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第1話 入口

 俺は今ものすごい速度を出している車を運転している。
正確にはアクセルを踏んでいるだけなのだが。

 後数秒で俺はこんな生活から抜け出せる。
崖が視界に入ってきた。
もうすぐだ。

 俺は今までの人生を振り返ってみた。
でもいい思い出なんで一つもなかった。
物心ついた時から父親は暴言を吐かれ、母親は俺より弟のほうをかわいがっていた。
こんな状態でよく家にいたと思う。
自分をほめたいくらいだ。

 褒めてみようと思って口をかすかに動かしたとき、ガードレールが壊れる音がした。
ようやくだ、ようやく解放されるんだ。
そう思いながら目を閉じた。






 あれ?まだ意識があるな。
もしかしたら死んでも意識だけはあるのかもしれないな。
「起きてる? 起きてるんだったら目を開けてほしいな~」
一体誰なんだ。
俺はせっかく気持ちよく寝ているのに。
もしかしてこれが神様の声というやつなんだろうか。
でも、目を開けるのも億劫《おっくう》なので無視した。

 そしたらさっきよりも強い口調で
「起きてるよね? 早く目を開けてよ」
とせかされてしまった。
また無視しようと思ったが、うるさかったので目を開けた。
そこには白い羽をつけた白黒の神様みたいなのがいた。



 もしかして、これが異世界転生というものなのだろうか。
それにしては、神様が白黒なのはどうなのだろうか。
もしかしてこれは作画ミスというものなのだろうか。
いろいろな疑問が頭をよぎったが、一気に質問したらいくら神様でも困ってしまうだろう。
とりあえず、一番聞きたいことだけ聞いた。


 「ここはどこなのでしょうか?」
「そうだな……新しい地球とでもいえばわかるかな?」
新しい地球?どういうことなのだろう。
謎が深まるばかりだった。
最初から何も聞かなかった方がよかったんじゃないだろうか。


 ここからどうやって会話をつなげればよいのかわからず困っていると、神様がそれを察してくれたようで話しかけてきてくれた。
「実は暇つぶしに新しい世界を作ったのだが、色をどこかに落としてしまったようでな」
神様は何を言っているのだろう。
色はもともとあるものだと思うのだが……。

 「実は色の入った入れ物たちを地上に落としてしまったみたいなんだ、今私の手元にあるのは白と黒だけなんだ。でも白黒の世界なんて面白くないので、ほかの色たちも探してきてくれないか?」
いきなりいろいろ説明されても理解が追い付かない。
でも、いつもの癖で
「わかりました、でも俺は今生きてるんですか?」
と一番気になることを質問してしまった。
もしかしたら両親は俺のこの癖が気に入らなかったのかもしれないな。



 「ちょっと前の地球から借りてきただけじゃ。お前はまだ生きているから安心しろ。色を全部見つけてくれたら現実世界に帰してやるから」
どうやら俺はまだ生きているらしい。
「そろそろいいかな、あと少ししたら会議が始まるのだが……」


 そうだ、あれも聞いておきたい。

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