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第82話

 敵襲を知らせる声が響いてすぐ。煙の尾を引く、数多のミサイルが飛来。

 前線に配備されている、重武装を施されたM.Lタイプがそれを撃ち落とす。それを皮切りに、空戦用の武装を装備した、H.WタイプとH.Mタイプが空へ飛び立ち、戦闘を開始した。

 ナオも倉庫の近くにある建物の屋上に飛び移って、貯水タンクの影に身を隠しながら、先行量産型で構成されている部隊のリーダー機となっている、04と通信を始めた。

「(04。状況報告を)」
「(先程のミサイルによる損傷はゼロ。先行量産型全機、襲撃してきたヒューマノイドと交戦開始しました)」
「(敵のアーティナル・レイスは確認できますか?)」
「(いいえ。旧型の戦闘用ヒューマノイドばかりで、アーティナル・レイスは確認できません)」

 ナオは目のズーム機能を使い、前線の様子を見てみる。04の言う通り、今のところ敵の中に、アーティナル・レイスは一人も見当たらない。

(敵はまずは定石通り、ヒューマノイドでこちらの弾薬とエネルギーを消費させた後、アーティナル・レイスを投入するつもりでしょうか……)

 アーティナル・レイスにとって、単純な動きしかできない旧型のヒューマノイド戦闘能力は、大した驚異ではなく、仮に四倍の数がいようとも、アーティナルが負ける可能性は低い。しかし、アーティナル・レイスと比べて安価で、大量生産に適しているヒューマノイドは、その数を活かし、敵を消耗させることを武器とする。

 敵のヒューマノイドを次々と撃墜していく様子は、一見するとこちらが有利に見えるが、ナオの考えている通り、まずはこちらを消耗させるつもりなのだろう。

「(04。弾薬とエネルギーの消費は、可能な限り抑えるよう、全アーティナル・レイスに伝えてください)」
「(了解)」

 先行量産型達は、ナオの指示通り、弾薬とエネルギーの消費を抑えながら戦闘を行う。しかし、そんな考えは無駄だと言うように、敵は次々とヒューマノイドを送りこんできた。

 次第にそれは、傭兵達に焦りの声を吐かせる。

「B小隊の弾薬がやばい! こっちに補給部隊を回せ!」
「こっちのE小隊にも補給を――!」
「ちくしょう! なんなんだよ、この数!」

 最初は指示を出すだけだった傭兵達も、銃を撃ち始めるが、やはり対処はしきれない。

「く、くそ! おい、お前! 俺を守れ! こいつらを食い止めろ! 命令だ!」

 傭兵の一人に命令された、弾薬が切れたM.Lタイプのアーティナル・レイスは「……了解」と答え、ヒューマノイドの群れの中に飛び込んでいく。

 その腕力とパワーで、数体のヒューマノイドを破壊するも、一〇を超える数の前では微々たる抵抗にしかならず、あっという間にまとわりつかれ、攻撃される。まるで、兵隊アリに狩られる獲物のように。

「ひ、ひぃぃ」

 命令をして逃げようとした傭兵は、それを見て腰を抜かしてしまったのか、地面に尻をつけてしまう。

「いけない!」

 そこへ、04率いる先行量産型達が駆けつけ、M.Lタイプのアーティナル・レイスにまとわりついているヒューマノイドに連携攻撃を行い、救出を試みたが……M.Lタイプのアーティナル・レイスは、すでに頭部を破壊され、機能停止していた。

「く……」

 04は、腰を抜かしている傭兵に睨み気味の横目を向ける。

 なぜ食い止めろなどという、馬鹿な命令をしたのか。

 連れて逃げろと命令すれば、このM.Lタイプのアーティナル・レイスは敵にやられることはなかったのにと。

 しかし、この基地の傭兵に対して、そのようなことを口に出すことは許されていない。

「何だその目は! 俺は人間なんだぞ? 機械のお前らが、人間を守るのは当然だろうが!」
「……申し訳ございません。その通りでございます」

 怒鳴ってくる傭兵に、04は頭を下げた。

「わかったら、さっさと俺を医療室へ連れて行――っ」

 突然、傭兵の声が途切れ、体が前へ傾いたかと思うと、そのまま地面へ倒れた。

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