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第八話 関平軍侵攻

 関平と呂布の同盟から七日後の徐州にて呂布が劉備に離反を行い徐州を乗っ取りを果たした。

 その際、劉備と関羽には逃げられるが劉備の妻子と張飛を捕らえたらしい。

 曹操は劉備と関羽を保護して徐州に更に二十日後に侵攻した。

 無論、関平が呂布と同盟した事を知っており許昌には守備兵を残している。

 関平は呂布と共に曹操軍を挟撃すべく五万人の軍勢を率いて汝南の東にある曹操の領地、(しょう)に侵攻して民草から略奪をせず、銭を払い、食料や宿の提供を受けて支配地を広げ、落ち葉のある大地を踏みしめながら進軍した。  
 
 やがて、五日後、晴天の昼に曹操の従弟、曹洪(そうこう)、軍師の一人、荀攸(じゅんゆう)率いる三万人の軍勢に阻まれた。

 曹洪と荀攸の軍勢は関平の軍勢と対峙したまま微動だにしない。

 軍師の龐統に意見を聞くと。

「敵軍はかなり統率が執れており、こちらの騎馬隊の対策として地面に落とし穴もしくは油を撒いているようです」

「ならば如何する?」

「こちらに届く罠の範囲外から火矢を射掛け、罠を浮き彫りにすれば恐れる者は無いでしょう」

「では、先陣は華雄に任せる頼むぞ」

「お待ちを」

「何だ呂乱華?」

「私の女騎馬隊三百人に先陣の許可を。見事、敵を釣り出しましょう」  

「何か策があるのか?」

「確かに統率は執れてる。でも所詮は男。女ならではの策にございます」






 女騎馬隊は呂乱華を始め女の兵が全員鎧や服を脱ぎ捨て裸になり、敢えて敵の罠のある箇所に入り、胸を揉んで、尻を叩いて挑発した。

「曹操軍の男は女の裸を見ても襲いかからない羊の群れよ」

「気持ちいいわ。こちらにいらして」
 
 と騒ぐ始末。

 怒りを感じた曹洪は。

「おのれ! 舐めおって許さぬ! あの女共を捕らえ、犯し尽くし、関平達を罠に引き込み焼き尽くしてくれる。者共! 続け!」

 何と荀攸の断りも無く六千人の直属兵を率いて女騎馬隊を追って罠の仕掛けに入り混んでしまった。

 呂乱華は内心笑みを浮かべて。

 小声で。

「やったわ」

 と、叫ぶと合図をし、女騎馬隊は関平の陣まで逃げて、完全に罠の地帯に入り混んだ曹洪達に華雄達が火矢を射掛け、敵の罠である地面の油を利用して引火させ、火の海に呑み込まれ。

「おのれ! 関平! この曹洪がこのような恥辱に塗れた策で殺されるだと。曹操様。仇を……」

 曹洪達六千人は焼死した。

 残されて動揺した荀攸と兵二万四千人は関平軍五万人の総攻撃に遭い瓦解して荀攸と約八千人の捕虜、そして遺棄した食料と武器、馬等を得た。

 譙を守る兵を駆逐して領地として併呑した。

 二日後に譙城に入城した関平は論功行賞を行い、呂乱華の騎馬隊と華雄達に報奨を与えて次に捕縛した荀攸を連れて来た。

「荀攸殿。そなたの様な優れた軍師を処刑するのは忍びない。俺の三人目の軍師になって下さらぬか? お願い致す」

「儂の主君は丞相(じょうしょう)(曹操)様だけよ。今は勝利を喜ぶが良い。いずれお前達は必ず滅ぼされるわ。わっはっは」

「荀攸を牢へ連れて行け」

 荀攸が居なくなると龐統に意見を求めた。

「義父上(呂布)の戦況はどうだ?」

「芳しくありませぬ。今、野戦に敗れ、下邳城に籠城中との事。それに、そろそろ冬になります」

「それならば休戦になるのでは無いか?」

「曹操を侮ってはいけません。何やら策を講じるでしょう」

「ならば、如何する?」

「曹操は袁紹と不可侵同盟を結んでいるから強気なのです。許昌の西にある南陽(なんよう)郡、(えん)城の張繍(ちょうしゅう)を動かして見るのが良いかと。軍師に賈詡(かく)という者がおります。お互いの利を説けば良いかと存じます」

「使者は誰が良い?」

「沮授殿ならば適任かと」

「ならば俺も行こう」

「なりませぬ。殺されてしまいますぞ」

「無法、天に届く。それくらいの覚悟が無ければ曹操は倒せまい」

「私も共に参りますわ」

「呂乱華。お前は妻だろう。大人しくしておれ」

「私と関平様は一蓮托生。それに父上との同盟を強く印象として与えられます」

「わかった。好きに致すが良い」






 許昌を避けて荊州に入り、二十日後、宛城にて四十代前半の狼の様な雰囲気を持つ張繍に謁見した。

 張繍は関平を取引の材料にして曹操と不可侵同盟を結ぼうと考えていたが、賈詡が申し出次第では関平と同盟して将来の驚異である曹操と戦うべきだと主張していた。

「お初にお目にかかる張繍殿。汝南、寿春、そして新たに譙を領地に加えた国主の関平と申す。貴殿と同盟をして共に曹操を討ち取りたい。返答は出ましたかな?」

「我らも曹操は討ち取りたいとは思っているが兵に与える食料が不足しており、また、確かな勝算が無いので難義しておる」

「沮授。張繍殿の軍に食料を工面できるか?」

「一年分であれば容易き事にございます。勝算ならば呂乱華様に伺うべきだと存じます」

「父、呂布は中華一の豪傑で軍師に陳宮、更に家臣は張遼(ちょうりょう)をはじめ猛者揃いにございます。今は下邳にて曹操軍主力を引き付けており、張繍殿と夫の関平様ならば許昌、陳留(ちんりゅう)を併呑するのは容易き事だと思われます。呂布軍の強さをお疑いならば私が張繍軍で一番の猛者を一騎討ちにて勝利する事で証明致しましょう」

 呂乱華の発言に張繍の武将達は内心、怒りを感じたが負ければ恥をかく。

 そんな時、三十代前半の熊の様な大男が現れ。

「張繍軍に猛者は居ないとは思われては恥辱なり、この胡車児(こしゃじ)が相手をしてやる。だが、条件がある。張繍様を侮辱した報いとして関平殿と離縁して俺の妻になるが良いわ」

「その冗談。面白いですわ。この呂乱華に負けて吠え面を欠かないように顔を良く洗いなさい」

「よく言った小娘、後で抱かれて泣き顔を晒すがよい。いざ! 勝負!」

 宛城の修練場で一騎討ちを始めるのだが。

 力任せに胡車児は。

「おら! おら! おら!」

 と、叫びながら金棒を振り回しているが、まるで当たりそうも無い。

 更に股間を右足で蹴られ失神してしまった。  

「旦那様になるどころか? 女になったわね」


 余りの事に自分も股間が痛い様な気分を味わった張繍は観念したように。

「呂乱華殿、見事であった。良き妻を持たれたな関平殿。同盟して共に曹操を討とうぞ」

 危機に対して迅速に同盟がなったか? に見えたが、すぐに凶報の知らせが伝えられた。

 下邳にて、呂布が曹操に討たれたと……。




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