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ヤセの断崖(石川・羽咋郡志賀町)

 
挿絵



ヤセの断崖駐車場に車を停めて急ぎ足で断崖のある方向へと向かい始める一同。

「あしたが連休の最終日(2025年9月15日)になるから出来る限り、今日のうちに霊視検証を行えるところは行いたい。富山の頭川トンネルまで行けるとしても夜になってそれこそ肝試しか!と思われてもしょうがない時間帯にはなるが、今日のうちに行くしかないな。ヤセの断崖での霊視検証をテンポよく行い出来る限り結論が着いたところで早めに切り上げることにしよう。」

星弥の提案に一同が「了解!」と元気よく口を揃えて返事をしたところで、駐車場から離れ道の向かいにある遊歩道から歩いて一番下の段のところまでやってくるとヤセの断崖の絶景を眺める防護柵が設置されてあるスポットへと到着するとすぐその場で深く深呼吸をした後に気を集中し精神統一を行ってから霊視検証を行い始めた。

2008年に事故防止のための柵や手すりが設置されてから危険な場所のために立入禁止のエリアであったが、海面の手前に柵を設けたことにより、事故の防止を防ぐ目的を果たすようになっていくが、今もなお柵の付近に設置されてある【ヤセの断崖 観覧マナー 防護柵の外へは出て行かないでください 志賀町】と書かれた看板の先にある緩やかな坂を下っていった先にある断崖絶壁の景色を満喫できるところまで周囲を警戒しながら近づくと、先頭を歩いていた星弥がその後を追うようにして歩いていた小田切と勝本の二人を振り返るようにして見ると「小田切さん、勝本さん!」と呼び出し、三人はその場で集まってある提案を打診した。

星弥が小声で「小田切さん、勝本さん、これはやばいほうかもしれません。自殺者らしき女性の霊を見かけましたが、こんな場所に来るには場違いなほどの結婚式の御呼ばれのような衣装を着た綺麗な女性が歩いていましたが、風になびかれてもドレスの裾はなびいていない、これはこれ以上俺達が近付いてはいけないというサインだと思います。」と神妙な面持ちで語り掛けると、小田切はうんうんと頷きながら「ああ。間違いなく。これは侑斗や原田君に退治させるのは危険極まりない。あの女の人はゼロの焦点の悲劇のヒロインになりたかったのだろうか、思い入れのある、大好きな衣装を身に纏った状態で旅立たれたのだとしたら、この世に対する怨みの念は相当根深い。」と語ると、勝本は「間違いなく俺達のような霊的エネルギーの強い人間は狙われるな。断崖のほうから女性の御霊のみならず、数え切れぬほどの鋭い視線がこちらに向けられている。これは明らかに俺達が霊能者だと勘づき、心の闇の救済を求めるために俺達に近づかせようとしているのかもしれない。それにさっきから悪寒に近いような風邪をひいてしまったのかと思うぐらいに頭がずきんと来る。100いやもっと1000に近いぐらいの、それ以上のこの地で旅立たれた御霊達が集まりだすまでに次の場所で検討をするべきだろう。」と話すと星弥は「未成仏霊が数え切れぬほど数多いるのは間違いない。問題は衝動的なショックに駆られて勢いで自らの命を絶った人間がいるのと同時に、強いこの世の中に対して怨恨の感情を抱きながら、霊となった今も逆恨みをしている邪念に満ちた御霊がいるのは間違いない。俺と小田切さんと勝本さん、ベテラン勢の三人で検証を行い改めて危険なのか否かを見極めなければいけない。あの二人では力が及ばなさ過ぎて犠牲になるのが目に見えている。」と語ったところで、小田切と勝本は深く頷き「了解。」と口を揃えて答えた。

星弥と小田切と勝本によるミーティングがさっと終わったところで、三人の後ろを歩いていた侑斗と原田に星弥から語り掛ける。

「俺と勝本さんと小田切さんの三人で崖の近くまで行き霊視検証を行う。侑斗と原田君はそこでじっと待っていてほしい。大丈夫、断崖絶壁の近くまで近づいたところでさっと霊視検証を行いさっと終わらせるから長居はしない。」

