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24話 自己評価が低くても、この娘は単純だから。

 リセットとは言い得て妙。あたしはそう思った。

「リセットの件は絶対に他言無用だね。怪我を癒す程度なら魔法を使ったとして誤魔化せるだろう。だが、これは世界の常識を変えてしまう程の可能性があるスキルだ」
「そうだね~。例えばだけど、ビースト系の魔物の元の姿をシルトが知っていたとしたら、その魔物を元の普通の獣に戻す事が出来てしまうかも知れない。それがいい事か悪い事かは別にして」

 二人の言葉を聞いてあたしは考え込んでしまった。そりゃ確かに凄いスキルだとは思うけど、あたし一人の力がそんなに影響力があるかなぁ?

「あのねえ、シルト。ギルド上層部ではもうボクらの事をかなり重要視してると思うよ? なにせメッサーさんは1級冒険者だしボクはエルフだ。シルトだって実は史上最速で3級に上がった期待の星だって知ってた?」

 まあ、それは知ってるし、ラーヴァさんの言いたい事も分かるけど……でもそれは、たまたまパーティーメンバーに恵まれたからだよ……メッサーさんのおかげで高難易度の依頼を受けられるから、功績ポイントもたくさん貰えるのであって。他の冒険者が『コバンザメ』って陰口言ってるのも知ってるし。

「うん、自分の力じゃないって思ってるでしょ? ブッブー!」
「ラーヴァの言う通りだよ。私達三人が今こうしているのは、シルトが私達をオークキングから守ってくれたおかげなんだ。あの時シルトが逃げるなり負けるなりしていたら……今頃私達はここにはいない」
 
 そうなのかな。敵を倒してる数は二人の方が圧倒的に多いし。

「そこは大きな問題じゃないよ。それこそ撃破数のみが重要視されるならヒーラーを志す人はいなくなってしまうからね」

そっか。もしかしたらヒーラーやタンク、支援系のポジションの人はパーティーに恵まれないと正当な評価を受けていない可能性もあるかも知れないわね。

「少なくとも、メッサーさんもボクも、シルトのおかげで撃破数を稼いでいるのは分かっているからね。シルトが居なかったらボクのキレイなお顔が傷だらけだったって事もさ」

 ぷっ! 確かにキレイなのは認めるけど。炎の魔法剣を使うおかげでいつも煤だらけなのよね、ラーヴァさんは。

「あはは。やっぱりあたしはパーティーメンバーに恵まれた。それだけは間違いないです! もしも、もしもお二人に危機が迫ったらあたしは『リセット』を使う事を躊躇しない事をここに誓いますっ!」

あたしの宣誓を聞いた二人は顏を見合わせてから言ってくれた。

「……最後まで付き合うよ」
「ボクもだね!」

*****

 数日後、あたし達フォートレスにギルドから召集が掛かった。

「あれからいろいろと調べたんだがな、魔族の出現頻度が高くなる、上位種が多い、ビースト系の魔物が激減する、と言ったケースに合致する事例がひとつだけあった」

 ギルマスのケーニヒさんが言っているのは、最近の魔物の動向の事。魔族系が増えて、しかも上位種の出現率が高くなっている事についてだわね。

「……迷宮、ですか?」
「流石は長命なエルフだな。知っていたか」
「ほとんどお伽話ですけどね」

 エルフのラーヴァさんがお伽話なんて言うくらいなんだから、相当昔の事なんだろうな。かつてはこの国にも迷宮があったらしいけど、今は遺跡が残っているだけ。

「古い文献には、迷宮が出現する前兆、或いは出現直後に見られる特徴として今森で起こっている現象が記述されていた」

まあ、直後と言っても数年から数十年単位で『直後』の範疇に収まるようだがな。そんな補足を入れたケーニヒさん。つまり、この近辺にまだ新しい迷宮があるか、これから出現しようとしているか。それを調べて来いって事かな?
 はっ! まさか迷宮を攻略して来いとか?

「おいシルト。いくら俺でもそこまで無茶は言わねえよ。今回はお前らフォートレスに指名依頼を出したい。迷宮の有無の確認だ。ギルドの指名依頼だからな。食料その他消耗品の準備費用は幾分都合する。期間は二週間。どうだ?」

 やっぱり、ケーニヒさんがあたし達を呼んだのはそれが目的だったのね。

「他のパーティーには?」

 メッサーさんがケーニヒさんに確認をとった。この街は辺境だから、腕利きの冒険者は他にもいる。

「いや、今の所はお前らだけしか声は掛けてねえよ。人員が必要なら見繕うが」

 全員が暫し考えた。あたし達は構成的にはバランスが取れている。それにラーヴァさんの魔法鞄が便利過ぎるし、あたしのリセットが有れば装備の損耗も気にする必要はないし。迷宮に潜るならともかく調査だけならあたし達で充分かしら。
 でも、メッサーさんはそこまで楽観していないみたい。

「このギルドに迷宮に詳しい人物はいますか? 若しくは調査範囲の地図が必要です」
「地図は提供しよう。残念だが迷宮に詳しい奴はいねえな。王都あたりならいるかも知れねえが」
「……分かりました。受けましょう」
「済まないな。今やフォートレスはウチのギルドでもトップチームの一角だ。安定感ならNo.1かも知れねえ。お前らに依頼するのが一番だと判断した。宜しく頼む」

 ケーニヒさん、最上級の評価って事ですねぇ。これは期待に応えなきゃだわ!
 
*****

 あたし達は、早速依頼の為の準備の為に街に繰り出した。ポーション類や食料をメインに。と言うかほぼ食料。ほら、ウチには食いしん坊エルフがいるし。あれだけ食べてスレンダー体型とか世界の女の敵ですか?

「違うよシルト。ボクはこの細い身体で、大剣振り回しながら魔法も繰り出してるから凄く燃費が悪いんだよ」

  ああ、なるほど。それもそうか。

「ところでシルト。さっきケーニヒさんが私達の事を安定感No.1と評価していただろう? それはね、紛れもなく君の功績なんだよ」

 はて。メッサーさん、それはどういう事かしら?

「パーティーの安定感イコールタンクの安定感、そう言っても過言じゃない。だから自信を持つんだシルト。君を評価してるのは私達だけでは無いという事だよ」

 そうか! パーティメンバー以外にもちゃんと見てくれてる人がいるからケーニヒさんが評価出来るんだもんね。よし! あたしは出来る子なのね! 頑張るわ!

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