バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

十二 言葉に失礼だ

「忙しいので、来週連絡します。またね」
 と一方的に話して通話が切れた。いつもと同じだと思った。

 ゆふこは、ゆふこ自身が困ると解決策を求めて私に連絡してくるが、私がゆふこの体調と日常を気にしてなんど連絡しても、
「忙しいので、来週連絡します。またね」
 と一方的に話して通話が切れたり、
「こんどね、おちついたら連絡します。またね」
 と短いメールがとどいたりした。
 
その後、ゆふこから体調や日常を知らせる連絡はなかった。

 通話がつながった時やメールで、本人の体調や日常を説明できるのだから、その時伝えなければ、またねも、こんどねも、いつまでたっても来ない。
連絡しない口実に、またね、こんどね、という言葉を使うのはあまりにも失礼だ。
 私はずっと、そう思っていた。

 あるとき、これまでのゆふこの言動を思い起こして、妙なことに気づいた。

 ゆふこは客観的に物事を判断できず、計画的に行動できないのだ。
 常に衝動的で自己中心的。他人との付き合いは、ゆふこ自身が、常に被害者だ、と感じているようなのだ。
 これらは初対面の人が気づくほどではないが、何度か会って話しているうちに、彼女の妙な言動に気づく人もいるだろう。このゆふこの個性とも呼べる性格は・・・。

 もし、そうなら、ゆふこは
「忙しいので、来週連絡します。またね」
「こんどね、おちついたら連絡します。またね」
 を意図して使っていたのではない。この言葉しか思いつかないのだ・・・。

 ゆふこにとって、これらの言葉は、連絡しない口実ではなく、
「私のことは訊かないで欲しい。説明できないのだから・・・」
 という心の声だったのかも知れない。

(了)

しおり