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新しい日本

 二〇四五年、日本では究極の格差社会が社会問題となっていた。

 発端は二〇四〇年に誕生した未来党政権にある。一向に景気が停滞したままの政権に嫌気が刺した国民は、新しい未来に期待の意味をこめ、こぞって未来党に投票した。結果として、未来党政権が誕生した。

 未来党政権はいい意味、悪い意味の双方で日本の従来の常識を覆した。次々と斬新な法案を提出し、日本という国を変えていった。
 
 法案には国民健康保険、社会保険、年金制度、医療保険、介護保険、雇用保険の廃止など国民の生活に多大な影響を及ぼす法案が含まれていた。生活保護制度も廃止された。年々増え続ける福祉の負担を完全にカットしてしまった。
 
 タバコの税金を従来の一〇倍、酒税を一五倍に一気に引き上げる法案も可決させた。健康被害対策の費用を削減するため、一般市民にタバコ、酒が行き届かないようにした。

 生活に大きな影響を及ぼすにいたったのは「完全実力主義法案」である。究極の実力主義をしくことで、世界に対応できる強い日本の構築を図った。
 
 二〇四〇年の日本は世界から相手にされないレベルまで国力が落ち込んでいた。中国や韓国といった隣国に大きな穴を開けられ、先進国ではなく途上国と位置づけられるようになっていた。

 先進国としての威厳を取り戻したい。山本政権はその一心で法案を可決したのだが、大きな災いをもたらすこととなった。

 完全実力主義法案は雇用を不安定にした。正社員であっても予告なく解雇できるようになり、給料に似合わない問題社員などが一掃されることとなった。
 
 最低時給も変更された。全国一律で一円に設定し、仕事のできない社員は生活可能な収入を得られなくなり、自主退職を余儀なくされた。一方で有能な社員は重宝され、従来の三倍以上の収入を手にしている。

 法案施行後、生活できずに家を失う国民が増え続けた。高齢者や弱者の相次ぐ餓死が社会問題となった。このことに法案を可決した未来党からも貧困層への対応を迫る声が広がったものの、首相は頑なに耳を傾けなかった。何かを得るために何かを失うのは当然だという考えを持っており、弱者への配慮はなかった。

 二〇九〇年、日本は血と涙を失った人間のみで形成され、屈強な国として君臨するにいたった。世界トップクラスといわれる人材たちが、世界のあちこちで活躍し、日本人の技術を世界にみせしめた。

 日本の成功例に追随する国が次々と現れた。弱者への思いやりは優しさは完全に姿を消すこととなった。


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