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対峙のとき

「饗庭さん!待たせたな!透視能力を持つ鬼塚の登場だ!」

饗庭にそう話した鬼塚は、福冨の御霊を見ると近付き利き腕の右手を伸ばし、感じ取り始めた。

「8mmフィルムを埋めた場所、ここから大よそ半径500m以内のところでしょうか。あえて自ら命を絶った場所とは別のところに埋めたのは理由がありますよね。自らの亡骸は引き上げられると同時に、本来なら事件性があることを示すべき内容にも関わらずその8mmフィルムの在処をあえて人目につかないような場所を選び埋めたんですよね。一度は更生して、闇の世界には戻らないと決心したのに闇に戻ってしまった、だから”悪いことには加担をしないと決意をしたのにしてしまった”という自覚があって違う場所にしたんですよね。そうですよね?残念ながら透視能力を持つ僕にあなたがどこに金庫を隠したのかが分かりました。僕の頭の中には鬱蒼とした木々の中に海のようなものが見えます。恐らくあのクロマツの木々の中でも海岸沿いに近い場所を選ばれたんですよね。今から僕と饗庭君の二人で探し当ててみますよ。」

鬼塚が福冨の御霊に語り掛けると、福冨の御霊は観念をしたのだろうか、鬼塚に話しかけた。

「500mかどうかまでは俺は覚えていない。ただ唐津湾は見えた。鬱蒼とした木々の中で唐津湾が木々の間に挟まれ見える場所に俺はスコップを使い、穴を深く掘った後に、そこに金庫を埋めた。使ったスコップはゴミ捨て場に捨ててきた。全ての作業が終わったところで、俺はこの地で散りたいと思い、首を吊った。」

福冨の話を聞き、鬼塚は「ありがとう。きっとあなたの御霊も真相が分ればきっと浄化されるはずだ。安心して昇天できると思いますよ。」と話すと、福冨の御霊は「俺はこの地で怨霊となった。俺はこの地で沢山の、自殺をしようとこの地に足を踏み入れた方々の心の弱みに付け込み、俺と同じように首吊り自殺を図るように導いた。天国に行けたとしても待っているのは地獄だろう。俺はこの地でずっと残り、そして俺と同じ同士を集うための活動をこれからも、地球が滅びない限りずっとね、続けていく。」と語ると、砂のようにさっと消えた。

饗庭は鬼塚に「来てくれてありがとう。ところで今まで饗庭君なんて言ってこなかったよね?」と聞くと、鬼塚は笑いながら「俺達、もう友達も同然じゃないか。俺の事は鬼塚でもいいよ、ただし彰!って呼び捨てはするなよ。」と話すと、饗庭は鬼塚にある指摘をした。

「鬼塚彰は芸名だよね?友達なら本名を教えてくれよ。」

饗庭の質問に鬼塚は「絶対に秘密にしてくれるよね?これがばれたら商売あがったりなんだよ。」と話すと小声で「本名は山田一郎だよ。」と答えると、饗庭は思わず「うわー、よくある名前。何だかテストの見本用紙にも出てきそうだ。」と話すと鬼塚は「だから俺の名前って名乗るのは嫌なんだよ!」と不貞腐れた口調で答えた。

饗庭が鬼塚に「朝の番組に色々と出ずっぱりだったけど、大丈夫なのか?お昼からの番組はないのか?」と聞くと、「お昼からのワイドショーでコメンテータとして出演をしなければいけない番組はないから、あとは22時からの今日のニュース番組でゲストコメンテーターとして出演するぐらいだけだからね。朝の生放送が終わってから夜の仕事まではフリーな時間が出来たんだ。こんな広い虹の松原で一人で探すのは絶対に無理だと俺は分かっていた。だから前もってマネージャーには昼から外せない用事があって、その時間帯には仕事を入れないでほしいって伝えておいた。」と語ると饗庭は「ありがとう。透視能力を持つ山田さんがいてくれるだけでも助かる。」と話すと、鬼塚は答えた。「頼むから芸名で呼んでほしい。」

