄いスピードで成長し、新な能力を発現させる事もある。天才と言う奴かも知れないね」

 えへへへ~。天才魔法使いのメッサーさんに、そこまで褒められると流石に調子に乗っちゃうy…

《ぺしっ!》

「てっ!?」
「シルト? 調子に乗りますって顔してるよ?」

「「「「「ほんとだ!」」」」」

 え~~~!? まさかの満場一致ですかっ!?

 たは~。でも、初っ端からジェネラルみたいな上位種とやり合ったおかげで、通常種を相手にした時はそれ程脅威にはならなかったわ。
 そしてあたし達は問題の大部屋の前に辿り着いた。

「第三階層も、大部屋前の一本道はセーフティエリアなのかい?」
「ああ。上層と同じだな。メカニズムが分かってない以上推測にしかならないが、魔物が確認されていない事は確かだ」

 メッサーさんがお兄さんパーティに聞くと、大体予想通りの答えが返ってきた。

「そうか。ちなみに扉を開けて、そのまま中に入らずに放置した事は?」
「いや、それは無い」

 そんなやり取りの後、少しだけ考える素振りを見せるメッサーさん。
 そして、扉に向き直りながらも全員に向けて言葉を発した。

「試してみようか。扉を開いたまま中に入らずに待ってみよう。そのまま戻れるならよし、中から魔物が出て来るなら戦闘に入る」
「ああ、了解だ」

 メッサーさんが扉に触れ、消失した扉の中を伺う。

「オークキング……」

 中でじっとこちらをを見据えていたのは因縁の相手、オークキング。それに上位種が数匹。

 ここであたし達は、メッサーさんが提案した一つの検証を行う。扉を開いても踏み込まずそのまま待つ。扉は開いたままで中から魔物が出て来る気配はない。

「ふむ。これでまた報告する内容が出来たね。第三階層のボス部屋の主はオークキングとオーク上位種。扉を開けても立ち入らなければ魔物は出て来ない。これは非常に重要な情報だ」

 そうね。メッサーさんの言う通り、扉を開いて中を確認、勝てそうになかったら撤退を判断してもいいし、後から来るパーティーに共闘を持ちかけるのもアリかも。
 そして上層階と同じく、踏み込まない限りは戦闘にはならない。これはもう、この迷宮のシステムと考えてよさそうだ。

「もうひとつ確認したいのは、この扉がいつまで開いているのか、だが……」
「一度、一本道の手前まで戻ったらどうかなぁ? 大部屋に入ってもセーフティーエリア内にいる内は何も変化が起こらなかったしね」

 ラーヴァさんの提案で、一本道の手前まで戻ってみる。そしてまた一本道に進んでみると……?

「閉まってますね」

 消失したはずの扉が元通りに存在していた。

「では最後の検証をしたい。私達フォートレスはこれから中に入って戦闘をする。戦闘中に扉がどうなっているのか外から見ていて欲しい。目的はボスとの戦闘中に外から第三者が介入出来るかどうかだ。もし私達が入った後、介入出来るようなら入って来て貰っても構わない」

 流石に女の子三人だけで、オークキングが待つボス部屋に突入させるのは気が引けるのか、お兄さんパーティの面々は難色を示した。
 それでも、自分達が辺境伯領のトップチームである事を盾にメッサーさんが押し通し、無理矢理彼等を納得させる。
 何よりも、相手がオークキングとなれば、メッサーさんとラーヴァさんの戦意が物凄い事になっている。以前、不覚を取った相手だからかしらね。

「……仕方ねえな。それじゃあ介入出来なかった場合だが、扉に入れるようになるまで俺達はここで待機しよう。あんた達は終わったらお宝回収してそのまま帰還してくれ。俺達もその後キングと一戦やってから戻るよ」
「了解した。では頼むよ」
「おう。気を付けてな」

 そしてあたし達はオークキングが待つ大部屋へと踏み込んだ。

 一年前は大苦戦したオークキング。成長したあたし達の力が試されるわね!!

「今日は外で待ってる連中がいるので恒例のお茶会はなしだ。いくぞ!」
「「はいっ!」」

 メッサーさんの号令で、あたし達はオークキングへと疾走した。

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