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第8話 『魔王グッツ店』


 翌日元魔王であるマオに紹介された店に行くために、私とアベルは支度していた。
 マオは昨日のうちに他の生き残り幹部にお土産を渡すと、どこかに行ってしまった。



「師匠!! 早く行きましょう!」



 アベルは安物のリュックを背負い、ウキウキしている。



「はいはい」



 私も支度を終え、出発ができるようになった。留守の間はスライムのスラミーちゃんにあとは任せる。



「それじゃあ、行ってくるね。スラミーちゃん」



 スラミーは体を器用に動かし、敬礼のようなポーズを取る。
 四天王をやっていた時からそうだが、この子が一番働き者だ。



 私たちは魔王様にもらった地図を頼りに、例の店のある街を目指すことにした。



「師匠ー! 速く歩いてくださいよ!」



 アベルはドンドン進んでいく。しかし、ここは魔法の森だ。深い霧が方向感覚を狂わし、人々を迷わせる。



 探索に慣れた冒険者だってこの森では迷うことだってある。それだけ危険な森なのだ。



「そんなに急ぐと危険よ!」



 私はアベルに待つように指示を出そうとするが、その前にアベルは剣を取り出し、それを軽く振った。
 すると、風が起こり、霧があっという間に晴れてしまった。



「早く行きましょう! 霧がまた戻ってきます」



 あなたはなんでもありなのね!



 無事に魔法の森を抜けた私たちは北北西にある山を目指す。
 その山を越えた先に、街があるはずだ。



 山に入ってしばらく経った頃、向かう方向から数名の男たちが降りてきた。
 彼らは全身武装しているが、身体中は傷だらけ、負傷しているようだ。



「何かあったの?」



 私は顔を見られないように背を向けて言う。人間には顔がバレている。元四天王だとバレてしまっては面倒だ。



「猛獣です。魔物がいなくなったことで凶暴化した猛獣が暴れてるんです」



 おそらくは魔王様が討伐されたことで低レベルの魔物は消滅してしまった。その時に猛獣使いの魔物でもいたのだろう。
 魔物が消滅したことで猛獣は放し飼いになり、凶暴化してしまったようだ。



「どうします? 師匠」



 アベルは心配そうな目で私を見る。なんだか助けてあげたいという感じだ。いや、魔王としてそれはどうなのだろうか。
 しかし、この純粋な瞳。これを裏切るのは……。



「ここは私に任せなさい!」



 私は胸を張って言った。



【後書き】

 強い魔物はまだ生きている。

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