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第10話 わらわは♂これで魔王をやめました(5)

 でも、たぬきの御老体は、魔王さまの問いかけを聞いても、何の躊躇い。思案をすることもなく一言──。

「如何にも!」と。

 魔王さまの面前で、自身の腕を組み、頷きながら一言、言葉を返す。

「そうですか……」

 魔王さま自身も、たぬきの御老体の一言を聞き、これ以上は悩むことも……と、言うか?

 困惑することもしないで一言、言葉を返すだけにとどまったのだ。

 でッ、己の脳内で?

(へぇ~。わらわのお父さまって、若かかりし頃は、こんな容姿をしていらっしゃったのですね。知らなかった……)

 と思いながら。一樹の容姿を上から下へと興味津々に見詰めるのだ。

 そう、彼女──麗しい魔王さまは、たぬきの御老体の更年期の頃の娘……。孫にも等しい齢の離れた後子になるので、若い頃の父の容姿を知らない。

 だから勇者見習いの一樹を魔王さまが凝視しても、『お父さま~!』と、驚愕をする訳でもなく。彼が他界をした父の転生した姿だとわからないし。気がつきもしないので。

『勇者覚悟~!』、『父の敵をとらしてもうらうぅ~』、『死ね~!』と。

 たぬきの御老体の転生した姿である一樹へと、己の持つ大鎌仕様の戟を振るい襲いかかったと言う訳なのだ。

 まあ、魔王さまは、そのことを知らないから致しがない、のと。

 一樹の強さ──。先程麗しい魔王さまへと見せ凌駕した。彼の恐るべき巨大な魔力と武力が何故? 彼自身に備わっていたのか、魔王さま自身も『フムフム、なるほど』と。これで理解ができたみたいだ。

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