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第10話 わらわは♂これで魔王をやめました(14)

 でッ、その後は、「えっ、ではないぞ。一樹……」と、たぬきの御老体は一樹へと、呆れた声色で、また言葉をかける、だけではない。

 更に彼は、己の耳まで裂けた大きな口を開くのだ。

「先程儂が一樹にこの世界一の宝。財宝をやると申していたのを未だ覚えているか、一樹?」と。

 たぬきの御老体は一樹へと、この世界に一つしかない宝。それをやると言ったことを覚えているかと訪ねる。

「ああ、爺さん。その件ならば覚えているけれど。それがどうしたんだい……」

 一樹はたぬきの御老体の問いかけに対して、未だ覚えていると言葉を返すのだよ。

「うん、そうか、そうか、それならば大丈夫じゃなぁ~。儂はもう、一樹~。お主が忘れているのではないかと心配をしておったのだ」

「いや、爺さん。それはないけれど。本当にそんな物。この部屋にあるのかよ?」

 たぬきの御老体の話しを聞いた一樹は、自身の頭と目を動かしながら。このだだっ広い謁見の間を見渡すのだよ。猜疑心のある瞳で苦笑をしながら見渡すのだ。

 そんな一樹の様子を目の前で凝視している魔王さまなのだが。彼女も先程一樹に説明をした通りで、この謁見の間には、そんな大層なもの。大変に高価な財宝など無いと知っているから。

「お父さま? 先程も勇者さまが、わらわに訊ねてこられましたが。この謁見の間には。勇者さまが言われ探されているような高価な物などないはず……」と。

 自身の父へと訊ねる、だけでない。魔王さまはまた直ぐに、己の麗しい唇を開いて。

「この部屋に、勇者さまが言われるような高価な財宝など無いことぐらい。お父さまも御承知のはず……。なのに、何故? お父さまは勇者さまにそのようなウソをおつきになさるのですか?」と。

 魔王さまは困惑をした表情、声色で、己の父である前魔王佐多名衛門の助(サタナエモンノスケ)へと問いかけるのだが。前魔王であるたぬきの御老体は、自身の娘……。現魔王さまの話しを聞き『ニヤリ』

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