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さらば光☆忍法!

「「あーー!」」
「ふっ、御安心を。板額さんに捧げる僕の歌は、まだこれからです」
「!?」
 響が腰から上下に両断された姿を揺らしながら、平然と語り続ける。
「種明しをしましょう」
「最初の気体!」
「その通りです。貴女は光の屈折で間合いを見誤りました」
 響が片膝を中途に崩す。
「ですが、効きました。体に触れたのは柄の飾りだけなのに、あそこまでの威力を載せているとは」
「あのネエちゃんの攻撃どんなんやった?足払いしてから瞬く間、見えただけやけど、どえらいもん振り回してたやんけ!」
「ボク、撮ってるよ。妹にスケート見せてあげようと思って」
「ひらひらしたの好きそうだからな、お前の妹」
 周達は、稀人の携帯通信端末に録画された映像を再生させる。
「ここで蹴った」
「スカートの(ひだ)の内側から、なんか出した!」
「でっかい!どうなってるの?」
「あれが『聖鎌(せいれん)』か!」
「あのネエちゃんの(わき)の下!すべすべのが衣装の隙間から見えてるわ、そこだけ何種類か、ものごっつ筋肉盛り上げて絞り上げんねんで」
「挟まれたら吸い上げられそう」
「はー、細身やけど、見えづらいとこでエラいな力振るってるわ」
「その膂力(りょりょく)で、握った大鎌を引き上げて振り回したな!どんな仕掛けかはともかく、まず自分の筋肉を使いこなしてこそ、謎の力も使いこなせるってもんだ。あのアマ、やりやがるぜ」

「ふっ、血も凍るあなたの美しき氷技と、僕の熱き光☆忍法、雌雄を決する時が来たようですね」
 響が忍者刀を抜いて、氷盤に突き立てる。
「雌雄って、最初っから男女やんけ」
「あはは」
「おおお、これは光と闇の超常決戦だぜ!」
「♩しあわせなはずが、ちぐはくだって」
「ほほ!強がるもの。その体で切り交わすつもりとは!」
「♩真実(まこと)虚偽(いつわり)、幻が染めてく。相身(あいみ)(たが)いに、破れ傘抱いて、夢の中あなたと、歩きます……」
 響と板額が睨み合う。
「絶花の!」
「桜花の!」
 響と板額とが互いに殺到したスケートリンクが、光爆に覆われる。
「勝ったか!?」
 光が収まり、人影が顕れ始める。
「ほはほ!」
 響が氷盤上に横たわっており、板額が大鎌の石突きで滑走を制御して直前で停止する。
「ほほ、お主が切ったのは、髪一筋のみ」
「♩…この世は映し世、真事(まこと)の夢がああ、あるのなら」
「うわ言よの。まだ歌っておる」
 スケートリンク外周の桜の木々の花姿が、一斉に浮かび上がる。
「ほほ。また、あの気体!されどやり(そこ)ない!とどめを刺してくれよう!」
 板額が両手で大鎌を振りかぶる。
()らば、光☆忍法…」
 響が、大鎌を振り下ろしつつあった板額に、薄めた横目で視線を送る。
「むっ!?」
「種明しをしましょう。貴女が感じている、その手応え」
「なっ!?」
「僕は初めにスケートリンク内へ移動する時、桜の木々に、爆発粒とともに、髪に似た強靭な糸を仕掛けておきました」
「ああっ!」
 滑走しかけた板額を、花びらを撒き散らしながら桜の木々が勢いを増して追尾する。
(そうか、髪ってのは鋼鉄に匹敵する強度!)
「どんな攻撃でも、貴女一人では手に余るように。貴女の油断を誘うように」
 板額の全周から、桜の木々が空中へ襲来する。
「そして、貴女が確実に狙った位置に来るように!」
 響が手元に絡み付けていた糸を、指で手繰(たぐ)っている。
「光☆忍法!桜卍(さくらまんじ)っ!!」
 桜の木々が、轟音を立てて氷盤を割りながら、板額に落達する。
「姐さーん!!!」
「うおおおおお!」
「きゃああああーっ!」
 瞼を閉じた響が、(ひとり)(ごち)る。
「花は口付けの様に咲く」

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