星弥が二人に説明すると、侑斗は星弥に思わず質問をした。

「小田切さんと勝本さんと兄ちゃんの3人で一番危ない断崖絶壁の霊視検証を行う必要性がある理由があるならそれを教えてほしい。それならば俺や原田だって、兄ちゃんが俺のことを若葉マークの霊能者だって言うのなら、俺達の修業の場に持って来いなんじゃないのか。なにも兄ちゃんたちが出てくる必要も無いんじゃないのか?」

侑斗が星弥にそう切り出すと、それを聞いて居た勝本は侑斗にこう答えた。

「この先は危険すぎる。自殺と事故の両方の可能性も含め検証を行いたい。俺と星弥と小田切の三人で心霊検証を行いその結果を報告することにするから、二人はまだここにいて、霊視検証を続けたいようなら引き続きこの場で行ってほしい。」

勝本が二人に対してお願いすると、説明に納得のいかなかった原田が勝本に対して強い口調で話し始めた。

「ちょっと待ってください。熊走大橋では俺と侑斗の二人で除霊を行わせたのにどうしてヤセの断崖では星弥さんと小田切さんと勝本さんの三人で心霊検証を行うことになったんですか?どちらも自殺の名所として知られている場所なのに、どうしてですか?ヤセの断崖と熊走大橋では何か出てくる霊の質が違うとでも言うんですか?」

原田が納得のいかない口調で語ったところで、小田切が原田のほうを見て答えた。

「ここは熊走大橋に現れた霊とは全く異なる。松本清張さんの”ゼロの焦点”でヒロインが自殺を図ったことから1961年の映画の上映と共に自殺者が相次ぎ一番多い年では18人の方々がこの地で命を落としている。恐らくだが映画のワンシーンに影響を受けた方々が”簡単に死ねるのではなかろうか”という理由で映画の後悔と同時にこの地での自殺者が急増した。決して小説の存在が自殺者を増大させたとは言い切れない何か他に理由があるはずだと思っている。それは、崖の下へと誘発する御霊の存在があるのではないかと俺達はこの地に来て見て考えさせられた。崖の下をじっと柵越しに見てみたらわからないかもしれないが、吸い込まれてしまいそうなぐらいの目の錯覚に思わず見とれ不注意にも落ちてしまった可能性もあるだろう。熊走大橋のような身を乗り出し過ぎて自らの危険も省みずに誤って落ちてしまったことによる死もあるだろうだが同時に自分たちと同じ闇の世界へと誘発する御霊がいると思っている。恐らくだが悪霊や邪霊の仕業による危険性のほうが極めて高い。侑斗や原田君には俺達がどう対処するのかを上から見ているだけでいい。」

勝本と小田切がそう話したところで、星弥は「大丈夫。崖から落ちたりしないから安心して見てほしい。」と笑いながら語ったところで、三人は看板の先にある緩やかな坂を慎重な足取りで下り始めると、自殺者対策のための”捨てないで 命だけは”と書かれた看板を横通り、崖に近づいたところで深く目を瞑り霊視検証を行った。

一方、侑斗と原田は三人の様子をじっと見守ることしか出来なかった。

原田が侑斗に「なあ、どうしてあのベテラン勢だけで検証を行おうってことになったのか。未だにさっぱり理解が出来ない。自殺したであろう御霊達が彷徨っているのはわかるし、それが決して危険だと判断した理由も分からない。あれぐらいなら俺が供養のための御経をよみあげたら、天国へと導いてあげる自信はある!」と自信満々に語り始めると、侑斗は「多分きっと兄ちゃんも小田切さんも勝本さんも見てしまったんだろう。強い負のパワーを持つ自殺者の霊をね。」と話すと、原田は「強い負のパワーを持つ自殺者の霊って、つまり生者を自分たちと同じ闇の世界へと導こうと手招きをしている悪霊の存在がここにはいるってことなのか?だったら俺達だってキャリアもちゃんとあるし、霊能者としてしっかりと対処できるところは対処出来るのにどうして俺にも”あの二人にはまだ早い”って三人に言われているような気がして理解できない。俺だって霊能者として対峙しようと思えば対峙することだって出来る!」と強く言い切り、三人のところへと駆けつけようとした時に侑斗が止めた。

