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第76話 悪いスライム=魔法《マギヤ》

 ある時はスライムの謎の気遣いと邪欲のまま犯されたり、またある時に悪いスライムのことをマギヤと呼んだら浮気者だとか雌犬(ビッチ)呼ばわりされたいのかとキレられたり、「なんですか、ウリッツァと合わせて私の棒兄妹(けいまい)か棒姉弟(してい)と呼ばれたいと?」と煽られたりあったヴィーシニャ。

 呼び名問題については悪いスライム略してワルスと自ら命名しつつ、さらにぼやくワルス。
「『魔法(マギヤ)』ってある意味この私を的確に表現してる名前なんですけどね」
 そのぼやきに、え? と反応するヴィーシニャにワルスは今の自分の根源を話す。

「覚えていますか? 私が七歳になってから、そう経たない日に、モンス島パークの三つ石キーホルダーを回収しに来た人とのやりとりを。
強力な魔法が発動する前にキーホルダーを自分に渡すように頼む人に対して『あれ? 今持ってるはずなのにないです』と返事する私に貴方が『え、ちゃんと持ってるじゃ……あれ?』となったでしょう?
ああなった理由は簡単です、もう回収人さんのいう強力な魔法が発動してしまったからですよ」

 いつそんな魔法が発動したの、というかなぜ分かるの? と問うヴィーシニャに対し、ワルスは、いつという質問に「私の両親が死んだ直後」と答え、分かる理由に繋げる。
「情報源が誰かはさておき、私の両親が死んでからの私について聞いていて、おかしいと思いませんでしたか?
五歳になったばかりの子供があんな冷静に弟を起こして逃走し、あんな冷静に犯人の情報を報告したなんて。
……私が生まれたからですよ、この私と例の強力な魔法で貴方の知るマギヤ・ストノストが生まれたからですよ。
前に『マギヤ・ストノストを大きな氷とするなら、その不純物を含んだ水が今ここにいる私』とか言いましたけど、今思うと逆でしたね。
私がマギヤ・ストノストという氷で、私の知識や経験という不純物を含んだ水が今マギヤと呼ばれて振り向く方でした」


 また別の夜、ヴィーシニャが、ワルスの知識と経験を含んだ本来のマギヤが起こした諸々のあれこれについて聞いた翌日の夜。
 ワルスが風呂上がりのヴィーシニャの体内から完全に出て行く。
 それを見て、どこへ行くのか尋ねるヴィーシニャの方を見ずに、ワルスはこう告げる。

「いるべきところへ帰るだけですよ。
それと、今しがた強力な魔法が発動しました。トロイノイにかけられてた、ある(のろ)いが、私もといマギヤ・ストノストの心臓が二十四時間以上止まるとトロイノイが私のあとを追うように死ぬ魔法に書き換わりました。……先に私が死なないように気を付けないと」

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