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ダカートが逆行してきたら

「じゃあ、リセットするアイテム渡すね」

 カザが渡したアイテム、小さな時計を、ダカートは期待に満ちた顔で押す。
 すると、時計が高速で回転し、凄まじい勢いで光り始めた。
 ダカートの姿がブレる。一瞬見えたそれは、最強装備の壮年の騎士。
 師弟が驚いて見つめていると、光が収まった。ダカートは震える手を見つめ、そして視線を上げた。その瞳からは、ぽろぽろと涙が溢れる。

「キルク……ミリア……ガウル卿……ベルン卿……カザ師匠!! カザ師匠、カザ師匠、カザ師匠! 申し訳……! 俺、俺なんかが弟子で、俺、俺……。キルク、ありがとう。本当にありがとう……!」

 カザは困惑した様子でダカートを見る。

「え、と。何か、問題が起きた?」

 その言葉にダカートはハッとする。

「い、いや、何も! ではカザ師匠、ご指導よろしくお願いします! 『ステータスウィンドウ、可視化』!」

 ガウルとベルンツハイムが非常に驚いた顔をする。
 困惑しながらも、カザは頷いてステータスを見ていく。

「あれ? 天値が大分いい数字でたね。っていうか、これ転生ステータスじゃ……まあいいや。じゃあ、対魔物のパーティ戦士タイプで調節するね」
「お願いします!」

 それが済むと、キルクとミリアにもアイテムを使わせる。これは普通に出来た。
 キルクのステータスを操作するという時、キルクが文句を言う。

「カザ師匠。何故魔法攻撃力に全て振らない。それに、攻撃力は不要だ」
「え、だって、パーティ魔法使いのセオリーは……」

 そこで、キルクをダカートが殴りかけ、震えながら息を吐いた。

「キルク。カザ師匠は確固たる知識に基づいて決めている。それにフワポワ倒せなくなるから、最低限の攻撃力は必要だ」
「あ、よく知ってるね。魔法攻撃全然効かないから、困っちゃうよね」
「ダカートが倒せばいいだけだろう。何を言っているんだ」

 その言葉に、ダカートはまたも深呼吸した。

「魔法攻撃力だけの魔術師なんざ、なんの役にも立たねえよ。物量で押されて抜かれて瞬殺だ」

 そして、ダカートはカザに土下座した。

「カザ師匠! 我儘を聞いていただいてもいいですか!」
「え、な、何?」
「俺は未熟ゆえ、カザ師匠に特別に同レベルでお手本を見せて頂きたく……! どうか!」

 その言葉に、カザは困った様子で考える。

「うーん。それはちょっと……。ああ、方法が無いこともないか。頼りになる知り合いに任せるって手があるけど」
「それでお願いします!」
「じゃあ、今連れてくるね」

 カザを見送り、キルクとミリアがダカートに声を掛けた。

「どうしたんだ、ダカート」
「そうですよ、おかしいですよ」
「おかしいのは過去の俺らだ。あ、いや……う……思い出せば思い出すほど、頭痛が……マジ転げまわりたい。嘘だといって欲しい。青年時代なんてなかった。そう、幻だったんだ……。そういやルフィリアも、今は師匠の名義で好き勝手やってる時期か……。あ、頭いてぇ……。街滅ぼさずにあいつが心を入れ替えるなんて無理だろ……でも、あれはあいつしか……。つーか、他から連れてくればいいんじゃね? いや、でも注目が……。それを言ったら、この街は見捨てないとこっちが先に潰されるか……」

 ダカートはブツブツと言いながら、頭を押さえる。他の弟子達は、若干引いていた。顔を上げたダカートは、重い口調で言った。

「えっとだな……えっとだな……うん、なんでもない。ちょっと妄想癖が爆発しただけだ」
「なんだ、いつもどおりか」
「いつもどおりですわね」
「そう、いつもどおり……」

 ダカートの目に、キラリと涙が光る。肩を落としたダカートは、俺ら良く人間のクズから英雄まで這い上がったよな師匠すげぇ、と言いながら、ベルンツハイムとガウルに白紙の本を三冊強請る。

