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何様弟子様


「ウルグルムがいつの間にか廃墟になってたってどういう事!? あそこははるか昔から廃墟じゃない! 嘘ですよね? 嘘ですよね!?」

 ミリアがたまりかねたように叫ぶ。

「つーかおかしいよな。普通に考えておかしいよな。全部がおかしいよな」

 ダカートが追従する。

「……はぐれたんじゃないか? 太古の昔、神とか使徒とか人間より多かったらしいし。大体、ドルエンのレートがおかしい。一万倍とかありえん。五倍程度だったはずだぞ。大体、一千万ゴルドってなんだ。普通にありえんだろう」
「よく考えたら、強さリセットってめちゃくちゃじゃねーか。神々の道具以外にねーだろ。天界の通貨ってマジだったのか。そういや、ゴルド通貨は金貨だけとか、かさばって困るんで百万枚集めてドルエンを作ったとかお伽話で聞いたな。ぜってー嘘だ、でなきゃ神はアホだ、と思っていたが、マジだったのかも。うわ、100ゴルドって実は百銅銭くらいの値段ってことか? ありえねー……」
「では、神は何故お見捨てになったのですか!」

 それに、沈黙が落ちた。どう考えても、カザが理解しているようには思えない。というか、彼は仲間がもういない事を理解しているのだろうか。
 
「……よし、カザ師匠の言っていることを整理しよう。ドルエンはもう手に入らない、ゴルドは……多分、手に入る方法はあるんだろう。で、素人に毛が生えた程度の強さで、人嫌いで、気がついたらウルグルムが滅亡していて、ほそぼそと狩りをしていた、と」
「そう考えると、凄くない……のか? 専門職には勝てないって言ってたし。そんなんで任せて大丈夫なのかな。普通に無茶振りして来ていたし」
「いや、しかし古代の知識はあるだろう」
「カザのお名前で古代の記録を調べてみてはいかがでしょう」

 三人でそう取り決め、恐る恐る外出を願いに行き、そこで見知らぬ女にあった。

「カザ師匠の姉君にして、私達の姉弟子のカンザキさんです。師匠と同じで、敬意を持って接するように」

 ベルンツハイムが紹介する。

「へ? 弟に師事してんの? いや、いいや。俺ら、明日外出したいんだけど。後、修行のやり直しについては時間がほしい」
「うーん、確かにレベルリセットは悩むけど……それ以前に、やる気あるの? 別にやめても全然いいよ? 私もその方が楽だし……」
「でも、カザ師匠も素人で剣も弱いんだろ? そんな人に師事して、一流の剣士になれるかっつーとな……。ていうか、お前には関係ねーし。教えるのはカザ師匠なんだから」

 ベルンツハイムとガウルが驚愕した瞳で見てくる。

「確かに打ち合いできないしね。頑張って教えて、平均の剣士かなぁ」
「やっぱりそうか」

 考えこむようなカンザキの言葉に、ダカートは深く頷く。

「そもそも、ステータス操作も朧気ながらに分かったし、スキルも使用法が見る事ができるなら、師事する必要も無い気がするな。強さのリセットをしてもらうにしても」
「ですが、勉強になる事もあるかもしれませんし。少し考えたいんです」

 口々にいう言葉に、吐き捨てるようにベルンツハイムとガウルは問う。

「……弟子をやめれば全て問題解決なんじゃないでしょうか?」
「……朝の講義もサボるのか?」
「いや、だってギルドマスターに怒られるし、なんかもったいないし」
「朝の講義は行きますわ」
「簡単な指示も守れないとなると、破門が可能になるからな」

 そして翌日、朝の講義を終えた後、俺達は調べ物に向かった。
 神殿の記録など色々と調べていると、ドワーフの親切な神官が詳しく話してくれた。

「カザ様か、全く無名ではないが、珍しい神様を調べているんだのぅ。カザ様は、中級程度の武具防具を作っておられた使徒様じゃ。特に功績などの記録はないし、有名な神具等もないが、その幅広いラインナップが特徴じゃな。有名な所では、確か使徒様の治めた小さな街の一つ、テストが、全てカザ様の造られた物で出来ていたはずじゃ」

