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 第1話  【裏か表か】

 せかへい 外伝8


 著者:pirafu doria
 作画:pirafu doria


 第1話
 【裏か表か】



 エリスは王国にある宿でベッドに横になっていた。



 エリスはオーボエ王国にある王立魔法学園に通う学生である。普段はこの王国にある宿を借りて住んでいる。



 オーボエ王国は笛のように高い建物が並ぶ国であり、エリスが泊まっている宿も上に長い建物である。



 エリスはそんな宿の3階にある部屋に泊まっている。この宿は学園に徒歩5分で着ける便利な場所だ。



 王国の中心に近いということもあり、値段は結構高いがその分快適に暮らしている。



 そんなエリスに不満があるとすれば、ちょっと寂しいということくらいだ。



 今日はすでに授業を終えている。しかし、夕飯にはまだ時間があり、少し暇な時間でもあった。



 エリスが王国に来た理由は、あるものを手に入れるためである。しかし、そのための計画は順調に進んでいる。



 これ以上焦る必要もない。



 エリスは何かないかと、ベッドの上で手を伸ばす。



 すると、あるものがエリスの手に触れた。



 それはひんやりしていて硬い。手に取るとそれは平たく丸い、親指よりも少し大きい程度。



「あ〜、さっきのお釣りか」



 それはこの王国で通貨として使われている金貨である。



 夕食を購入した時のお釣りであり、帰ってきた時にその辺に置いていたのが、近くにあったのだ。



 エリスはそれを手に取ると、ベッドを椅子にして座る。



 そして金貨を見つめた。



 金貨には模様が彫られており、裏表で絵柄が違う。



 エリスはそれを手に持つと、手の甲を上にして指で器用に金貨を転がした。



「…………」



 エリスは一人無言で、そうやって金貨を転がした後、金貨を親指に持ってくる。





 ──私の望みは叶うか、ちょっとした占い──




 エリスはそんなことを思いながら、金貨を親指で弾いた。



 金貨は空中で回転し、やがてエリスの手に落ちてきた。



 エリスは左手の手の甲で金貨をキャッチすると、右手で押さえた。



 そしてゆっくりと右手をどかして、金貨ぎ裏か表か確かめる。



 その結果は…………



「…………」



 裏である。



 しかし、エリスは左手に金貨を乗せたまま、右手で金貨をひっくり返す。そして無理やり表にする。



 そうしてしばらく金貨を見つめた後、エリスは金貨を適当にその辺に捨てると、立ち上がった。



「よっ〜し、ご飯食べよ〜っと」



 そう言うと、エリスはリビングへと向かっていった。



 エリスが捨てた金貨はベッドの上でバウンドして、そのままベッドの壁の隙間に落ちる。



 そして地面に落ちて、音を立てながら回転した後、金貨は裏になってその場に落ちた。




しおり