「兄ちゃんや小田切さん、さらに勝本さんのあの三人が”危ない”と言っていることは俺達の技量では歯が立たないと判断したに違いない。勝手な行動はしないで、兄ちゃんたちが戻ってくるのを待つことにしよう。」

侑斗の一言に原田は半ば納得のいかない表情で、「わかったよ。」とぶっきらぼうに語ると、そのまま崖の近くで検証を行う星弥と小田切と勝本の三人を見守った。

その間に侑斗はあることに気付き、原田に話しかけ始めた。

「なあ、原田。さっきから断崖に近いところに俺達、手すりがあるから落ちずに済んでいるけど、段々と風が強くなっていないだろうか・・・?」

侑斗が原田に話すと、原田は侑斗にあることを語り始めた。

「噂によると、ヤセの断崖は今いる俺達が柵にもたれかかっているからある程度の事故防止には役立っているんだろうけども、2008年に設置されるまでは、立入禁止のエリアだった。恐らくだが、映画で紹介されたことにより、さらに松本清張さんの小説の題材としても出てきたことから、小説や映画の内容に影響を受けて”ここなら簡単に死ねる”と思った自殺志願者が集まった可能性もあるのだろう。それが小田切さんの言っていた話と重なることにもなるが、同時に興味本位で一度崖の下を覗くような姿勢を取ってしまうと強風に煽られ体を持っていかれてしまい、命を落としてしまうような悲しい事故があったのかもしれない。その場合ならどうなるのだろうか、崖の下の岩面に体を強く叩きつけられた末にお亡くなりになられた方々が多数だと思うが、その死は果たして本望だったのか、或いは怨みの念を晴らしたいがために、あえてこの地を選んだのか。海面から高さ55mもあるこの場所で、この地を彷徨う御霊達が死にたくないのに死んだために成仏が出来ずにこの世への未練を募らせているのなら、あえて危険だと書かれてあるあの看板を乗り越えてでもこの地に訪れる必要性は何だったのか。やはり”何か”が導いているということなのだろう。それを俺達にはまだまだ早いというのだったら俺だって見返してやりたかった。」

原田が悔しがるように、右手の拳を強く握り始めると、悔しさを露わにした。

そんな原田を見て侑斗は、原田の表情をじっと見ながら答えた。

「今は感情が高ぶるようなことは口にしないほうが良い。それを狙いに、誘発してくる邪霊や悪霊がいるはずだ。冷静になって考えて、俺達は兄ちゃんや勝本さんや小田切さんがどういう対処をしているのかをしっかりと見て学習するしかない。」

侑斗がそう話すと、原田は侑斗に「まっ、まあそうだな。悪に対して心の弱みを付け込まれないように俺はいつだってしているよ。精神的に強くなければ霊能者など出来ないからね。侑斗だって言われて納得のいかないことだってあるだろう。そんなときに今の俺と同じような感情を抱かないのか?」と不思議そうに語り始めると、侑斗は「色々ある。でも俺は真っ正直に対峙しすぎて失敗して兄ちゃんに迷惑ばかりかけているから、俺はもう霊能者として生きていくことに腹はくくったが、やはりこんな自分では駄目だ、まだまだ鍛錬が必要だと思っている。決して今の自分がパーフェクトでどんな霊でも相手にしてやる!ほどのレベルではないことはわかっている。だから兄ちゃんや小田切さんや勝本さんの霊能者として学ぶべき姿勢はとことん吸収して真似しなければいけないところは真似する。強がり過ぎず、天狗にならないことが一番求められていることなんじゃないかな。だとしたら正常心をいつも保つことが今の俺ではまだまだ未熟だと思うことはある。」と話すと、原田は「認めてもらうためにも必死になることも必要じゃないのか?」と更に問いただすと、侑斗はこう答えた。

「俺はまだ弱い。もっともっと精神的に強くならなければ悪には立ち向かえない。原田だって感情をむき出しにするところは、俺が見ても精神修業が必要だって思うよ。あっ、そうそう。小城市内に”清水の滝”って滝行が出来るところがあるじゃん。また原田が佐賀に帰ってきたときに、二人でみっちりと清水の滝で滝行でも受けて、精神修業でもしたほうがいいかもしれないね。」

