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リセットしました

 いっしゅうかん。きそをまなぶのにいっしゅうかん。
 どういうこと……? 一年でカンスト出来ないんじゃないかしら。私はどうしたらいいというの……。
 
「俺達、超頑張ったぜ! 連携も結構できるようになった!」
「そ、そう。じゃあ、予行演習しましょうか。大丈夫。ウン・チク様に抜かりはないわ」

 正直、ウン・チク様の『それでもどうしてもジャンピングラビットが倒せない迷える子豚さん達へ』を使う事になるとは思わなかったわ……。

「いい? 予行演習するから、ミリアはベルンツハイムと辻回復の練習、キルクとダカートは攻撃しない、されないようにしてついてきて。ガウル、手伝ってね」
「おう」

 キルクとダカート、ガウルを連れて、ダンジョンとも呼べないような小さな洞窟へ行く。
 ガウルは言われなくても、キルクとダカートがよけきれなそうな敵を屠ってくれた。
 そして、洞窟の一番奥へ待機させる。
 
「じゃあ、十五分ほどで帰ってくるから」

 そして、私はジャンピングラビットを大量に引きつけ、キルクとダカートの所へ戻る。
 ダカートとキルクがぎょっとして、ガウルが遠い目をした。

「ガウル! 私と一緒にダカート達の後ろに下がって! ダカート、前へ出てキルクを守る! キルク、ダカートを援護して! この狭い道、攻撃すればだいたい当たるから!」
「え、ええ!? お、おう!」
「『マジックショット』! 『マジックショット』!」

 二人が頑張って反撃する。200匹ほどのジャンピングラビットを屠った後、肩で息をしていた。残念な事に、一方向からさえ防げばいいのに二人はぼろぼろである。
 私は考えた。

「……よしっ これでよしとしよっか! 明日リセット時計使おうね」

 正直、一撃も食らわないように練習してからがセオリーだと思うのだが、一週間これをするとか言うことになりそうで遠慮したい。

「なあ、これ、ジャイアントジャンピングラビット出現できるのか?」

「出来るよ、身動きできなくなるから、頑張って攻撃し続ければとりあえず倒せるよ! しかもこの手の裏技は評価に影響なし!」
「俺らの一週間の修行って一体……」

 ダカートとキルクが膝をついてうなだれる。いやー。一週間の修行がなかったら死んでたんじゃないだろうか。
 そうか、当日はうっかり死なせないように気をつけないとね。
 なんて手が掛かるんだ……。
 ウン・チクさんって本当に凄いなぁ。
 さて、帰ったら幾つかの運命値パターンによる育て方の講義か。
 その後、実際に運命値を獲得して、どう成長するか会議、だね。
 それを五回かぁ……。しんどい。
 ただでさえ、運命値と成長の仕方については判断が難しいのだ。
 後で調整は効くけど……。
 やはり、人値の前に初期スキルを決めるので、それで道の三分の一は決定してしまう。
 これだけやったんだから、それなりにいい運命値になって欲しい。
 切実に思う。




 戻ると、ベルンツハイムも無事ミリアを帰らせたようだ。
 ミリアは、攻撃を受けず、攻撃をせず、ひたすら回復がお仕事となる。
 この場合、敵にキュアで試練スタートなのである。
 これもまた、敵を友人に倒してもらうという裏技で好成績でクリアできるのだ。
 さて、全員を座らせて、ウン・チクさん特製の職業ごとのスキル系統の簡単な一覧表と好ましい運命値のリストを配った。

「じゃあ、タイプ別に分けて説明するね。まず、戦士型は大きく分けて5パターンなんだよ。軽戦士、重戦士、騎士、魔法戦士、団長が代表的だね」
「何が違うんだ?」
「軽戦士は速い、重戦士は攻撃力が強い、騎士は守るのが得意、魔法戦士は魔法剣の使用、団長は軍の補助系統だね。パターンと言うより、特徴かな。どれも高いプレイヤースキルが必要なので、ウン・チクさんの推奨は重戦士と騎士微特化一択です」
「なんで?」
「いくら早く動けても、ついていけないでしょう? 重戦士にしたって、力は強くても当たらないんだよ。魔法剣士はバランス取りが至難の業だし、団長はぶっちゃけネタスキルだよね。補助魔法使いが同じ事できるし。そうなると、どうしても重戦士微特化になっちゃうの。騎士微特化しておけば、パーティで便利でしょ。戦士の仕事は、戦い守る。ただ、それでも個人差があるからね。このパターンの運命値から選ぶといいよ」