鬼塚の答えを聞くと、饗庭は鼻で「ブフッ。」と笑った後、「わかったよ。」といって返事をした。その様子を見た鬼塚は右手の拳を強く握りしめ叫んだ。

「俺の名前を馬鹿にするんじゃねぇ!!」

何かあったときのことを考え、饗庭は鬼塚と共に駐車場へと戻り、愛車のアウディのQ3の後ろからレンタルの金属探知機を5台積んできていた。

「故障したときのことも考えてね。これだけ用意した。」

饗庭がそう語ると、「俺たち二人だけじゃ人手不足だから、あともう一人力自慢だけが武器のある人を呼んできた。ちょうど午前の訓練を終えたところで、俺みたいに強い霊能力は持ち合わせていないが、活躍してくれると思う。」と鬼塚に金庫を探すのに手伝ってくれる人が他にいることを説明をすると、饗庭はスマートフォンを手に取り、「着信履歴があるから電話をする。」といって電話を掛け始めた。

饗庭がその場を離れ、その人と電話をし始めた。

「もう近くに来ているみたいだ。午後からの仕事は用事があるので他の人にやってもらうことにしてもらったみたいだ。3人がかりなら、この虹の松原の中に埋まってある金庫を与えられた時間内で見つけられることはできるな。」と饗庭が話すと、鬼塚は「そうだな。3人いたら十分見つけられる範囲内で探し出すことはできる。」といって喋ると、饗庭が呼んだもう一人の助っ人がやってきた。

「饗庭、待った?俺も使えるかどうかは分からないけど、地面に掘り起こされたものを探すためのグッズは色々と持ってきたよ。」

そう話すと、愛車のBMWのX1の後ろを開けると、使えそうなスコップから金属探知機まで持ってきてくれたのだった。

鬼塚はそれを見て「こんなにも用意をしてくれてありがとうございます。あっ、そういえば自己紹介が遅くなりましたね。心霊現象研究家の鬼塚彰です。宜しくお願いします。」と語ると、饗庭が呼んだ知人は笑いながら「最近テレビのニュース番組に出ずっぱりですよね。七ツ釜の集団自殺から、その前の大嶌組の社員による集団殺傷事件など、霊障によるのが原因の事件程鬼塚さんは呼ばれますからね。僕も知っていますよ。あっ、因みに僕は霊感は除霊も行えちゃう饗庭とは違って全くないんですけどUFOやUMAは心の底から信じている!」と熱く語りだすと、鬼塚は笑いながら「そうなんですね。ところでお名前をまだ聞いていなかったので教えてもらっていいですか?」と鬼塚が聞くと、「あっ、有名人の鬼塚さんを前にしてついつい自分のオカルト好きだということをアピールがしたくって、熱弁してすみませんでした。僕は神崎郡吉野ヶ里町にある目達原駐屯地から来ました、支倉宙弥といいます。宜しくお願いします。」と自己紹介をした。

鬼塚は改めて、饗庭と支倉の二人を見て思ったことがあった。

3人が改めてお互いの名前を知った後、鬼塚と支倉が連絡先の交換をし終えたところで、早速鬼塚が透視をしたときに見たという光景を二人に説明する。

「鬱蒼としたクロマツの木々の中にあるのは分かった。あと目印になるとしたら、唐津湾がうっすらと見えたということだ。このことから、海に近い場所に埋められていることが想定される。海に近い場所をメインに先ずは探し出そう。」

鬼塚がそう話すと、饗庭は「了解。俺は海岸沿いの一番北側を探す、支倉は一番南側を探してほしい。鬼塚さんは中央部分をメインに探してほしい。」と提案して、支倉は「良いよ。ここなら何度も、肝試しで何度も足を運んだから、大体の場所は分かるよ。何かあればLINEで連絡する。」と話し虹の松原の中へと入ると南の方角へと向かい動き始めた。

