バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第66話

「(人物?)」
「(ネイに命令を与えているのは、もしかしたら岩崎司令とは違う人物なのかもしれない。そうじゃなきゃ、自分のマスターに礼を言う必要がないなんて、普通のアーティナル・レイスなら言わない)」

 澄人の言う通り、普通のアーティナル・レイスならば、マスターである人間が感謝されるのは、喜ばしいこと。ある意味名誉と言ってもいい。だというのに、ネイの態度はあまりにも素っ気なかった。

「(そう命令されているだけなのでは?)」
「(そうかもしれない。だけど、他にも不自然な点がある。例えば、ネイが僕達の監視についていること。ここは、いつ敵との戦闘が始まっても、おかしくないような場所だ。そんなところにいたら、普通は身を守らせるために、自分のアーティナル・レイスを側に置いておく。それこそ僕達の監視なんて、ネイ以外のアーティナル・レイスでもいいはずだ)」
「(久重一将の命令……ではないですよね)」
「(ああ。もし一将の命令で動いている――もしくは僕の命を狙っているのなら、さっきのような――守るような行動は、とらないだろうからね)」

 考えれば考えるほど、ネイが不明的な存在に思えてくる。

 身を守ってくれたことからして、少なくとも敵ではないだろうが、味方として信頼することはできない。

「(澄人。ネイはあなたを油断させるために、守るような行動をとったという可能性もあります。あまりネイに気を許さないでください)」
「(わかっているよ。僕が今、ここで気を許せるのは、ナオだけだからね)」
「(そ、そうですか。それなら安心です)」

 ナオだけと言われ、自分が澄人にとって、特別な存在だと思えた。そしてこうも思ってしまう。もっと特別な存在になりたいと。


 澄人とナオが作業を再開して、さらに九時間後。深夜となり、澄人は目を擦るようになっていた。

「澄人。そろそろ寝てはどうですか? M.Lタイプの修理は半分以上が終わったわけですし、あまり無理をし過ぎると、明日以降に響きます」
「でも…………そうだね」

 澄人はまだ作業を続けたそうな感じだが、ちょうど区切りも良い。それに今休まなければ、次に休めるのは明日の夜になってしまうだろう。

「ネイ。澄人はこれから睡眠をとりますが、構いませんよね?」
「作業は予定よりも早く進んでいますので、問題ありません」

 ナオは、ネイに一応許可をとると、澄人に

「澄人。倉庫の二階の部屋に布団をひいてきますので、少し待っていてくださいね」

 と言って、駆け足で布団を敷に行く。

 二階の部屋は四畳半ほどで広くはないが、キッチンとシャワーとトイレ、洗濯機などが一通り揃っており、アーティナル・レイス用のメンテナンスベッドもある。ただし、言うまでもなくスペースに余裕はない。押入れの中や、空調の聞いていない倉庫で澄人を寝させるわけにはいかないので、布団を敷くとすれば、メンテナンスベッドの上しかないだろう。

「ここに……敷くしかないですよね」

 メンテナンスベッドで澄人が寝るということは、ナオも同じ布団ということになる。

「澄人と同じ布団……」

 不謹慎だということはわかっているが、それでもナオは思わず妄想してしまう。澄人と肌を重ねることを。

「わ、私ったら、何を考えて……! だ、ダメですよ! そんなこと考えたら!」

 首をブンブンと振って自分に言い聞かせるが……そう言いながらも、ナオは布団をメンテナンスベッドにしっかりと敷いてから、一階へと降りていった。

「す、澄人。布団を敷いたのですが、少し相談が……」

 直後。ナオの目に、とんでもないものが映る。それは、ネイによって服を脱がされ、上半身が裸になっている澄人の姿だった。

しおり