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哀しき運命

 1
 少年の声がした方へ花音達が来ると、そこには怯えたように座りこんでいる神族の少年と、ある場所を見て動きを止めている魔族の少年、そしてその視線の先に窮姫達の姿があった。
「あら?」
「ほう、これはこれは……」
 花音達に気付いた窮姫達がニヤリと笑う。
 彼女達はもう隠す必要はないからか、背から黒い翼を生やし、鎧のようなものを身に付けていた。
「まさか、こんなところで神族の神子に会うとは」
「それも、邪魔な闘神共は誰もいない」
「ふふ、私達、ついてるわね」
 そう言った五人の視線は、聖羅一人に向けられていた。
「おい、ここって中央に近いんだろ?こんな簡単に侵入されてていいのかよ」
 五人から視線を外さないまま、雷牙が言う。
「ふふ、その点はその子に感謝ね。その子についてきたら、この町についたのだから」
 窮姫がそう言って、魔族の少年を指す。
「……そう。やっぱり、ろくなことにならなかったみたいね」
「でも、私達には色々と好都合よ」
 窮姫は言って、他の四人を見た。
「闘牙」
「黒蘭」
「闇王」
「牙王」
「そして、窮姫。我等、魔の五将軍。神界の神子達、その命、貰いうける!」
 窮姫が言ったかと思うと、五人の姿が消える。
 その次の瞬間、花音はものすごい衝撃と共に吹き飛ばされていた。
「うっ……!」
「「「ぐっ……」」」
 そして、地に叩き付けられたと思うと、身動き出来ないように押さえ込まれてしまった。
「皆……!」
「余所見してる場合?」
「っ……」
 一人吹き飛ばされなかったらしい聖羅が、窮姫の追撃を防ぐ。
 攻撃しているのが窮姫一人のことから、花音達の動きを封じているのは、他の四人のようだった。
「っ、花音達を解放しなさい!」
「それは無理ね。貴女が消えてくれるなら、考えるけど」
「なら、あなた達を倒して、助けるまで!」
 そう言った聖羅に、窮姫は目を細めた。
「……闘牙」
 窮姫の声がしたかと思うと、花音の拘束が外れ、乱暴に投げられる。
「姉上!」
「「花音!」」
 自由になった花音の耳に、光輝、夜天、雷牙の声が聞こえ、反射的に数歩下がると、それまで立っていた場所に巨大な鎌が突き刺さった。
「!?」
 それに目を見開いていると、闘牙と呼ばれた男が構え直す。
「ふふ、助けると言っても、神子、貴女はまず私を相手にしなければならない。その間に、一人ずつ消えていくわ。まずはあの子よ」
 その時、聞こえてきた窮姫の声は楽しげなものだった。
 花音の身長より大きな鎌を構えて近付いて来る闘牙を見て、身体が動かない。
 避けなくては、逃げなくてはと思っても、恐怖から動けない。
「やりなさい、闘牙」
「っ……」
 風を切って迫ってくる鎌に、いけないとは思いながらも恐怖には勝てず、目を閉じる。
(助けて……、風夜)
 中央どころか神界にすらいない彼の名前を心の中で呼ぶ。
 その時、花音のすぐ近くで金属同士が激しくぶつかりあう音が聞こえた。
 2
 聞こえた音に花音は何が起きたのかと、目を開く。
 すると、花音に迫ってきていた巨大な鎌は、横から入ってきた剣に止められていた。
 持ち主を見れば、そこには封魔の姿があり、彼が助けてくれたのだとわかった。
「ほう、全力で振り下ろしたつもりだったが、それをこうも簡単に止められるとはな」
 邪魔されたにも関わらず、闘牙はニヤリと笑う。
 そして上から押し潰そうとするかのように力を込めるのが花音にもわかったが、封魔が少し眉をしかめただけで、鎌も剣も動くことはなかった。
 それと同時に、数ヶ所で爆発音が聞こえ、花音は二人から視線を外した。
 辺りを見回すと、今の音は神蘭達が攻撃を加えた音だったらしく、動きを封じられていた光輝達も解放されている。
 それにほっと息をつくと、今は神蘭に庇われている聖羅も同じだったようで、安堵しているのがわかった。
 神蘭達が現れたことで空気は張り詰めたような気がしたが、先程より状況はいい。
 まだ気を抜くことはできなかったが、周りを見る余裕は少し出来た。
「!!」
 そして、周囲に視線を動かしていると、聖羅の近くで何かが光った気がした。
 光ったものが気になって、花音はその方向へ目を凝らす。
 すると、今まで身動きしないで聖羅の後ろにいた魔族の少年が短剣を手にしているのがわかった。
 そのことに少年に背を向けている聖羅も、窮姫と対峙している神蘭も気付いている様子はなく、他の闘神や光輝達も気付いていない。
(っ……)
 後ろから短剣を聖羅に突き立てようとするのを見て、花音は走り出す。
「おいっ!」
 それには流石に気付いたらしい封魔が声を上げたが、止まるつもりはなかった。
 向かっていく花音に気付いたのか、魔族の少年は慌てたように聖羅へ短剣を突き出す。
 だが、次の瞬間、それが捉えたのは、聖羅と短剣の間に飛び込んだ神族の少年だった。
「!?」
 それで気付いたらしい聖羅が振り返り、倒れる少年を抱き止める。
 魔族の少年はそれに動揺していたようだったが、倒れている少年に懸命に声をかけ続けている聖羅に再び短剣を向ける。
「うあああっ」
 声を上げて斬りかかる少年に、聖羅が気付くのと花音がそこについたのは、ほぼ同時で、花音は聖羅を思いっきり突き飛ばした。
「っ……!」
 聖羅の代わりに、短剣に腕を切りつけられる。
 その痛みを感じた直後、身体が急激に熱くなり、自分の中で何かが押さえつけられたような感覚の後、身体に激痛が走った。
「……つぅ……、あ……!」
 息をするのも辛くなってきて、立っていられなくなる。
 意識が薄れてくるのに耐えていると、再び少年が聖羅を襲おうとする。
 だが、その前に少年に向かって雷が落ち、それに打たれた少年の背後に闘牙を振り切ったらしい封魔が現れる。
 彼が少年を地へ叩き付け、押さえ込むのを見たのを最後に花音の意識は消えた。

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