鬼塚は「悪いね。一番遠いほうを二人に任せてしまうような形で申し訳ない。何かあれば、皆LINEで友達になっているから、発見があればすぐにメッセージを送ってほしい。」と話すと、饗庭は「そうだね。見つかったらすぐにでも報告する。」と話し虹の松原の中へと入っていくと北の方角へ動き始めていく。

その間に鬼塚は再び虹の松原へと入っていくと、入って10mほど歩いた先にて立ち止まった。深く深呼吸をして座禅を組むと、気を集中し始めた。

座禅を組んで5分ほどが経った頃だった。

鬼塚の頭の中に生前の福冨の姿が浮かび上がってきた。

「これは、生前の福冨だろうか?」

鬼塚がそう話すとさらに集中力を高め、福冨がどう動いたのかを観察し始めた。

『はあ、はあ。2m以上は掘れただろうか。これだけ穴を深く掘れば、そう簡単に見つかることはできないだろう。ここなら誰も、金庫が隠されているとは誰も思わないだろう。大丈夫だろう。』

福冨が薄暗闇の中、一人せっせと持ってきた金庫を慎重になって穴を掘った場所に金庫を埋めると、掘り起こした土をかぶせ始め、最終的には埋めた場所の地面を足で均して、その場を後にする姿が浮かんできた。その際に、唐津湾が見えてきたこと、そして鬱蒼としたクロマツの木々の中にはあったが、その後の福冨がどう動くかを見るために追跡をし始めると、隠した場所から80mほど南へ下がったところに福冨がある一本のクロマツの木に目を止めると、ズボンのポケットからロープを取り出すと、枝にロープを括り付け首を引っかけられるほどの輪を作り出すと、首にかけ、下に置いてあった脚立を足で蹴って倒すと、福冨は断末魔の声に近いような声を上げながら悶え苦しみこの世を去った。福冨の体から魂が抜け出ると、その魂はこの地で最期を遂げた仲間の元へと向かい、歓迎される様子を見た鬼塚は目を覚ました。

すると鬼塚を囲むように、自殺者たちの御霊が近付き集まりだしていた。


ある一人の御霊が鬼塚の右肩を触った瞬間に、数多もの手が鬼塚に触り始めると、目の前のクロマツの木に首を吊らせようと誘導し始めた。

そして鬼塚の背中には、福冨の姿があると、鬼塚の顔を見て睨み始めた。

鬼塚がはっとなり、思わず「福冨、何で俺の背中に乗っている!?重いんだよ!」と反論をすると、福冨は答えた。

「俺はこの地のリーダーである以上、あの世へ導きだすのが俺の仕事だ。君も饗庭や支倉のような安定した仕事を持つ人間を見て、きっとこの仕事を続けていく上に置いての不安ばかりが頭をよぎったんじゃないのか?饗庭や支倉には不祥事さえ起こさなければ解雇はないが、鬼塚なら忙しい時は忙しい、暇なときは本当に暇と波があるからね。俺が汗水流して必死で隠した金庫に眠る8mmフィルムの内容を暴き出すべく必死になっているだろうが、俺は鬼塚の心の弱さに付け込んでやる。」

福冨がそう話すと、背後を振り返るような形になった鬼塚をそのまま地面に突き倒し、叫ぼうとした鬼塚の口に黒い気体のようなものを流し込んだ。

鬼塚は抵抗することが出来ず、福冨の御霊が消え去るのをじっと待つしかなかった。

3分ぐらい経ち、やっと福冨の御霊が消えたと分かり、立ち上がると、福冨が死ぬまでに埋めたであろう、福冨が首吊り自殺を図ったクロマツの木を目印に北へと向かい歩いていくのだった。

「俺は福冨に呪いをかけられたかもしれない。」

鬼塚の中で、取り憑かれたことにより自分自身が失ってしまわないだろうかと不安だけが拭えなかった。だけど嫌なことを考えれば、それこそ福冨の仕掛けた罠にはまるも同然だと気持ちを切り替えることにした。

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