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新型遊精の、各社販売合戦・2

「そう言えばリッちゃん、カシコモの社員が例の爆発事故で怪我したんだって?」

 工場長がふと、りっちゃんに尋ねてくる。

「ああ、 名取雲武(ナトリウム)のことであるな。いっそ死ねば良かったのである」

 死ねって……何て酷い言い種だよ。
 しかも工場長は情の人、こういう他人にぞんざいな態度を嫌うんだぞ。
 と、思っていたのだが。

「何だ、巻き込まれたのってあの名取なの?本当、死ねば良かったのに」

 工場長も負けず劣らず暴言を吐く。いや、過去に彼らとその名取とかいう輩の間に何があった?!

「時に姫様、我輩がここに来た用向きは……」
「ええ分かってるわよ、彼に会いに来たんでしょう、ほらユーさん」

 りっちゃんの言葉に、工場長はユーさんの腕を強引につかんで引っ張り出す。

「その者が例の"ゼロ"の発案者であるか。何か、普通であるな」

 と、りっちゃんに。失礼だな、確かに見た目も能力も普通だけど。

「む、しかしよく見れば、この世界の人間には持ってない雰囲気が……」
「はい、そこまで。リッちゃん、一応釘を刺しておくけど」
「他言無用であるな、了解である。
 我輩とて、将来性のあるライバルを蹴落とす真似はしないのである」

 ん、ライバル?

「きっと今後も我輩とその者は製品を競う結果になるである。楽しみにするである」

 と、言いたいことだけ言って、りっちゃんは帰って……

「そうだ、姫様」

 ……いかなかった。
 まだ言い足りない事があるらしい。

「もう、カシコモには戻らないのであるか?」
「その予定はないわね。リッちゃん、逆にうちに来る?」
「ニョホホ、それは中々楽しそうであるが、残念だが我輩には会社との契約がある」
「あっそう。まあ、気が変わったらいつでも待ってるわよ?」

 と工場長が言うと、りっちゃんは手を降ってその場を去った。
 相変わらずこの人の人望と交遊関係は謎だらけだが、それも全て姫様だから、で納得出来てしまうのが何とも。

「ほへー、何か変わった人だったですねっ」

 それまで黙ってたスズちゃんが、いうやく口を開く。
 変わってるというか、ボクはああ言う常識のない奴は嫌いだ。
 ブリキに言わせれば、お前がいうなと言われそうだが。うん、少しは自覚がある。

「でもうちのゼロを大量に注文してくれたし、向こうの百科繚乱もサンプルでもらえるらしいし」

 工場長的には、メリットも多かったようで浮かれていた。

「でそれ、ユーちゃんにあげたいんだけけどいいかな」

 少し悩んだ末、ユーさんは頷いた。
 ああ、これは裏がありそうと思ったクチだな。少なくともボクだったら、そう思う。

 ちなみに、ここまでで会話に出てこない、うちの社員が三名ほどいるのにお気づきだろうか。
 ナマリさん、銀さんシロガネさんの三名は別行動で、大須で販売中の遊精以外の新製品の視察に行っている。

「うちもユーさんと一緒が良かったのだべ!」

 と、直前までナマリさんは駄々をこねていたが、後の二人に強引に連れていかれた格好だ。

 でも結論から先に言うと、この後に起きた事を考えると、彼らはいなくて正解だった、と思うのだ。

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