 その言葉に、3人はほへーっと頷く。

「んー、やっぱ地味な……グッッ!??」
「げほっ……」
「がッ……」

 三人は、瞬時にふっ飛ばされた。
 ふっ飛ばしたのは見上げるような大男、ギルドマスターのラングルである。

「おまえらああああああああ!!」
「「「は、はいいっ」」」
「ギルドの名を汚すなとあれほど言ったろうが! せめて初日ぐらい大人しくできんのか!? 有難くも頂いた一年分の費用を全て私用に使ったとはどういう事だ! 白紙の本の一つも買う頭を持たんのか、お前ら! 何しに泊まりこんでると思ってるんだ! しかも色々と良くしてくださる商人様に向かって、無礼な態度を取った挙句、このまま習っていいものか考えさせてくださいだと!? 大体がこんな所で何をしているんだ! 他の冒険者は勉強に商人の手伝いに命がけの護衛にと頑張っているんだぞ!」
「で、でも! カザ師匠は専門職には勝てないほど弱いって……!」
「お前は何を言ってるんだ。商人に資金の管理を習いに行っとるんだろうが! 剣士じゃないんだぞ、剣士じゃ! 特にダカート! 小遣い帳もろくに書けんでよく言うわ! 立派に安定して稼ぎを出している商人様が手ほどきしてくれる、結構ではないか! クーデルムから転勤にならん冒険者がよくもそれだけ大きく出れたものだな。あの方はルンデルムとの商売記録まであるんだぞ。手合わせせずともお前なんぞよりよっぽど強いとわかるわ! 何か教えてくれるというなら、土下座してお願いする立場だろうが! 大体、わざわざ徒弟制度使うのはなんでだと思っとる! ミリア!」
「資金の管理を習うためです!」
「違う! コネを作るためだ! 冒険者ギルドの評判を上げるためだ! 装備品を安く融通してもらったりだな、護衛に雇ってもらったり、スポンサーになってもらったり……ちょっと考えればわかるだろう! 商人ギルドは一番のお得意様なんだ。皆こうやって、仕事先を確保していくんだ。言わなくても普通はわかるだろう!? 必死に営業するだろう!? それなのに、お前らときたら、お前らときたら……! Cランクの新人の商人だ? そこがいいんだよ! まだ決まった護衛も無いってことだし、枠が三つとも開いているし、一人であちこちの街に商売に行ったりもする。初心者向けの装備も取り扱っている。かなりの優良物件を紹介してもらったんだぞ! いいか、俺が一緒に行って謝ってやる。今度無断でほっつき歩いてるのを見かけたらお前らには二度といい仕事は回さない! ったく、馬鹿だとは思っていたが、本当に、本当に……! クーデルムの冒険者なんてなぁ! 一番下! 十歳のガキと同レベル! 護衛にも使えやしねぇ、問題外なんだよ。そこを徒弟って名目で連れ回してもらって護衛のやり方覚えんだよ。 キルク! お前、本ばかり見てないで周りの年齢を見ろ! 皆すぐにルンデルム目指して、魔物から人の領域を守る仕事目指して、一つ一つ街を進んでいくんだ! お前らがサボってる間、兄弟弟子のちびっこ達が何してるかわかるか!? 商人様の姉様を守りながら、せっせと魔物を狩って商品の材料集めだと! わざわざ身内使って護衛の練習させてくれるありがたい商人様が他にいるか! それなのにお前らときたら、涙が出てくるわ!」

 ダカート、キリク、ミリアは容赦なくラングルにフルボッコされ、引きずられていく。
 その後、ラングルは驚くカンザキに焼き菓子を渡し、深く頭を下げ、三人組に土下座させた。
 困惑したカンザキはそれでもそれを受け取り、商人組二人は冷たい眼差しで三人を見る。
 そして、その後三人は次の日の朝まで謹慎となるのだった。

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