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<第43話> 買出しの続きと帰宅 そして、


(タマ、さっきはありがとね。)

1分程のフリーズ状態から復帰し、タマにさっき(”お母さん”を探せ!)のお礼を言う。


『お安い御用ニャン。』

(ホント、タマは凄いよね。あんなに簡単に人探しができちゃうんだもん。)

『”アサメシマエ”ニャン。』

(ん? ちょっとイントネーションおかしいぞ? もしかして無理に難しい言葉を使ってる感じ?)

(タマ、難しい言葉、よく知ってるね。)

『タマは何でも知ってるニャン。』

(ふふっ、そうだね。タマはご飯を食べないけど、朝飯前だよね!)

『ニャン?』

(あっ、やっぱり分かってなかった。ふふっ、でも何だか可愛いからいいや。)

そんな他愛もないやり取りが、とても心地よかった。


(それで申し訳ないけど、また休眠していてくれるかな?)

これから駐車場を挟んだ対面にある、ドラッグストアや100円ショップが入店している建物へ向かうのだ。

おのずと駐車場が目に入ってくる。

車がずらっと並んだその風景は、タマには絶対見せたくない。

『分かったニャン。』

タマの了承のお返事と同時に、また”独り”になるオッサン。

先程までのタマとのやり取りが、妙に、昔のことのように、懐かしく、遠くに感じられた。

(……寂しい。早く向こうの世界に”帰って”、タマと一緒したいな……。)

いつも心はタマに向けられ、既に気持ちは異世界人となっていたオッサンだった。



目の前の半透明の地図の時計は【14:55】と表示されていた。

(え? もうそんな時間?)

何だかんだで2時間くらい、スーパーにいたことになる。

(買い物って、結構時間かかるんだよね、実際。)

(それにしても、2時間もスーパーの店内をうろうろしていた割には、全然疲れを感じないんだよね。)

呪い(著しい身体的変化)による影響だろう身体能力の向上は、オッサンにとって、とてもありがたかった。



駐車場を横切り、複数のテナントが入居する建物に到着した。

まずは、1階手前のドラッグストアへ入る。

ここには普段あまり来ない。単に用事がないから来ない。

(普段、薬とかあまり買わないしね。)

とりあえず入店し、入り口付近にある買い物かごを手に取る。

店内を見渡し、目についた必要そうなものを片っ端から買い物かごに入れていく。

使い捨てマスク、消毒液、うがい薬、ハンドソープ、救急箱セット、総合感冒薬、整腸剤、虫刺され薬、抗生物質含有の軟膏、水虫薬、通気性絆創膏、包帯、歯磨きセット、ゴミ袋、ティッシュ、トイレットペーパー、栄養ドリンク、栄養補助食品等を購入した。


(そういえば、ちょっと前、マスクとか、トイレットペーパーとか、大騒ぎした時期があったよね。)

メディア(特にテレビ)で、ちょっとでも”足りなくなるかも”と煽ると、一斉に買占めに走る人々。

日本人の性なのか、あるいは人間が持つある種の自己防衛本能なのか、

それとも、日中特にすることがない人々の脳が、何らかのイベントを欲し、暇つぶしを兼ねて始めたお祭り騒ぎなのか、

理由はよく分からないが、実際は十分な供給量があったとしても、みんなパニック的に店先に走って買い漁った。

(まさしく、教科書とかにも出てくる、70年代のオイルショックの時の騒動、そのままじゃん。)

(”人は歴史に学ばない”、”歴史は繰り返す”、なんてラノベとかでもよく目にするセリフだけど、ホント、”現実は小説よりも”、ってヤツだよね。)

(今度買占め騒動があったら、僕が大量に複製して、ネットを介して供出しようっ! なんてね。)

タマ(ダンジョンコア)の能力を背景に、ちょっと気が大きくなって、そんなことを考えながら、

買い込んだ商品を手にレジへと赴き、清算するのだった。


ティッシュ(本当はティシュー?)、トイレットペーパー等、軽いけど意外とデカブツな商品があったため、

とりあえず”ブサイク号”に荷物を置きに行く(と見せかけて収納の指輪に収納する)ことにする。

(どうせなら、”ブサイク号”をこっちの建物の近くに駐車し直せばよかったかな。)

