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第51話

 澄人達が話をしていると、徐々に見学希望の社員達が、地下演習場の観客席に姿を見せ始めたため、彼等はそれぞれ控室へ行き、準備を始めた。

 RAY・プロジェクトのメンバー達は、慣れた様子で手際よく作業を行った。

「よし、これでオーケーっと」
「すずかちゃん、もう動いていいよ」

 かつてすずかに対して、冷ややかな態度をとることが多かったメンバー達だったが、今では彼女のことを型式番号ではなく名前で呼び、笑顔で話しかけるようになっていた。

「ありがとう」

 すずかはメンバー達に軽く礼を言うと、装備した演習用のライフルとブレードを、構えたり振ったりして、軽く動いてみる。

「……やっぱり軽い」
「慣れないか?」
「ううん、もう充分に慣れた。単に軽い武器が好きじゃないだけ」
「すずかちゃん、実戦だと重い武器使っているもんね~」
「うん。それにこれ、材質的におもちゃみたいなものだし……」

 すずかは澄人と晃穂に、演習で使うライフルとブレードを見せながら言う。

 演習で使用される武器は、強化プラスチックとゴム部品のみで作られているため、すずかが実戦で使用する武器と比べて非常に軽い。

「すずかちゃんはぁ、演習も慣れちゃっているから、なおさらだね~」
「まぁ、こればっかりは仕方ないさ。演習で実戦用の武器を使うわけには行かないからね」

 そうはいっても、不満なものは不満だと、すずかは思いっきり演習用のブレードを一振りした。

「うわっ――!?」

 三メートルほど先にいる社員にその風圧が当たり、彼の髪の毛が何本か切れた。

「あ……ごめん」
「すっ……すずかさん、俺を殺す気ですかー!」

 すずかをさん付けで呼び、大声を出す社員。

 彼は以前、すずかを打とうとした社員なのだが……

「そうならないように、ちゃんと計算してる」
「それでも、髪の毛が切れたんですよ? 俺の髪の毛が!」
「……たかだか、髪の毛の一〇本くらい、また生えてくるでしょ」
「俺はただでさえ、最近ストレスでハゲが進行しているんです! 一〇本でも大事な髪の毛なんです! 育毛剤買ってください!!」
「……ワタシの髪の毛をこんなふうにしたくせに、よくそんなこと言える」
「うっ……そ、それは~……」
「育毛剤買えって言うのなら、ワタシの髪の毛を元に戻して。それか相応のお金、払って」
「……ス、スミマセン。戻せません……払えません……」
「なら、そんな文句言わないで」
「ハイ……スミマセン……」

 彼は萎縮しながら、隅の方へと移動した。

 このように、彼は今では、すずかにありとあらゆる弱みを握られ逆らえなくなった上に、ついには『さん』付けで呼ばされるようになっている。

「うう……髪の毛……俺の髪の毛が……」

 切れた髪の毛を手の平に乗せ、しゃがみながら涙する社員の方を、澄人は軽く叩いた。

「すまないな。今度俺が代わりに、いい育毛剤買ってやるから、すずかを許してやってくれ」
「しゅ、主任~……ありがとうございまず~!!」
 育毛剤を買ってやると言われた彼は、さらに鼻水も流しながら、澄人に抱きついた。
「わっ、ちょ、ちょっと、そんな顔でいきなり抱きついてくるんじゃ……」
「オレ、主任に、いっしょーついていぎまずがら~」
「わかった! わかったから……」

 その光景を見て、無論すずかが黙っていられるわけがなく、社員を引き剥がそうと思った時。

 控室にあるモニターに、演習フィールド出てきたカトリーナの姿が映った。

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