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五話

王都から出ると、街道を進む。
 途中、小物が現れたので軽く首をはねて解体する。

「竜虎呼よ、ずいぶんと手馴れておるな」

「師よ、魔物とはみなこのように弱いのですか?」

 だとしたら最悪だ。

「いや、ここは王都付近じゃから、危険な魔物は排除されておる。魔物の中には危険な物も多い。心せよ」

「私は彼らと戦ってみたい」

「そうかそうか。さすが武人の家系、ご当主様の子よ。ご当主様は、そなたを手放したこと、地団駄踏んで悔しがろうよ。魔翔兎(ましょうと)を瞬殺とは!」

 薬仙子は笑って私の頭を撫でる。もう子供ではないのだが、薬仙子はそういった事が好きなのだ。子どもという存在に飢えているのだろう。

「今回の旅は、いろいろ回ってみたいと思っておる。その中には強い魔物もおろう。というより、そなたの強さに合わせた魔物の生息場所で修行を行うつもりじゃ。薬師は薬草を得る為、危険な場所に行かねばならん。ご当主様はお主を、病弱で調合しかできないと思っておるようじゃが、違うじゃろう?」

 私はこっくりと頷いた。
 ならば、強さを隠す意味は無いだろう。存分に見せて差し上げようではないか。








「侯爵様。薬仙子から手紙が」

「うむ。何何。『ご当主様。誠に申し訳ありません。この薬仙子、ご当主様から頂いた珠玉の息子、竜虎呼様を自身の子と思い、精一杯育ててきましたが、この度、力が及ばず、竜虎子様は自然に帰ってしまわれました。私は竜虎呼様の何を見ていたのか、と慙愧の念にたえません。せめて、竜虎呼様のお側で暮らしたいと思います。このような手紙一つで辞すことをお許し下さい』 な、なんだと!? 竜虎呼が……!」

 侯爵は涙する。
 病弱な竜虎呼が薬仙子と旅にでることを許したのは失敗だったかもしれない。
 後悔してももう遅い。
 侯爵は、悲しみにくれるしか術がなかった。

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