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6話 オークの魔石の価値

 城壁補修依頼の完了証明とオークの魔石を手に、あたしはオークの返り血で汚れていた事も忘れてギルドに報告しに行った。

「こんにちは! 依頼完了証明ですっ!」

 あれ? また視線が痛い? ギルドに入った途端に、周囲の冒険者や受付嬢さんから注視されてるんですけど!

「あの……?」

 受付嬢さん、あたしの姿を見てポカーンってなってる。戻ってきてよ~……

「はっ!? ご、ごめんなさい! でもシルトさん、城壁の補修工事でなぜ血まみれなんです?」

 はっ!? あたしったら……こんな返り血塗れじゃ視線も痛くなるわね。迂闊だったわ。

「え、え~と、これは城壁の補修現場にオークが四匹現れまして……戦闘になりました! えへへ……」

 頭をポリポリ掻きながらそう答えると、受付嬢さんの血相が変わった。

「そっ、それでオークは!?」

 受付嬢さんの慌てっぷりが半端ないよ……

「一応、その……討伐しました……てへ☆」

 あたしは、ペロッと可愛く舌を出しながら、ゴロゴロとカウンターに魔石を四つ置いて見せた。

「へ?」

 おお、間抜けな顔で固まる受付嬢さん、綺麗なお顔が台無しですよぉ?

《おいおい、マジか? あの役立たずがソロでオークを四匹やっただと?》
《んな訳あるか! フカシこいてるにきまってらぁ! あいつ、戦闘スキルねえって話だぞ?》
 
 結構しっかり聞こえて来て泣きたくなるんですが……陰口は聞こえないように言って下さい。あたしの精神防御力がもちません。

「四匹の内二匹は知らない方に助けていただきまして」
「では、二匹はシルトさんが?」
「あー、はい。そうなりますね……」
「んー、わかりました。では城壁補修の依頼完了の報酬になります。依頼主からS評価を頂いたようなのでランクアップまであと少しですよ。それから魔石は買い取りで宜しいですか?」
「あ、はい。宜しいです!」

 受付嬢さんと二、三やり取りをした。彼女は少し考える素振りを見せたけど、どうにか話は纏まりそうね!

「うふふ。こちらが魔石の買い取り価格です。残念ですが、討伐依頼を受けていないので討伐報酬は付きませんけどね」

 いえいえ、臨時収入ですから問題ありませんって! 思わずにやけてしまうわ。あたしは優しい笑顔になった受付嬢さんから報酬を受け取り、上機嫌でギルドを後にした。

 思わぬ臨時収入も入った事だし、大通りの屋台街へ行って美味しいものでも食べよう! こんな日くらい、少しだけ贅沢してもいいよねっ!
 どこの屋台にしようかな~。やっぱりお肉? それともデザートをゴージャスにしちゃう? えへへ、悩んじゃうなぁ。
 とそこへ、どこか嘲るような声色で声を掛けられた。

「おい、役立たず。随分ご機嫌じゃねえか。どんなインチキしやがったんだ? 俺達にも一枚噛ませろよ?」
 
 あちゃー、これって百パー絡まれてるよね……もう顔つきがゲスいし。
 以前にパーティに入れてもらった三人組なんだけど、役立たずのレッテル貼り付けられた挙句に報酬もピンハネされたんだよね。

「インチキなんてしてないです。それじゃ!」

 逃げようとしたけど腕を掴まれたよ。はぁ……あたしの乙女の純潔は今日までかしら……

「おい、ガキども。その嬢ちゃんに何の用だ?」

 へ? ナニナニ?
 やけに野太い声が、連れ去られてあんな事やこんな事をされてしまいそうなあたしを助けてくれた。

「その嬢ちゃんに何かしようってんなら俺達が相手になるぞコラ?」

 ツルハシやハンマーを担いだゴツイおじさん達が二十人くらいで囲んでる。ああ! 城壁補修のおじさん達だ! 仕事帰りに一杯やってたのかな?

「お前ら、この嬢ちゃんはたった一人で四匹のオークから俺達を助けてくれたんだ。いや、結果的にだが城壁も守ったんだからこの街を守ったと言っても過言じゃねえ。いいか? オークのドタマぶっ潰して脳漿飛び散らしてなんて芸当、てめえら青二才に出来るんか? あ?」

 ガテン系おじさん二十人に囲まれて、三人組は正座させられて項垂れている。

「俺達はな、恩人たるこの嬢ちゃんを敬意を込めてこう呼んでるんだ。『撲殺脳漿スプラッシャー』ってな」

《おおおおおおお!! いいぞ、嬢ちゃん!》
《カッコいい異名が付いたじゃねえか!》

 ……なんだかとても不本意な異名なんだけど、善意から来てるのすっごく分かるのよね。しかも騒ぎを聞きつけて来た野次馬までもが大盛り上がり。どうしよう……

「わかったらこの嬢ちゃんにちょっかい出すんじゃねえぞ? もし次やったら俺達が許さねえ。脳漿ぶちまけてやっから覚悟しとけコラ」

 三人組は脱兎のごとく逃げていったわ。ふう……でも実際のところ、おじさん達がいなかったら危なかったもんね。ちゃんとお礼はしなくちゃ!

「あの、みなさんありがとうございました! おかげで助かりました!」
「なーに言ってんだ? アンタのおかげで俺らはこうやって今ここで美味いモン食えてるんだぜ? 嬢ちゃんも好きなモン食ってけよ。今日は俺達みんなからの奢りだ! なあみんな!?」

《おおおおお!!》

「えっと……甘えちゃってもいいですか?」

 何故かガテン系おじさんズに気に入られてしまったあたしは、あれやこれやとたくさんご馳走になってしまった。よし! お礼に明日も城壁補修頑張ろう!

 屋台で満腹になったあたしは、おじさん達と別れて鍛冶屋さんに向かっていた。

「こんばんはー! シルトだよ! おにいちゃん、いるー?」
「おう、どうしたシルト? 何か壊れたか?」

 奥からおにいちゃんが出て来た。

「あははっ、違う違う。コレ、お土産!」

 屋台で包んで貰った串焼き肉を、モーニングスターのお礼に持って来たんだ。

「ほう? 豪勢だな。依頼が上手くいったのか?」
「うん! おにいちゃんとおじさんから貰ったこのモーニングスターで命拾いしたんだ! だからお礼だよ!」
「命拾い……だと?」

 あれ? おにいちゃんの顔が険しくなったわね?

「詳しく話せ」

 あたしは、おにいちゃんに促されて今日の出来事を話した。

「ふぅ~、なるほど、そういう事か。大事に至らなくて何よりだな。それにしても、やっぱりソロってのはあぶねえな……」

 うん、あたしもそれは思った。今日だってローブの人が来なかったらどうなってた事か。それに屋台街で絡まれた時もそうだ。

「あたしも頑張ってれば、いつか必ず信頼出来る仲間が出来るはず! 頑張るよ!」
「そうだな……」

 そう言いながら、あたしの頭をくしゃくしゃと撫でてくれたおにいちゃんの目はとても優しかった。
 でも恋愛とかは歳の差が……

 ――ゴツン!!

 「いだぃっ!?」

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