そんな今更なことを考えながら駐車場を歩くこと暫し。

”ブサイク号”に乗り込み、荷物を下ろすと見せかけて収納の指輪に購入した商品を収納した。


どうせなので、”ブサイク号”を複合施設の建物の近くに駐車し直し、買い物を再開する。

今度は複合施設の2階へと上がり、階段近くにある100円ショップへ入店する。

100円ショップでは、食器類や収納類、クッションや座布団などの小物類の他、紙コップ、紙皿、割りばし、ビニール袋、ラップ、ライター、文房具・筆記用具類、タオル類、手袋類、LED電灯、電池、甘栗等を購入した。

(100均って言うと、僕的には甘栗は外せないんだよね。)

そんな感じでいろいろな種類の物品を購入していく。

(100均って、平日の日中でもお客さんがソコソコいるんだよね、なんか不思議。)

店内を見渡し、客層をチェックしながら、以前から思っていたことを考察する。

(さすがにスーツ姿のサラリーマン風の人はあまり見かけないけど、主婦的な人はもとより、若い女性が割と目立つよね。)

(仕事とか、大丈夫なんだろうか。まあ、僕に言えた義理はないけどね。)

一応自覚はしているが、一番言ってはいけない人物が、言ってはいけないセリフを思い浮かべる。

”仕事を辞めてプラプラしている、あんたにだけは言われたくないわよ!”

そんな声が聞こえてきそうな、ソコソコ賑わいを見せる100円ショップの店内だった。


100円ショップのレジで清算を済ませると、買った商品を手にしながら、速足でトイレへ急行する。

人目がないことを確認後、急いで商品を収納の指輪に収納。

そしてすぐさま用を足す。

実はそこそこギリギリだったのだ。


「あぶにゃぁ~。もうちょっとで漏らすとこだったらぁ~。」

(あれ? 今の方言? 大学進学のタイミングで矯正して、今まで使ったことなかったのに……。)

”ない”が”にゃぁ”になり、語尾に”らぁ”が付く、この周辺地域独特の言い回し。

(これって、もしかしなくても、呪いの影響、だよね……。)

無意識に方言が口を衝くようになっている自分の状況が割と衝撃的だった。

(体も元気になったし、発言も昔の口調に戻ったようだし、心身共に、完全に若返りだよね、これ……。)

呪いの影響、

疲れなくなった体(身体能力の向上)、無意識に口を衝く昔使っていた言葉(精神退行の影響)、

自分が若返っていることを、ひしひしと実感するのだった。



そんなこんなで、予定していた全ての買い物行程が終了した。

目の前の半透明の地図の時計は【16:06】と表示されている。

あと1時間程で始まる、帰宅ラッシュの渋滞に巻き込まれる前に、速やかに自宅に撤退あるのみ、である。


♪行きはよいよい帰りは辛いぃ~

”ブサイク号”には、一応、ターボは付いているが、如何せん軽のハイトワゴンである。

車体に対するエンジンのパワーは、お察しである。

よって、急な上り坂が続く帰り道は、余裕があった下り坂道(来る時)とは全く別の様相を呈する。

タコメーターは常に3,000から4,000ぐらいを指し示し、オートマのギアがトップ(4速)になることはない。

来るときはほとんど踏み込まなかったアクセルペダル。

今は、割としっかり踏み込まないと、坂道を登っていかない状況だ。

そんな状況故、エコ走行などとは一切無縁。

(軽なのに、リッター10kmいかないもんね。)

”ブサイク号”は、ナンバープレートのゴロも良くなかったが、燃費も良くなかった。



帰宅後は、いつもの夕食をとり、冷蔵庫内の中身を消費する。

その後は、風呂に入ってネット通販をする予定だ。

因みに、タマには今日はこのまま休眠してもらう。

(実体化できない日本で、用もないのに起こしておくのもかわいそうだしね。)


今日は、日中の買出しで、ソコソコ満足のいく買い物ができた。

スーパーだけで10万円超え、ドラッグストアや100円ショップを含めると、14万円を超えたのだった。

それだけの買い物をしたにもかかわらず、更にネット通販で何を注文するつもりなのか。

それは、近隣の普通のお店では手に入らない系、特に大物系だ。

自力では運搬できない大物系を、ネット通販で日時指定して運搬してもらうのだ。

そのためのネット通販タイムなのである。

(幸い、【外国為替】機能のおかげで、軍資金は稼げた。向こうの世界で必要と思われるものは、躊躇なく、思い切って発注するぞ!)

