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風の国へ

1
「……それは、風の国を攻撃するということですか?」
言葉を失っている花音と風夜に代わるかのように、神蘭が聞く。
「そうだ。奴等の本拠地が其処なら、それなりの戦力が集まっているだろう」
「それなら、其処を叩かないわけにはいかないでしょう?少しでも、此方に有利な状況にする為にも……」
「待ってください!」
そこまで聞いて、花音は漸く声を上げた。
「風の国には、その国の人達が大勢いるんです!なのに、其処が戦場になったら……」
「間違いなく犠牲が出るだろう。……だが、先手を打たなければ、此方が不利になるかもしれない。その可能性は潰しておかなければならないだろう」
「……それは、そっちの都合だろ。そんな理由で、納得出来るか……!」
その時、聞こえてきた風夜の声は低かった。
「何っ?」
「……先手を取れなければ、不利になる?そんな理由で、国民を犠牲に出来るか」
「なら、どうする?それで後手にまわってしまえば、もっと犠牲は増えるのだぞ」
「……それなら、風の国を奴等の手から解放すれば、問題ないはずだ。風の国から撤退すれば、攻撃しないんだろう」
そう返した風夜に、総長はくくっと笑う。
「なるほど。そう来るか。……いいだろう。だが、待つのは明日だけだ。それ以上は待たない。そして……」
言って、風夜と総長の会話を聞いているだけだった神蘭達を見る。
「神蘭達には、予定通り神界へ戻ってきてもらう。時間を妥協したのだ。これ以上の妥協はない」
そう言いきった総長に、神蘭達は何か言いたげにはしていたが、結局何かをいうことはなかった。
「…….行くぞ」
「さぁ、皆、行こう」
総長の男が言い、聖羅が神蘭の腕を引っ張りながら、他の四人にも声を掛ける。
姿を消す前に一度振り返った神蘭達に、風夜が『大丈夫だ』と伝えるように一度頷く。
そして、彼等が姿を消すと、風夜は花音を見てきた。
「……悪いな、勝手に決めて」
その言葉に、花音は首を横に振る。
「ううん。それより、早く皆にも今のことを話さないと。あまり時間はないよ」
「そうだな」
そう言い頷きあうと、花音と風夜は仲間達のいる場所に戻る為、踵を返した。
「何だと?!風の国を……!」
森の中に戻り、先程聞いた話をすると、空夜が声を上げた。
「今、風の国を攻められたら……」
「風の国の民だけじゃなく、そこにいる火、水、地、陰の一族も……」
水蓮と紫姫も、その話を聞いて、顔を青ざめさせた。
「……ああ。だから、風の国を奪還するしかない。今日か、明日中にな」
「そうはいっても、簡単にはいかないだろ。神蘭達もいないみたいだしな」
「そういえば……」
そこで思い出したように光輝が、千歳、昴、星華の三人を見た。
「お前らは、戻らなくていいのか?」
「ああ。神蘭様は、お前達に協力するようつたえてきたしな」
「はい。だから、私達はあなた達に協力しますよ」
「とはいっても、俺達は一般兵だから、神蘭様達程の力はないけどな」
「いや、協力してもらえるだけいいさ」
三人の言葉に、風夜がそう返す。
「時間がないなら、尚更、俺の力で行った方がいいだろうな」
そう言った刹那の力が高まっていく。
「いきなり、街中に飛ぶのは無謀だろうからな。街外れの森がいいだろうな」
「……わかった。行くぞ」
風夜に頷いた刹那がそう声を掛ける。
そして、その力が更に高まったかと思うと、花音達の姿はその場から消えた。
2
その頃、風の国。
「ふふ、どうかしら?身体の調子は?」
「……ああ。いい感じだ」
窮姫の声に玉座に座る男が返す。
「ははは、ついに……、ついに私が王になる日がきた!これで、漸く大臣としての立場に甘んじてきた日々が報われた!…….今日からは、私がこの風の国の王だ!はははっ!」
「そう。それはよかったわね。……それより、あなたの役目、忘れてないでしょうね?それを忘れているなら、何のために貴方に力をあげたのか、わからないわ」
冷たい声で言う窮姫に、大臣にニヤリと笑った。
「ああ、わかっているさ。お前達が此処を留守にしている間、此処を守ればいいのだろう」
「そうよ。此処を足掛かりにして、この世界を手に入れるのだから。奪い返されたら困るの」
その言葉に、大臣の男は笑う。
「ははっ、案ずるな。私も折角手に入れたこの地位を失いたくない。それに、お前達がくれた魔族としてのこの力……、そう簡単に負けるような力ではないだろう」
「そうね。貴方に渡した魔族としての力は、最上級クラスのもの。闘神達も神界へ呼び戻されているでしょうから、他の奴等が来ても相手にはならないでしょう。……油断して足下を掬われることだけはないようにね」
「ああ……」
「ふふ、それじゃあ、任せたわよ」
そう言うと、窮姫はその場から姿を消した。

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