侑斗が原田に提案すると、原田は笑いながら答えた。

「清水の滝の滝行を俺と侑斗でってか。ハハハ。まあ滝行を受けたら考え方もどう変わるんだろ。寒い、寒すぎる!!と言って終わるに違いないだろうけどな。」

原田の中で先程まで芽生えていた怒りの感情が吹っ切れたのか、そのあと二人でお互い見つめ合いながら、あまりにも可笑しくって談笑していると後ろから気配がした。

原田が思わず後ろを振り返り、侑斗に「なあ。こっちに近づく人の気配が、あの歩道のほうからするけど、これは幽霊なんかじゃない。人だ。人が近付いてくる。」と話すと、侑斗は足音が聞こえる方向へと目をやると、思わずハッとなって下の断崖絶壁で検証を行う星弥と小田切と勝本の三人に慌てて声を掛け始めた。

「兄ちゃん!兄ちゃん!検証中止!すぐ戻ってきて!!」

侑斗がそう話すと、後ろを振り返った原田が侑斗に「やばい!妖怪やゾンビや幽霊よりも怖いこの世の世界においては最恐度のトップクラスを誇る警察官が近付いてきているぞ!」と話すと、侑斗は「もう目と鼻の先じゃないか。逃げたら益々怪しまれるだけ。」と話すと、近付いてきた警察官一人に対して侑斗から説明を行い始めた。

「君たち、こんな夜の時間帯に一体何をしているんだ!?危ないんだぞ!!」

侑斗と原田に注意をした警察官は崖の下にいる星弥と小田切と勝本の三人に対しても大きな声で戻ってくるようにと指示をした。

「君たちはそんな危ないところで一体何をしている!死ぬ気か!!」

警察が崖の近くにいる三人の元へと近付こうとした時に、星弥は警察官がいる方向へと見上げて「待ってください。心霊検証の検証を行っていただけです。マナーを破ってしまい申し訳ありません。今すぐに戻ってきます。」と語ると、勝本と小田切も星弥の表情を見て慎重な足取りで防護柵のある場所へとゆっくり戻り始めた。

最初に警察官に声を掛けられた侑斗が「すみません。こんな時間帯に危険だという事は重々把握しています。でも安心して下さい。僕達心霊スポットサイトを運営していまして”慰霊の旅路”というサイトなんですけどね。僕達ボランティア霊能者として除霊を行う傍ら有難いことにTV出演をしたことがあります。見た事があるかと思いますが、僕は饗庭兄弟の弟の侑斗です、僕達が運営するサイトにヤセの断崖の心霊検証を行ってほしいという相談があって、まあ都市伝説の域にしか過ぎないのかどうかも含め霊能者として霊視検証をしなければいけない必要性があったため、すみません。用事が終わったらさっと帰ります。」とぺこぺこと頭を下げて謝り始めると、そんな侑斗を見た原田も「すみません。自殺をする気はないので安心して下さい。さっと帰りますので見逃してください。ルールを破ってしまったことは謝ります。」と語り始めると、現れた警察官は侑斗に今のヤセの断崖の自殺の現状について語り始めた。

「ヤセの断崖での自殺者は後を絶たない。これ以上の自殺者を出さない目的で定期的にパトロールを行っていただけだ。君たちも見たかもしれないが、断崖を下りた先に自殺防止のための”捨てないで!命だけは!”と書かれた看板を設置しても何ら効果はなかった。ゼロの焦点で悲劇のヒロインが小説のストーリー上でこの地で命を絶ったことに今の若い世代も影響されて自らの人生と照らし合わせているのかもしれないね。良い思い出よりも自分は不幸ばかりだと悲観視してしまうのだろうか。追い打ちをかけるようにして最近”ゼロの焦点”が新たに映画でリメイクされて人気女優が悲劇のヒロインを演じているということでも話題になっているから尚更だよ。」