とりあえず向こうの世界で生活するのに必要と思われる大物系をネット通販で探す。

 簡易仮設水洗トイレ(建設現場とかイベント会場とかにあるヤツの高級版)

 FRP製湯船(浴室に埋設しなくてもいい自立型のヤツ)

 大型物置(100人乗っちゃうヤツ)

 大規模太陽光発電システム(蓄電池も一緒のヤツ 電化製品、使うでしょ?)

 小規模太陽光発電システム(蓄電池も一緒のヤツ いろいろと小回りが利くように)

(こういう大物系って、代引きがダメなのが多いんだよね。)

(あと、搬入も細かな時間指定とかできないんだよね。)

実際、家具や車の部品、大型暖房機器や工作機械等、大きくて重たいものを何度かネットで発注したことがある。

その際は、大体、よく聞く運送業者さん(黒にゃんことか、ヨコシマ青シャツ急便とか)ではなく、

ちょっと一般家庭ではあまりご厄介にならない運送業者さんが活躍してくれる。

そういった運送業者さんは、痒いところに手が届くような細かなことはNGで、

代引き対応は不可で、搬入の時間指定は、午前か午後どちらか、みたいに大雑把なのである。


そんなこんなでネット通販で欲しい物品をひとしきり発注。

支払いも銀行口座振り込みで済ませ、本日は終了の気分である。


(とりあえず、こんなとこかな。それじゃ、ひとっ風呂浴びとこ。)

気分よくお風呂タイムへ。

この別荘地、”コンゴウランド”は、温泉が引かれていることでソコソコ有名な別荘地である。

もちろん有料です。

温泉の給湯器のスイッチを押して待つこと約5分

浴槽にお湯がたまったことをチャイムが知らせてくれる。

脱衣所に赴き、そそくさと服を脱いで浴室へ。

洗い場にある桶を手に取ったとき、ここでふと、考えがよぎった。

(そういえば、”お湯だけ収納”ってできるのかな?)

この流れはもう慣れた。とにかくやってみる。

”浴槽にあるお湯だけ収納!”

そう念じれば、浴槽は空っぽになった。

(やった! できちゃったよ、お湯だけ収納。)

(お湯だけ異世界に持って行って、お湯だけ大量に複製できれば……、)

(これって、異世界でも温泉をほぼ無限に楽しめるってこと?)

(ヤバイ、これはヤバイ。正に、勝ち組待ったなし!)


考えてもいなかったことが実現できそうで、正にテンション爆上がり。

ルンルン気分(死語?)で気分よくお風呂に入ろうとするが……、

(あっ、今、お湯、収納しちゃったんだった……。)

脱衣所に戻り、再度服を着て、お湯が張られるのを待つのだった。



入浴後の行動は単純だった。

お風呂のお湯で味を占めた。

水道水と沸かしたお湯を用意し、収納する。

これで、いつでも好みの温度の水がゲットできることになるのだ(たぶん)。

ついでに冷凍庫の氷を収納することも忘れない。

(エンタルピーだかエントロピーだか知らんけど、いろんな温度の水があれば、いいでしょ?)

水の温度で、昔聞いたうろ覚えの熱力学的な単語を思い出したオッサンだった。



目の前の半透明の地図の時計は【19:13】と表示されている。

日本に【ホームポジション帰還】したのは、確か【11:12】だった。

日本にいられるタイムリミットまで、あと4時間ほどある。

今日、日本でやるべきことは、全て終わらせたと思う。

よって、仮眠をとることにした。

(夜10時半ぐらいに起きて、向こうの世界へ”帰ろ”。)

向こうの世界に”帰る”。

そして、最高の相棒とじゃれつきあうのだ。

(早くご褒美、海苔も食べさせてあげたいね。)


このネコミミオッサンにとって、

タマがいない(実体化できない)こちらの世界(日本)は、もはや生活拠点ではない。

目覚まし時計をセットしながら、

向こうの世界でのタマとの触れ合いを楽しみに、ベッドに横たわるのだった。

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