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社内喧嘩と、新型遊精

 ボクの職場である事務所には窓があり、そこから製造工場の様子が見える。

 今日から試験的に倉庫担当のスズちゃんが製造で担当で働いてるが、メッキくんの良いサポートもあってか、良い動きをしているように感じる。

「ナマリさんみたいに迅速に動けなくて御免なさいですっ」

 スズちゃん的には不満みたいだが。

「いやいや、初日でコレだけ出来りゃ十分っスよ。それにスズさんは仕事が丁寧っス」

 メッキくんは擁護するようにそう言う。

「確かにナマリは自分より仕事早いんスが、何というか仕上げが雑なんスよ。それでしょっちゅう検査の銀さんに怒られて……」

 ガツンッ!

「痛っ!誰の仕業だ……ってナマリ!?」
「はいはい、雑で悪うございましたべさ!」

 メッキくんの頭を、腕ぐらいの大きさの木材でナマリさんが殴っていた。
 うわ痛そう……

 ゴン!

「おい、よそ見してんなアルミ缶。会議中だ」

 それまで現場をながめていたボクの頭を、ブリキが小突く。

 ああそうだ、今事務所では、夏から発売する新しい遊精をどうするか話し合ってたんだった。

「で、アルミちゃんはどんな遊精を作れば良いと思う?」

 そう工場長が尋ねてくる。

「ええっと……ボクなら異世界日本風を前面に押し出したデザインで、時代劇風に話しかけてくれるみたいな」

 例えばボクの遊精のジュラみたいな。ああ、いっそジュラを量産すれば楽だ。
 自分の名前を出されて、相棒のジュラも誇らしげな表情だ。

「却下だ、却下」

 ブリキが切り捨てるように言う。

「そんな奇を衒い過ぎたイロモノなんざ、貴様しか買わん」
「えー、じゃあブリキはどんな遊精が良いってのさ?」
「オレは出来るだけ機能を削り、初めて扱う人も使えるような基本機能に絞った商品を主力にするべきだと思う」
「うわ、それつまんなそう。今時、年配の方だってそんなの買わないと思うよ」
「何だと?」

「まあまあ、二人とも。ここは、ユーちゃんの意見も聞いてみましょうか」

 工場長が、ボクらの会話に割って入る。

「この男の?だって遊精の事なんて何も知らない素人でしょうに」
「だからこそ、商品を買うお客さま視点の貴重な意見が聞けるかも知れないじゃない」
「そりゃまあ、一理あるかも知れませんが」
「と言うことでユーちゃん、何かあるかしら?」

 そんな工場長の問いかけにユーさんは、実現可能か解りませんがと前置きした上で、ある案を出してきた。

「それはまた何と言うか大胆なコンセプトね……鉄ちゃん、それ技術的に可能かしら?」
「前例は有りませんが、可能不可能で言えば十分実現可能でしょう。しかし……」

 困惑する工場長とブリキだったが、

「凄いよユーさん!何その発想、天才!!」

 ボクは思わずユーさんの手を握り、一人で舞い上がっていた。

「ソレ絶対売れるって!というかボクが欲しいもん」
「むっユミ殿、そうなると、拙者はお払い箱で御座るか?」

 ボクの言葉に、ジュラが心配そうに尋ねてくる。

「大丈夫大丈夫、ジュラはそのまんまで、弟子というのはどうだい?」
「弟子っ?!
 うむ、何と良い響きで御座ろうか」

「はしゃぎすぎだ、子供か」
「でも鉄ちゃん、実際良いアイデアだと思わない?」
「"持ち主に応じて成長する遊精"ですか……まあ、悪くないと思います」

 工場長の言葉にブリキが苦笑する。
 そこで手放しで誉めない辺り、性格悪いなあ。成長する遊精、ボクは凄い良い案だと思うけど。

「じゃ、決まりね」
「ただ、商品にするには問題が」
「ええ分かってるわよ、もしコレが人気になれば反遊精派が黙ってないでしょう」

 あ、その可能性を考えてなかった。

「でも、それはこのアイデアが世に出て、ヒットしてから考えましょう」

 そして結論から先に言うと、この遊精は大人気になった。と同時に反遊精派のちょっかいも激しさを増す事になったんだ。

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