 差し出したそれをダカートは真剣な瞳で見つめ……。

「違いが全くわからん。っていうか、運命値ってなんだっけ」
「天地人だろう」
「えっと、才能と、選択したステータスポイントと、戦い方ですよね」

 三人組は難しい顔でパターンを見る。

「……全くわからん」
「うーん、確かに難しいよね。私が運命値と戦い方を見て選んだほうがいいかな」

 という事で、ダカートは私が決めることになった。

「で、ミリア。ミリアの希望なんだけど、聖女は諦めたほうがいいんじゃないかな。ウン・チクさんの本に、これぞ有能僧侶! っていうのがあったんだけど、超広範囲回復はプレイヤースキルが必要だからやめておいたほうがいいって書いてあったんだよね」
「わ、私頑張れます!」
「でも、眠りの歌の範囲調節、一週間も掛かったでしょ? 軍一つの把握とか出来るの?」
「それは……! でも私、聖女になりたいんです!」
「うーん。ウン・チクさんの講義に従えば、ちゃんと堅実に役に立つ僧侶になるよ? 私が指導するよりも、そっちの方が絶対いいよ。いざやってみて、どうしても使い物にならないってなったら大変だよ?」
「うう……!」
「ついで、キルク。言うまでもなく、魔術師は選択肢がいっぱいあるわけだけど」
「うむ」
「ウン・チク様の役立つ魔術師例十選見て、どれがいいか選んで」
「むう……どうしても呪文は全部覚えられないのか?」
「覚えられません!」

 課金アイテムである程度どうにかなるけど、さすがにカザには冒険者達にそこまでやるつもりはない。ただでさえ手を焼かせる者達に、最低限のカンストさえさせればいいと思っているのだ。
 キルクは、散々悩んだ末に、「行ける! 少人数での攻略時に役立つ万能魔術師」を選んだ。
 明日は早く起きるように行って、三人とも寝かせる。
 明日は丸一日、リセットデーである。


 課金アイテム、リセット時計。これは、5回祝福をやり直すことが出来る。
 三人をそれぞれ素っ裸にして課金アイテムを使わせると、そこには初期装備の三人組がいた。ちなみに今日は講義はおやすみである。

「うおおおお!! 200ゴルドが! ポーションが! すげぇ」
「天値はいかがですか?」
「初期スキルはどうすればいい」
「順番に見ていくからね。んー。え、嘘……信じられない。まさか……」

 カザは、そのスキル構成に驚いた。それぞれの職にやんわりとあっているのである。
 これは、ありえない。エルフや獣人はステータスが偏りもするが、人間は何に向くかは完全なる運なのだから。恐らく、それまでの人生が反映されているのだろう。
 カザはゲームとの違いにあたりをつける。

「ど、どうなんだ? カザ師匠」

 さすがに三人が不安そうな顔をする。

「うん、大丈夫。これなら予定通りのスキルでいいかな。スキルは予定通り行くよ」

 ホッとした三人。

「じゃあ、地値を決めようか」
「待った! ステータス構成なのだが、私も考えてみたのだ。それは私にやらせて欲しい」
「ん、どう振るのかな?」
「魔法攻撃を重点的に、こんな感じだ」
「……ん、そうだね。ステータス決めは難しいよね。そこら辺のはバランスとかとっても複雑だから、どう説明したらいいものか……」
「カザ師匠、はっきり問題点を言ってあげてください」

 ベルンツハイムに後押しされ、私は告げた。

「や、なんて説明したらいいものか……。あのね。不必要なステータスなんて無いの。運命値決まってからならともかく、決まる前に偏らせすぎると、本当にほとんど成長しないよ。ただでさえ元が偏っているから、伸び率とか色々考慮が必要なの。えっと……問題外だから、私に任せてくれないかな?」
「っ ならばその伸び率とやらを教えて欲しい」
「そうだね。古代語少し読めるみたいだし、ウン・チクさんの『俺TUEEEが出来ないわけ』を貸してあげるから、少しずつ読んでみたらどうかな」

 予行演習通りに、ベルンツハイムをミリアに、ガウルをキルクとダカートにつけて最初の試験に行く。
 洞窟で待機する二人に、150匹ほどのジャンピングラビットをトレインして押し付けた。

