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155話 事情を知らないエルフが面倒

 まじかよ。そんな視線がちょっと痛いわ。

「……つー事はアレか。もう洗脳とか行動支配とかいうのは心配しなくてもいい訳なんだが……」
「……今頃、迷宮都市や辺境伯領都の錬金術師さん達は、必死で首輪の解析を進めているでしょうね……」

 えっ!? えっ!?……何故かあたし、とっても悪い事をした気分になって来たんだけど?
 だって、レン君とヒメの表情がね、とっても神妙というか苦笑というか。ここはよしよし、よくやった! って褒めてもらえるトコじゃないのかしら?

「まあ、これであのシャオロンはただの動ける強いデブになったんだし……良かったんじゃないかな?」

 そ、そうだよね!? 流石お姉ちゃん!

「……私達を助けてくれたのはあなた方か?」

 いい事をしたはずなのに、何故か居心地が悪くなっているあたしの側に歩み寄ってくる一団。おお! これは上手く話題をすり替えるチャーーーンス!

「一応、あの場から連れ出したのは私達だが、まだ助かったとは言い難いだろうな。君達の行動次第だ」

 もう! メッサーさん? 何でそこで雰囲気を険悪にするのさ!

 …
 ……
 ………

 って、そうか。この人達エルフの里から連行された人達か。この人達はまだ里がどうなったかも知らないし、長老の悪事も知らない。
 あたし達が里にいたエルフを解放した張本人だっていう事も知らないし、里を放棄させた事も知らない。少し説明を間違えると敵対する可能性があるんだね。

「そうか。救い出してくれた事には感謝する。だが私達はすぐにでも里に向かいたい。悪いがここで別れさせてもらう」
「……里に行ってどうするんだい?」

 お姉ちゃんは、エルフ達に視線も合わせず、はちみつレモンのカップを口に運びながら言った。

「知れた事。里は未だ帝国に占領され、多くの同胞が捕虜になっているのだ! 助けに行くに決まっているだろう!」

「それは、無理だね」

 あ、お姉ちゃんが偽装を解いた! ちなみにお姉ちゃん以外は全員偽装を解いていた。てか、お姉ちゃんが偽装を解いたら絶対ややこしくなるよね?

「なっ! お前はラーヴァか! なぜここに!? いや、無理とは一体どういう事だ!?」
「質問は一度にたくさんしないでくれるかな? そうだね……なぜここにいるかと言えば、君達を助けたからだ。甚だ不本意だけどね。そして無理なものは無理。それ以上でもそれ以下でもないね」

 お姉ちゃん、エルフが相手だとホントに辛辣になるよね。このあと更にキツい言葉が飛び出すんだよきっと。

「何故無理なのかと聞いているのだ!!」
「まず、君達程度の腕で何をしようってのかな?」
「くっ…!」
「まあ、乗り込んでも返り討ちにあって、人質が増えるのが落ちだね。って言うかね、もう里は無いんだよ。だから無理」
「……どういう事だ」

 どんどん険悪な雰囲気になっていく、お姉ちゃんとエルフの人達。そこへ助け船が現れた!

「私が話そう、ラーヴァ。君ではお互い感情的になってしまうだろう? エルフの諸君もどうか落ち着いて聞いてもらいたい」
「……そうだね。悪いけどお願いするよ」

 そうしてメッサーさんはエルフ達に事の顛末を話し始めた。帝国の狙い。エルフの里の放棄と人質の解放。そして長老の汚い裏工作。

「なん……だと? それで同胞達はどうなったのだ?」

 さらにメッサーさんの説明は続いた。王国の辺境伯領で、なるべく希望に沿う形で仕事を斡旋している事。エルフの方も人間社会に溶け込む事を良しとしている者が大多数である事。帝国への復讐を望む者はレジスタンス組織に編入され各地で諜報活動をしている事。

「今回私達が帝都へ潜入したのも、レジスタンスの流した噂がどの程度広がっているかの確認と、シャオロンに行動を支配されている実態調査、さらには君達のようにスキルを奪われた人達を救出する事が目的だったんだ。召喚者の方は……残念だったがね。どうしても里に戻るというのなら止めはしないが、私としては迷宮自治区に行って身の振り方を考える事をお勧めするよ。現在はコルセアさんがエルフ達の相談役をしている」

 メッサーさんの説明をじっと聞いていたエルフ達だったが、色々と衝撃的すぎて、一周回って落ち着いたらしい。

「……分かった。我々も迷宮自治区とやらに行ってみよう。それと、助けてもらった借りは返す。森にいる間の露払いは任せてもらおう。何故か奪われたスキルが戻っているのでな」

 うん。それは『奪われる前の状態まで元通りに』したからね。まあ、それはともかく早く戻ってアイギスを抱き枕にして眠りた~い!

 

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