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第10話 わらわは♂これで魔王をやめました(23)

 そう、ない訳なのだが……。


 でも、一樹には既に妻と呼べる人物がいる。

 それも? 魔王ルシファーさまの姉君だと言われている人物。朱華と呼ばれている女性みたいなのだが。彼は先程から彼女……。



 朱華嬢の顔が己の脳裏に何度も浮かぶのだよ。

 それもさ? 朱華嬢が大変に憤怒──。怒りをあらわにしている表情が、一樹自身の脳裏で何度も浮かびあがるから。彼は気が気でないのだ。

 だから古の魔王。一樹が産まれ育った近代日本のアニメや映画、漫画……。ライトノベルに出演する女性魔王ヒロイン達にも引けを取らないほど、麗しく美しい魔王さまを、義理の父である前魔王佐多名衛門の助(サタナエモンノスケ)が、嫁にやると言っても。魔王ルシファーさまのようには、安易に喜ぶことができない。

 と、言うか?


 一樹はできないでいるのだ。朱華嬢のことが恐ろしくて仕方がないからね。

 でもさ?


 前魔王佐多名衛門の助(サタナエモンノスケ)こと、たぬきの御老体はと言うと?


 自身の娘であるルシファーが大変に嬉しそう。

 そう、己の目に入れても痛くないほど、可愛くて仕方がない末娘のルシファーが、一樹との婚姻を大変に乗り気、喜んでいることは、傍から凝視してもわかるくらいだから。

 満足! 満足! 余は、満足じゃ~! と、いった感じで、若い二人を温かい目で見詰めている。

 そう、見詰めているのが一樹の瞳にも映るから。致し方がないと、彼は思う。そして、この話し。「(ルシファーを俺の嫁にする、しないの話しは、一旦置いておこう)」と思うのだ。

「(それよりも? 姉さんに頼まれていること……。金髪碧眼の少女を探さなければ……)」とも、思うのだよ。


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