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第63話

 器材などが入っているすべてのコンテナが、VTOLから倉庫の外に運ばれるまでの間。澄人とナオは、倉庫のアーティナル・レイス達を順番にチェックをしていき、施術を行う優先度を決めながら、応急処置をしていった。

 そしてコンテナの運搬が終わると、ひとまず最低限の器材や器具を倉庫内へと移動させ、損傷が比較的軽度のものから治すことを澄人は決めた。

 ナオとしては、できれば重度のものから治してほしいと思った。おそらく澄人も、そうしたかっただろう。しかし、そのためにはコンテナ内の器材をすべて倉庫内へ運んで設置し、準備をしなければならない。倉庫内の整理清掃も必要だ。二人だけでそれを行っていたら、明日の夜までかかってしまう。そこで、短時間で治せそうなアーティナル・レイスから処置していき、手伝ってもらおうと考えたのだ。

 澄人がまず始めたのは、M.Lタイプの施術……というより修理だ。

 元々作業用として開発されたM.Lタイプは、ナオのようなH.Wタイプや、H.Mタイプと違い、旧型ヒューマノイドのように人工皮膚に覆われてはいないため、複雑な施術を必要とせず、ほとんどパーツ交換だけで済む。とはいえ、M.Lタイプはかなりの重量があり、しかも身長は基本、二メートル近く。相応の労力が必要だ。

 澄人はM.Lタイプの修理を素早く――手際よくしていき、ナオも必死でサポートを行った。そして……八人目のM.Lタイプの修理が終わり、エネルギーの充電を始めたころ。

「ふぅー……」

 窓からは夕焼け色が見える中、澄人は額から出た汗を拭った。

 外の気温はそれほど高くないが、倉庫内のエアコンは壊れてしまっていて、空調が効いておらず、澄人の服は汗で濡れきっていた。

 疲労の色が見え始めている澄人に、ナオは持ってきていたミネラルウォーターのペットボトルを渡しながら言う。

「澄人。そろそろ休憩をとったほうが良いのでは?」
「ありがとう。でも、まだ休憩なんかとっていられないよ……」

 澄人は倉庫の隅に並べて寝かせている――二人がここにきた時には、すでに手遅れとなっていた、六人のアーティナル・レイス達に顔を向ける。その中にはナオの姉妹兄弟である、H.Wタイプの09と、M.Lタイプの30も含まれていた。

「09……30……」
「……これ以上、機能停止にさせるわけにはいかない」

 ミネラルウォーターを半分ほど飲むと、澄人は次のM.Lタイプの修理に、とりかかろうとした。その時、

「ぜろ、つー……」

 応急処置を施した後、システムチェックをしていた04が、目を開けた。

「04、起きましたか?」

 ナオが駆け寄ると、澄人も04のところへ行き、片膝をつけた。

「調子はどう? 痛覚はこっちで切っておいたから、痛みはないと思うんだけど」
「あなたは……?」
「あ、自己紹介がまだだったね。初めまして。僕は柳原澄人。久重重工の第一研究所からきた、実習生だよ」
「ヤナギハラ……スミヒト…………柳原澄人様!?」

 両脚がない重症の体だというのに、仰天した声を出して上体を起こす様子を見せる04を、澄人は両肩に触れて制止させる。

「動いちゃだめだよ。まだ応急処置しかしていないんだ」
「あなたは……はるさんの……」
「そうですよ、04。彼こそが、姉さんの大切な人です」

 ナオがそう言うと、04はぎこちない動きで、澄人に頭を下げる。

「お会い、できて……こ、光栄、です……!」
「僕の方こそ、はるの弟妹である君達と会えて嬉しいよ。あ……嬉しいって言葉は不謹慎だったね。ごめん」
「そんなことは……ありま…………ッガ……ガ……」
「あっ、無理にしゃべらないで。今日は難しいけど、明日中には君の体も治してあげるから。悪いけど、それまで辛抱していてほしい」
「は……い……」

 澄人は、04の体にかけてある布団を整えた。その最中、

「おい、お前か? 第一研究所からきた実習生ってのは」

 突如、倉庫内に数名の男達が入ってきた。

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