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第73話 二人だけの静寂広がる部屋に誰も知らない人が!

 久しぶりにウリッツァと二人になれて、ウリッツァと話していたら、自力の魔法で治せる程度の浅い傷とは言え、衝動的にウリッツァを切りつけまくったり、ぶち犯しまくったりしていたマギヤ。
 その日を境にマギヤは、髪も結ばず、ろくに整えもせず、自分のベッドの上で、壁や壁とベッドの隙間を見つめるように丸まって寝転び、用を足すときぐらいしかベッドから移動しなくなっていた。
 それだけに留まらず、学園にも行かなくなったし、学園とかからの()な課題とか全部床――ゴミ箱だとゴミ箱に仕込まれたモンス島の優秀なゴミ処理技術あるいは魔法で取り戻せなくなる――に捨てちゃうし、タケシに話しかけられないと食事すら取ろうとしないしと、無気力通り越して半ば廃人と化していた。


 そんなマギヤに対して、タケシは自分が他に何が出来るか考えていると……。
「単に傷心ってだけじゃないみたいだよ。同じ、同い年の聖女の今彼に惹かれた男として、痛ましい」
 マギヤに妙な文句を口にしながら連射可能なクロスボウを二丁拳銃の如く持って腕を組み、くすんだ黄色のリボンだとかフリルだとかで可愛らしい服を着た手のりサイズの少女人形がタケシ本人近くの机上に現れる。
 だが、伏し目がちな顔をよく見ると中性的で整った顔をしている少年ローレンス、もといあの人、ロリアス・パソビエであった。
「えっと、なに、その格好……、矛盾塊?」
 よく分かったねタケシくん、とロリアスが言いつつ、右手のクロスボウの持ち手を体温計感覚で左脇に挟み、右手の指を鳴らし、服装をいつもの黒いエプロン他に変え、Wクロスボウと自身の姿を消す。
 直後、タケシのスマホのショートメッセージ画面にこんなメッセージが二件届く。
「ドン班の四人……いや、あの見た目で分かるのは三人だけかな……の特徴、覚えててくれたんだ」
「……キミですらボクに関する物事を忘れてないとはね」

 ロリアスのメッセージを読んで、はあ……とつぶやきつつ、とりあえずタケシは、特に霊の声を聞く能力を持ち合わせていないのに、ロリアスの声が聞こえた理由についてメッセージで尋ねると、本人……いや、本霊からテレパシーで直接話しかけてた、と答えが来た。
「ついでに姿を隠した理由も説明すると、最近、マギヤくんがボクの視界を見なくなってきたとは言え、マギヤくんが直接さわれる体で近くにいたら、キミの前と言えど結構……結構なことをする危険性を否定できないからね。ボクの言葉に返事するにしても怪しまれない程度に頼むよ」

 ロリアスのメッセージに頷きながらタケシは、あのマギヤどうしよう、みたいな概要のメッセージを送る。
「似たような経験したボクから見れば、ボクの本来の体みたく灰塵と化さず、トイレに行くことすら放棄してないだけ、まだマシな方だけど、まだマシなだけだからね。とりあえず今のマギヤくんの心を読んで対応を考えるよ」
 数秒後、ロリアスから「ちょっとボクら部屋出とこう、だいききゅう」「大子宮」「大しきゅう!」「事前にメルテルちゃんやトロイノイに聖女邸の小会議室で待つよう言ってあるからプリストラ呼んでから向かって!」といったメッセージが一気に送られてきたので、タケシは一応マギヤに一言いってから部屋を出ていった。

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