「くっすげぇ力が弱くなってる……!」
「『マジックショット!』」

 必死に応戦する二人。
 キルクはMP切れを起こして、途中で焦ったりもするアクシデントが起きた。
 おいおい、MP切れを察知できないとか、ありえないでしょ……。感覚でだいたい分かるし、ステータスウィンドウを見れば数値が見れるし、自分が何発攻撃できるかって普通事前に計算するでしょ。ウン・チクさんの『まほーが急に撃てなくなってパニクる子豚さんに贈るMP管理術』の出番か……。
 いくらなんでもそんな人、本当にいるとは思わなかったよ……。
 なんていうか……この人達は私とウン・チクさんがいないと駄目なのかもしれない……!
 ポーションを飲むタイミングなどアドバイスしながら、なんとかクリアさせる。
 通路につっかえて身動き出来ないジャイアントジャンピングラビットをタコ殴りにするのを見るガウルの眼差しは、絶対零度だった。

 さて、最初の一回目が終わった。あと四回である。
 三回は恙無く住んだが、最後の一回で通常の方法で三人でやりたいと駄々をこねられた。勉強になるし、正しい人値がわかるので許可したら、ジャイアントジャンピングラビットに全滅させられかけていた。
 ガウルとベルンツハイム、私の補助があってなんとか倒せた感じだ。
 ちなみにジャイアントジャンピングラビットの出現時、空から落ちてくるジャイアントジャンピングラビットに硬直していたので、私とベルンツハイムとガウルが抱えて避難させました。
 運命値はそこそこいい値となり、翌日、三人は意気揚々と講義に行った。

 最後に自分達で挑戦するといった時、ベルンツハイムとガウルが初めて優しい目を三人に向けた。

 そして、使徒の書かれた書物は王国管理となるということで、金貨1000枚を持って帰ってきた。
『俺TUEEEが出来ないわけ』は、王国の第一級図書となりました。
 キルクは、人目のある所で読むなんて、しかも代金の金貨を一枚ちょろまかそうとするなんて、とベルンツハイムとガウルにボコられていた。
 あ、レベル初期化したので、普通にベルンツハイムとガウルの方が強い。
 二人が三人を見る目は、また軽蔑に満ちたものになった。
 二人が読みたそうだったので、また買っておいた。よく考えたらこの子達まだ子供だし、眠る前に読み聞かせやってあげよう。ガウルとベルンツハイムに買うんだったら全然惜しくないや。
 そして、午後の授業である。

「じゃあ、商品の作り方からやろうか」
「あ、俺ら商人になりに来たんじゃないからいらない」
「そう? じゃあ、弟子入り期間中は素材は全部ベルンツハイムとガウルに渡すこと。それから、ベルンツハイムとガウルは出来たものを分けてあげなさい。それと、三人とも、採集の練習だけはしないとだめだよ。職人の代わりに取りに行く事もあるんだから」
「えー。報酬は」
「弟子入り期間、稼いだものは私のもの。これでも凄い赤字なんだからね」

 その後、何かダカートがボコられて説教されていた。
 何はともあれ、今日はベルンツハイムとガウルは商品づくり、冒険者組三人は私の監督下でジャンピングラビットを相手に講義である。
 念の為にMP管理について聞いてみると、二人は普通に仲間のMPの把握が大変ですよね、レベルアップのタイミングもあるし。でもステータスウィンドウでMPが数値としてわかるので大分楽です、それがどうかしましたか、と言ってきたので、なんでもないと答えた。

「じゃあ、三人にはスキルを使う度に残りMPやSPを叫んでもらいます」

 配慮して、人気が無くて魔物の多い場所で言う。

「残りMPを敵にバラすとか阿呆か?」
「傍から見ると馬鹿みたいじゃねー?」
「ちょっと恥ずかしいです……」
「あのね。敵が残りMPを知る事より、自分のMPがわからない事の方が問題なの。キルク。魔術師として、残りMPを把握できないのって、すっごくすっごく恥ずかしくて馬鹿なことってわかってる?」

 キルクはグッと黙る。

「自分のMPしか把握できないのは素人。仲間のMPのおおよそを予測するのが普通。一流の人は、敵を見ただけで戦闘終了後のMPを予測できるよ。仲間の分もね。ちょっと、普通の人が無意識に出来ることが全部出来てないみたいだから、三人とも頑張ろう」
「……俺ら、才能がないのか? 一生ホーンデルムにも行けないのか?」
「いや、お願いだからグランドルムまで行こうよ……。ダンジョン制覇してこいとかまでは言わないからさ。これだけ手間を掛けさせるんだから、素材の一つや二つ取ってこれるようになってよ。ウン・チク様の言う事を聞いて真面目に頑張れば出来るようになるから」
「グランドルムですよ? 本気ですか?」

 ミリアの言葉に頷く。

「三人とも、私より強くなるよ。まじめにやれば。もう一度聞くよ。頑張れる?」

 三人は、頷いた。

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