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最悪の出会い

 顔合わせのため、弟子を連れて少し早めに商人ギルドに行ったら、一人個室に連れて行かれた。

「すみませんっどうしても断れなくて……っお弟子さん、一人増やして頂けますか!?」
「えええええ!? 何ですか、それ!」
「いや、申し訳ありません、貴族の子がゴネてきて……一年、一年預かっていただけたら、何かと便宜を図らせて頂きますので……」
「ゴネてくるって時点で嫌なんですけど。なんで私?」
「それが……その、いえ……申し訳ありませんっ!」
「ええええええ!?」
「一年預かって、一人前の承認をして頂けるだけで……! もちろん、評判代として便宜とは別に10金貨払わせて頂きます!」
「それって私の評判が落ちるってこと!?」
「なにぶん、貴族様ですから……! すみません!」

 私は呆然としてしまう。嫌な気分の代償が10金貨。この世界だと大金なんだろうけど、はした金すぎる。その後、ため息を吐いた。
 
「わかりました。けど、私、弟子は取りたくないんです。借りは今後弟子を取る義務の免除でお願いします」
「検討させて頂きます……!」

 暗鬱とした気分で、弟子達が待つ部屋に向かう。
 部屋に入ると、すぐに叱責が飛んだ。

「いつまで待たせますの! 無礼ですわ!」

 何? 貴族って逆らってはいけない系?

「……すみません」

 ベルンツハイムとガウルが蒼白な顔をしている。飛び出そうとしたガウルを、ベルンツハイムが懸命に抑えた。

「それにしても、エルフや獣人を勝手に弟子にするなんて! 不快ですわ!」
「……すみません」
「あんなのと一緒の宿なんて私はゴメンです! 最高の宿を用意なさい!」
「……はい」
「それと! 私は既に商人ごときの勉強は終わらせています。聞けば貴方は商売を初めてすぐに利潤を出したとのこと。平民ごときが100ゴルド手に入れた方法と資金だけ用意なさい! 今すぐに、です!」
「ある方から貰いました。二度貰うのは無理でしょう。残りの頂いた資金の100ゴルドを差し上げますので、課程はこれで終了と言う事でいいですか? 今、今日より一年の経過を持って弟子と認める。独り立ちを認め、互いに一切の干渉をしない、という証書を書いて、商人ギルドの受付から三食付きの高級宿を申し込みます」
「んん……。そうですの。所詮平民ごとき、仕方ありませんわね。とんだ肩すかしですが、心意気は認めましょう。100ゴルドをよこしなさい」

 契約書書くために、名前は聞いた。ルフィリアというらしい。
 商人ギルドの人はオロオロとしている。
 最悪の気分のまま、部屋に戻った。

「……で? 貴方達もこの証書いる? いるよね。今書くから」
「お待ち下さい」

 僧侶の格好をした17歳ほどの少女が、私を止める。二十代ほどの魔術師と、十五歳ほどの戦士は目を丸くしていた。

「何? ああ、百ゴルドと宿代ならあげるよ。縁切り代としては妥当だわ」

 死んだ目で答える。

「お待ち下さい。私達は勉強に来たのです。確かに百ゴルドはとても……とても欲しいですが、何も学ばずに帰っては冒険者ギルドのマスターの信頼を裏切ってしまいます。どうぞ、ご教授頂けますか」
「俺、勉強は嫌いだけど、百ゴルドもらって終わりより、その人から商売の仕方きっちり学びてぇわ」
「……確かに百ゴルドは欲しいが、あれと同じと思われるのも不快だな」
「お前ら何様だよ! この方は……!」

 僧侶、戦士、魔術師の勝手な言い分にたまらずガウルが言うのを、ベルンツハイムが懸命に抑えながら言った。

「口の聞き方にお気をつけ下さい。国が収集しているゴルドをたやすく出すような方が、本当に平民とお思いですか。無礼な口を聞くと、後悔しますよ」
「身のこなしが下品だ。貴族ではなかろう。そこのエルフのほうがまだ身ごなしがいい」

 ガウルが一層暴れる。

「御待ちなさい、この方はこれから師になるのですよ。それに冒険者ギルドのマスターが様子を見に来るそうですから、サボっているのがバレたら大変なことです」

 僧侶が告げ、自己紹介を始める。

「私は癒しの術について学ぶ、ミリアと申します。カザ師匠、よろしくお願いします。今回、リーダー資格取得の為、商人ギルドに修行に参りました」
「俺はダカート。戦士だ。同じく、リーダー資格取得の為、修行に来た。俺たち三人は今までなんとなくパーティ組んでいたんだ。リーダーは特にいない」
「キルク。魔術を得意としている。リーダー資格の取得が目的だ。一人前になったら、それぞれ真面目に仲間探しをしようということになってな」

 え。こいつら今のパーティじゃあ嫌って事? 分解寸前なの? 全員リーダー目指すってどういう事?
 そしてこいつらは帰ってくれないの? 意味分かんない。
 
「……もういい。わかった。とりあえず、ついてきて」

 あああ。最悪だ。よし。ベルンツハイムとガウルを超頑張って育てよう。
 そして、二人に全て押し付けよう。
 こいつら三人はなんとかやりすご……冒険者ギルドのマスターが覗きに来るんだっけか。難癖付けられたら嫌だな……。

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