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プロローグ4

 前回のミッションから1年。
 E国の児童臓器売買組織を壊滅させてからというもの、新たなミッションを数件こなしつつ、時間をかけて徐々に他国の組織も潰していった『イヴォル』。
 E国もそうだったように、F国もG国もH国もI国も、実行犯は個人経営のようなものだったので、本人を抹殺すれば壊滅できた。

「だからこそ今まで表沙汰にならなかったんだろう」

 これは5か国に跨った作戦も、最後の国となった時にオーエンが口にした言葉。
 この最後のターゲットH国の実行犯は侯爵家の三男だった。
 大きな商会を傘下に持つ伯爵家への婿入りも決まっていたその男は、学園生時代から犯罪に手を染めていた。

「もともと猟奇的な事件に興味があったようだ」

「そうだよね。でなければ腑分けなんてできないよ」

「そうだよな。腑分けと言えばあの医者は承知したのか?」

 オーエンの横でおいしそうにサンドイッチを頬張るトワが答えた。

「非常勤扱いになるみたいよ。まあどちらにしても子爵邸のお抱え医師になるんだし、結果は同じでしょう」

「ゼロは子爵っぽくなったかな?」

「子爵ですって言えばそう見えるし、農夫ですって言えばそう見える。ゼロってそういう奴でしょう?」

「ははは! 確かに」

「そう言えばゼロが仮面舞踏会で面白い情報掴んできたよ」

「ああ、ベルガと一緒に行ったやつ?」

「そうそう、仮面つけるから自分も参加するってベルガがやたらに張り切ってたやつだよ。そこでね、ベルガの元婚約者だった男がさあ」

「国王って言ってやれよ」

「ああ、そのZ国の国王がさぁ、また皇后を殺しちゃったんだって」

「まだそんな事やってんのか?あの外道は」

「まあ持って生まれた性癖は、そう簡単には変わらないしね。それで、新たな皇后を選ぶって話になっているんだって。でも国内の貴族はもう全滅らしいよ。皇后にしたくないばかりに、娘が生まれたらすぐに婚約者を決めちゃって、年頃の女性が残ってないってさ。まさか生まれたばかりの赤子と結婚するわけにもいかないし、年増の未亡人が新皇后っていうのも拙いじゃない?」

「バカな話だ」

「それで遂に他国にまで探しに行くみたい」

「他国の王族を殺したら戦争になるぞ?」

「でしょ?どうするんだろうね」

「……ゼロは何か言ってたのか?」

「ううん。笑ってただけ。でも目が光ってた」

「光ったか」

「うん、それはもうピカッて」

 二人は片方の口角だけを上げて、声を出さずに笑った。




お知らせ

 書籍化に伴う諸作業のため、ひと月ほど更新をお休みします。
 7月中旬を目途に再会しますので、よろしくお願いいたします。

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