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<第41話> 車でお出かけ そして、


目の前の半透明の地図の時計を見ると【12:32】となっていた。

自宅裏庭での、収納の指輪のその収納力の検証を大満足のうちに終え、

次にやる作業と言えば、”レッツお買い物”である。


でもその前に、大事な相棒の心を守るため、タマにお願いをしておく。

(タマに悲しい、苦しい思いをしてほしくないしね。)


「タマ~、ちょっとお話、いいですかぁ~?」

『タマを呼んだかニャン?』

「うん、ちょっとお願いをしたくてね。」

『何でもタマにお任せニャン。』

「ふふっ、ありがとね。」

タマの元気なお返事が返ってくる。

姿は見えないが、声だけでもその健気さが伝わってきて、思わず微笑んでしまう。

「昨日、日本で出歩くときは休眠してほしい、って言ったの覚えてる?」

『覚えてるニャン。』

「それでね、今からお買い物に出かけるから、休眠していてほしんだけど、できる?」

『できるニャン。寝るのは得意ニャン。』

「ふふっ、さすがネコ、正に”寝”る”子”だね!」

『……。』

「あれ? これはギャグとかじゃなくて、割と真面目だったんだけど……。」

「まあいいや。とりあえず、タマは休眠ということで、お願いね。」

『分かったニャン。』

「あっ、でも途中でタマにお願いごとをするかもだけど、大丈夫かな?」

『タマはいつでも大丈夫ニャン。いつでも呼んで、いつでも頼るといいニャン。』

「ありがとね。それじゃ、呼びかけるまでしばらく休眠していてね。」

『分かったニャン。』



ちょっと寂しいが、タマには暫く休眠してもらい、いざ、買い物スタートである。

まずは自宅のガレージへ移動し、車に乗り込む。

銀色に鈍く輝く車体。

使い慣れた中古の軽ハイトワゴンである。


「行くぞ、”ブサイク号”!」

そう小声で呼びかけながら、運転席へその年齢にしては多少大き目な体を滑り込ませる。

なぜ”ブサイク号”呼びなのか、それは決してカッコ悪いからではない。

その呼称の由来は、ナンバープレートに記された数字が、”2319(ブサイク)”だからだ。

この車の形自体は、寧ろカッコいいと思っている。

一昔前の、エッジの効いた、水平基調で角のあるフォルム。

最新の車は、”まるまる”してたり”ずんぐり”してたりで、正直自分の趣味じゃない。

(まあ、そもそも新車を買える財政的余裕なんてなかったんですけどね。)

中古の軽という、ある意味”田舎の標準装備”に対し、ある種の自己満足に浸りながら、シートベルトを締めるのだった。



そんなこんなで、買い物へ出発進行。

目的地は、住んでいる自治体の中心部にある、最寄りの複合商業施設”ル〇アK南”。

山道(と言ってもちゃんと舗装された県道)を2.3kmほど、ひたすら下る。

(下りはアクセル踏まなくても時速60~70km出ちゃうんだよね。)

急な坂道でもあり、法律的な制限速度はいざ知らず、自然に速度は上がっていく。

(それにしても、この地図、便利だよね。カーナビとか要らないじゃん。)

車の運転を邪魔しないように、自動的に? 今は視界の右下の方に移動している半透明の地図を見やる。

異世界召喚の特典、スキルの機能であるが、異世界だけではなく、日本でも確実に有益な便利機能である。

(でもまあ、これ、所謂ラノベ主人公の能力じゃないよね……。)

(そういえばいたな、ラノベ主人公。僕の”ご同輩”勇者君。彼、今頃どうしてるのかね。)

(主人公パワー全開で、早速ハーレムとか構築しちゃってるんですかね、あ~やだやだぁ。)

今更ながら、自分と同じタイミングで異世界召喚された勇者君のことを思い出す。

彼に対する印象は最悪に近かったため、自然とひがみ系愚痴系の思いがよぎる。

(一切かかわらないって啖呵切っちゃったし、あの国自体人種差別してそうだし、もう会うことはないと思うけど……。)

(でもまあ、聖女ちゃんだけは、今度様子をそっと”覗いて”みても、いいかもしれないね……。)

そんなことを思いながら、お昼時のドライブは何の問題もなく順調に進む。

この時間帯の交通量はそれほどでもない。

地方の郊外の主要幹線道路らしく、信号が少ないこともあって、

15分ほどの快適なドライブで、目的地の複合商業施設に到着するのだった。


因みに、この”ブサイク号”にはカーナビは付いていない。

しおり