警察官から新たな情報を聞かされた侑斗は「まだこの地でしかもゼロの焦点に影響をされた方々が自殺をしようとこの地に集結しているのですか?自殺対策の看板やモニュメントは色々と拝見をさせて頂きました。フクロウのトーテムポールのようなものには”支え合う 温かい手が すぐ側に”と自殺対策のためのメッセージだろうと思われるのと、断崖の近くには仰っていた”捨てないで!命だけは!生きてください、あなたの家族のために、見知らぬあなただけどわたしたちはあなたが大切です。苦しみや悲しみ、みんな相談してください。”と書かれたあの掲示板を見て色々と自殺対策に考慮をされているのを目にして、自治体でも大変苦労されているのは見ていてわかりました。実際にこの地に改めて、まあもっと明るい時間帯に来るべきだったのですが予定上行けずにこんな時間になってしまったんですけど、今もなお自殺者の仲間を増やそうとして導こうとしているのは見ていてわかりました。」と語ると、警察官は「自殺者を導く?うん?自殺が多いのは幽霊の仕業とでも言いたいのか。まあそれは別として、君たちもこれ以上こんな危ないところで長居するんじゃないよ。」と侑斗に言い放ち、警察官はさっと退散したのだった。

その様子を崖から上がってきた星弥と小田切と勝本の三人が、侑斗に近づき始めた。

星弥が侑斗に「幽霊ではなく近くをパトロールしていた警察官と対峙するようなことになってしまって悪かったね。何か貴重な情報は聞けたか?」と聞き始めると侑斗は警察官から聞いた貴重な情報を説明し始めた。

警察官からの情報をある程度話し終えたところで、勝本は「やはりそうだったか。」と頷いた後に自分なりの結論を言い始めた。

「侑斗と原田君には説明不足で申し訳なかったが、多分君たちも見たかもしれないがこんな場所に来るには場違いなほどのドレスに身に纏った女性がいた。しかし身に着けているドレスが風になびかれていないところも含め考えた際に、これは間違いなく生者ではないと判断した。侑斗や原田君でも対処しようと思ったら出来たかもしれないが、この手の霊は極めて危険だと感じた。死に衣装を身に纏った状態で現れ、生者を死の世界へと手招きをしているのはこの女性の御霊かもしれないと星弥と小田切と相談して確信した。邪霊の危険性が極めて高く、少なくとも深く関与すれば禍が起こり得るのは避けられない。そんな御霊に霊能者としての技量がまだまだ修行が足りない二人に対峙させるのは危険だと判断した。ここに来た以上、霊能者の俺達が自殺者の御霊達と話し合いの機会を得ようと思って交渉をしていたのだが、思っていた以上にここは不注意で崖へと転落したことによる死や、景勝地であることを分かっていながら自分自身に注目を浴びたい一心で崖から飛び降りた、そしてゼロの焦点の悲劇のヒロインになりたがる自殺者の心情と対峙して、話し合いでは解決することはできなかった。諦めて退散しようとした時にあの警察官がやってきた。出来る限り供養は行いたかったが、それぞれの抱える心の闇が根深いがために、きっと侑斗と原田君が応援に来てくれたとしても、御霊達の数が多すぎて俺達では処理しきれない。」

勝本がそう話すと、侑斗と原田は黙り込んでじっくりと聞き始めた。

そんな二人の様子を見て、小田切が声をかけた。

「男性の恨みも怖いが、女性の恨みの念のほうがもっと陰湿で根深い。霊能者として一人一人の御霊に対して、極楽浄土へと導くためのお手伝いをしなければいけないのは当然のことだが、”何か”の理由で成仏しきれない、その”何か”を俺達は知り過ぎてはいけない。詮索もNGだ。御霊達のそれぞれが抱える闇の根を知り深く関与したことによって、それが霊能者として良い理由など一つも存在しないんだ。」

勝本と小田切の話を聞いた侑斗と原田は小声で分かりましたと答え、星弥は手をパンパンと叩いてから「さあ。ヤセの断崖の話はここまでにして、駐車場に戻ればさっと御祓いを済ませて晩御飯でも食べて、次の頭川トンネルへと向かおう。いつまでも検証の話をしていたら時間があっという間に過ぎてしまう!与えられた時間のことをもう少し計算しながら考えよう!」と切り出したところで、一同はヤセの断崖を後にして、駐車しておいた駐車場へと戻り始めると、それぞれが自身への御祓いを済ませてから、車に乗りだし、次の検証地である頭川トンネルへと向けて出発した。

時刻は19時40分をまわった頃だった。
漆黒の闇に包まれて、より一層不気味にも思えるヤセの断崖の海岸沿いを左側の後部座席に座る侑斗はじっと考えながら眺めた。

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