「なあ、これから日記つけようぜ。修行内容とステータスの内容を書いて行くんだ」
「あら、何故?」
「ほら、ギルマスが言っていただろ。俺ら勉強しに来たんだから、忘れないようにメモしないと。でないと後で修行方法わかんなくて、ほんっっっっっとうに後悔するから」
「まあ、悪いことではないな」
「勉強嫌いのダカートが頑張るというなら、協力しますわ」

 ダカートは小さく息をつく。
 
「おまたせ! カザ師匠から任された、えと、カタナです。よろしく。じゃあ、準備できたし、行こうか」
「お待ち下さい。作戦タイムを取らせて頂きたく思います」

 ダカートはそう告げて、キルクとミリアを見る。

「まず、ミリアは別行動な。人が密集している所、出来れば小さい子が密集している所で、片っ端から回復。で、キルクはフォーメーション……あ、いや。暗号とか決めてねーな。合図決めよう」
「合図とか暗号とかフォーメーションとか、中二病もいいかげんにしろ」
「ああ……うん……。そうするとやる気が出るので、お願いします付き合って下さい」
「仕方ないな、ダカートは……」

 ダカートは、地面を叩くという奇行で、仕方がない人間という評価を裏付けるのだった。
 そして、合図を取り決めて狩りへと出かける。
 まず初めにカタナが見本を見せる。まず、カタナはあちこちからジャンピングラビットを挑発して集める。もちろん、一撃もかすらせない。ある程度密集すると、次々と一撃でジャンピングラビットを倒し、合間合間でポーションを飲んでいく。そして、天からジャイアントジャンピングラビットが落ちてくると、華麗にそれを切り裂いていく。

「いよっし! 四十分かぁ。まだまだ駄目だなぁ」
「じゃあ、キルクは指示通りにな」

 ダカートも走り、ジャンピングラビットを集めた。そうして、狩りが始まった。








 五回もすれば、こなれてくる。最終的に、かなり良い運命数を手に出来た。

「えーと、冒険者としての基礎を教えるってことで、私も考えたんだ。で、色々本も漁ってみた。そこで、こんな物を見つけました。ウン・チクさんの、『運動音痴でも出来る素敵な冒険!』 このとおりにやっていくね」
「馬鹿な。ウン・チクと言えば、駄目な有名な英雄ではないか。決闘記録も負けばかりだし」

 キルクの言葉に、ダカートはキルクを殴る。

「大賢者ウン・チク様を馬鹿にすんな! ウン・チク様の言う事聞いとけばとりえあえずどんな能なしでもルングルムが楽勝になるんだから文句言うな! 大体、お前ウン・チク様よりプレイヤースキル駄目だろう! 惨敗して授業内容思い出して意味わかって泣く切なさを経験したくないだろ!?」
「ダカートって、ウン・チク様のファンですの?」
「え……あの、その。まあな。ウン・チク様は、才能がないのを頭脳でカバーして、英雄にのし上がった。誰よりも才がないから、他の英雄より弱いのは当たり前なんだ。ウン・チク様の書の真髄は、どんなに才能の無いやつでも、二流ぐらいには育てられる事にある。たった一人の英雄より、百人の訓練された軍の方が頼りになるってことだ」
「ふーん……なんか、ダカートが賢そうな事を言うと違和感ですわ」
「うん……そうだろうな……」

 ダカートは肩を落とす。時間はない。しかし、道はあまりにも遠かった。




ネタバレ



































未来。
神崎彩海は、その存在を察知されて死ぬ。
残されたダカート達は英雄となるが、ガウルもベルンツハイムも次々と殺されていく。
そしてミリアが死に、このままではいけないとキルクが命がけで転生させる。
そうして過去に戻ることが出来たダカートは、過去の自分の所行に悶絶する。

ルフィリアは敵の誘いに乗り、街を守る石を盗みだし、その為に街は滅びる。
生まれ育った街の惨状を見て、ルフィリアはようやく改心する。
遺憾なことに死刑に出来ない程度には結構活躍する。多分、神崎彩海から色々盗んだ物を
活用したからじゃないかな。

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