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第三話 韓馥の武将と軍師

 黄巾賊との戦いから三日後、雨天、小雨が舞い散る中を許昌に向かう途中、董卓討伐に参加していた赤い甲冑を纏った韓馥(かんぷく)の軍勢約一万人が前方から現れ、そこから百人程の騎兵が向かって来て。

「そこの者達。何故? 黄巾賊の財貨を持っている! 取り調べる故、我らの主君韓馥様の元に連れて行く。大人しく参られよ!」

 どうやら、関平達の武器や鎧、馬、保護した女を欲しているらしい。

 関平と華雄、黄忠は韓馥の前に連れて行かれた。

 韓馥は三十代半ばで肥満で強欲な男である。

「そなたらが虎牢関や黄巾賊残党で名声を挙げた関平と華雄、黄忠か? 噂になっていたが、もし、本当であれば儂の家臣にならぬか? 家臣になるならば捕虜、武器、鎧、馬を買い取り、そなたらの懐に入れよ。もし、断るならば、この場で皆殺しじゃ」

 すると、官吏の様な二十代半の細身の男が、主、韓馥に進言した。

「待たれよ。韓馥様。この者達は中々の才があり、また、家臣にならぬからと申して財貨を奪い殺すとは黄巾賊と変わりませぬ。ここは韓馥軍最強の武将、張郃(ちょうこう)殿と一騎討ちをし、勝てば財貨を買い取り、負ければ財貨は没収して家臣にするのは如何でしょうか?」

「わっはっは。面白いぞ沮授(そじゅ)よ。そなたの案を受けよう。皆の者、これは漢で信仰されている神々に捧げる神聖な一騎討ちである。破れば神々から神罰が下されよう。では、関平、黄忠、華雄、そなたらの内、張郃一人と闘って貰うぞ!」

「面白い。この関平が相手をする」

 すると十代後半になったばかりの長髪の長斧遣いが現れた。

「この張郃の相手が小僧だと! 関羽や黄巾賊に勝てたのも怪しいわ! 儂が直々に稽古を付けてやろう」 


 韓馥の兵が包囲し、中央で一騎討ちが始まった。

 張郃の長斧を何度も斬りつけるが、関平は紙一重で交わし、逆に一瞬の間で長斧を踏みつけ、そのまま、青龍刀で張郃の首元に突き付けた。

「俺の勝ちだな張郃!」

 と勝利宣言した。

 沮授は一騎討ちを少年の様な憧憬な気持ちで見とれながらも。

「勝負あり。関平の勝利とする。韓馥様よろしいですな」

 苦虫を殺した顔をしながら銀の入った袋を投げ捨て去っていた。

 兵の包囲は解かれ沮授は関平に。

「良き物を見た。礼を申す。また、会える事を楽しみにしておるぞ」



 こうして用を果たし、近く村で別れた関平、黄忠、華雄は、馬を昼夜兼行で走らせ無事に許昌に着いた。

 今度は更に西に進み、黄忠は妻と娘のいる荊州に向かうのだが、暫く許昌に留まる事にした。

 何故なら万を超える黄巾賊残党と曹操(そうそう)という優れた人物が近々戦いを始める様なので義勇兵を募集しており、その戦いに参加するつもりである。




 その頃、怒りを抑えられない韓馥は、兵に周辺の村を襲わせ殺戮、略奪、強姦を行わせ村に生きていた者を皆殺しにして黄巾残党の仕業に見せた。

「殺せ! 奪え! 犯せ! 儂の悔しさを思い知れ!」

 韓馥の残忍さを知った沮授は恐怖に怯え。

「あのような主君に仕えては先が危うい」

 身の危険を感じ、出奔して在野の人となる。

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